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知らないと損をする
相続・贈与対策

2016/05/16
【70代のマネー】マイナンバー制度で変わる相続対策

平成27年10月より「マイナンバー(社会保障・税番号)制度」がスタートし、国民の一人ひとりに個人番号が割り当てられました。今後、さまざまな行政手続きを行う際にはこの番号が必要となります。

このマイナンバー導入で、まずは社会保障、税金、災害対策でマイナンバーの利用が始まり、 健康保険証、各種資格証明書の一体化 ・証券口座、投資信託口座、積立金、年金型保険、100万円以上の国内入金、海外送金などが紐付けられます。2017年からは行政機関での連携が始まり、確定申告、源泉徴収票、特定口座年間取引報告書などで利用されます。そして、2018年からは銀行の預金口座も紐付けられる予定です。

それにより、金融機関に預金している資産額は国に正確に把握され、銀行を通した贈与などは簡単に名寄せ(同一名義による複数の口座情報を統合する作業)できるため、生前贈与などでのグレーゾーンの余地が減り、財産移転の自由度はなくなります。金融所得の課税が一体化し、総合課税が導入される可能性も予想されています。

そもそも相続税においては、銀行預金や有価証券は額面どおりの財産価値になり、財産評価を下げて税を軽減するなどの対策はできません。せっかく貯めた預金は、基礎控除額を超えると相続税が課税されて、減ってしまいます。

こうしたことから、銀行預金や有価証券といった動産(不動産以外の財産)に対する税対策はますます難しい時代に。そのまま持ち続けるよりも資産の形を替えて活用するほうが賢明と言えるでしょう。


case.現金を不動産に換えて、遺産分割トラブルもなく相続対策ができた実例

被相続人:旦那さん(80代男性)
相続人:本人(Aさん70代女性)、長男、長女

Aさんの旦那さんは数年前から難病を発症し、自宅療養をされていますが、少し前に余命宣告をされました。旦那さんの余命が長くないと知って、Aさんは相続対策をしておかなくてはと思い立たれました。

自宅では、Aさんご夫婦と一緒に長男が暮らしています。長女は自宅で音楽教室を営まれていますが、住まいは近くにマンションを借りています。お二人とも独身で収入は安定せず、親に頼りきりという状況です。

財産の確認と課題

旦那さんは親から相続した財産を有価証券にしており、ご自分でも賃貸不動産を3物件所有されています。財産評価をすると自宅を含む不動産が4物件合わせて1億円、動産が1億6,000万円、合計2億6,000万円となりました。旦那さんが亡くなった場合、相続人はAさん、長男、長女の3人になるので、相続税は4,320万円と試算できました。

一般的には、配偶者の税額軽減を適用すれば、納税の負担は少なくなるのですが、実はAさんにも動産が6,000万円、法人への貸付金が4,000万円、合わせて1億円の財産があるため、配偶者の特例を使うメリットが生かせず、多額の相続税がかかってきます。

ちなみに、旦那さんは不動産用の法人を設立されていて、所有する賃貸不動産については現在Aさんが代表者になっています。
Aさん自身は、不動産運営や相続対策の知識に乏しく、確定申告と法人の決算は旦那さんと税理士事務所に任せきりにしていました。


対策その1:有価証券で賃貸マンション購入

生前贈与を活用した対策も検討してみましたが、マイナンバー制度を考えると有効ではないのと、旦那さんの体調も考慮し、時間をかけずに節税効果を高める方法を提案しました。

まずは、預けたままの有価証券の1億円を解約し、対策に活用することにしました。
将来的に長男、長女が均等に分けられるように、2,200万円~2,800万円の1ルーム、1DKの賃貸マンションを、立地を分けて4つ購入することにしました。
これらの区分マンションは相続する際には貸家として評価されるので、30%まで財産評価減になります。


対策その2:長女のために居住用中古分譲マンションを購入

長女が暮らすアパートの家賃は、旦那さんが支払っていました。そこで、預金3,000万円を使って長女が暮らすための中古分譲マンションを自宅近くに購入することにしました。
そのことで、不動産評価で約50%の財産評価減になります。
ちなみに自宅は同居する長男に相続させる予定です。

今回の相続対策のポイント

Aさんは旦那さんの余命宣告を受けており、相続が1年以内に発生するのではないかと不安に思って、すぐに行動に移されました。そのことが、まだ旦那さんが元気なうちに、遺産分割による家族間のトラブルもなく子どもたちに平等に財産を残すことができ、結果的に相続税も約1,400万円まで下げることができ、約2,920万円の節税に成功したのです。

被相続人である旦那さんも、うまく節税ができて、心置きなく余生が過ごせるとほっとされているようです。
マイナンバー制度の導入により、相続になった場合は、これまでにも増して漏れがない申告が求められます。相続開始後に慌てて調査、確認するようなことでは対策が間に合わないかもしれません。生前から名義預金や贈与などを確認、整理しておくようにしましょう。

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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。

本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。