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靴下デザイナー阿賀岡恵さんインタビュー

靴下デザイナー 阿賀岡恵さん
1978年東京生まれ。桑沢デザイン研究所卒。大手靴下メーカーで5年間靴下の企画デザインを手掛けた後、1年のイギリス滞在を経験。帰国後2007年にレッグウェアブランド「Ayame」を立ち上げる。
ヨーロッパでの展示会へ積極的に参加するなど国内外で活躍中。
http://www.ayame-jp.com/

靴下は自分自身を表現するツールです

靴下の魅力は、求める人に左右されます。ファッション性が高いものを求める人もいれば品質を重視する人、履き心地を気にする人などさまざまです。
そんな時代の流れの中で、常に新しい編み表現を探求し、オリジナルの靴下ブランドを作っている女性がいます。それが今回取材をした阿賀岡さんです。

「メーカー勤務時代に、靴下の基礎と厳しい品質管理を学びました。会社を辞めた後に向かったのはイギリスです。現地には世界的に有名な靴下メーカーがたくさんあります。そのひとつに、伝統的な手回し製法で今も製品を作っているところがあり、そこで働きたいと思っていました。そこには200年以上も続いている伝統の技があって、それを体験したかったんですが、言葉の壁は高くて、見学だけ許していただけました」。

そして見学だけとはいえ「感動的な体験ができました」。現地のクラフトマンシップにカルチャーショックを受けた阿賀岡さんは、日本に帰り、4ヶ月かけてデザインを含めた様々な準備をし、メーカー時代に知り合った、日本の靴下生産日本一の奈良の工場へ向かいます。

ただ、そこでまた大きな困難が立ちはだかりました。
阿賀岡さんの独創的な編み地表現や色使いは、靴下を生産する工場にとって困難を極めます。「靴下は編み物でありながら織物に近く、立体的にして表情を作りたいと思っても、組み合わせることのできる糸の数は決まっています。それだけでなく、一人の若い女の子の夢に付き合ってくれるほど、職人さんたちは甘くないのです」。

そこでもまた、阿賀岡さんはあきらめませんでした。「必ずオーダーをとってきます」と頭を下げ続けました。
「やってみよう、といってもらうまで、その場を動かない覚悟でした」。そして「繊細な糸から編み立てられる、日本ならではの高度なニット技術を世界に発信したい」という阿賀岡さんの想いは、熟練の技を持つ職人の心を動かしました。そして見本の靴下が完成します。

ここからキャリーバックひとつで各展示会への参加をスタート。「楽しかったです。自分のブランドを見てもらって、それが市場に通用するものかを判断いただくんですから」。2007年、30歳の年です。

「始めて引き合いがあった時はうれしかったですね。すぐ奈良工場に連絡をとり、感謝の気持ちを伝えました」

『時代の空気感とクラフトマンシップを共存させ、常に新しい編み表現を探求する』というコンセプトのブランド「Ayame'」。そのプロダクトは、ひとつひとつに阿賀岡さんの想いが編みこまれていて、個性的な表情と温かみがあります。そこを支えるMade in Japanの強力なクオリティ。2つの融合は、まさに岩をも動かす力をもっていました。
2007年にスタート以来、着々とファンを獲得し、ロンドン滞在中に培った人脈から、 2009年にはPari Fashion Weekの展示会に出展するまでに。 以降、年二回のペースで、東京、パリ、ロンドンにてコレクションを発表中です。

この阿賀岡さんの好奇心とチャレンジ精神は、日本の靴下デザインの新しい時代を予感させるに充分足るパワーを感じました。

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