<シリーズ1>実例から学ぶ「不動産投資のノウハウ」
2011年の融資戦略
こちらにコラムを書かせていただいて、早6ヵ月が経ちました。今年最初のテーマは、ズバリ「2011年の融資戦略」についてです。
融資と不動産とは、切っても切れない関係にあります。金融機関が積極的に融資をしている時期には、不動産を買える人が増えるので物件価格は上がる傾向にあり、融資を引き締めている時期には、逆に買える人が減るので物件価格は下がります。
そして「今はどうなのか?」というと、一時期ほどの勢いはないものの、割合積極的に融資を行っているのではないかと感じています。しっかり戦略を立てて、ご自身の目的にあった資金調達をしていただきたいと思います。
融資の受けやすい不動産を購入する
売りに出ている不動産物件はたくさんありますが、世の中には「融資を受けやすい不動産」と「融資が受けにくい不動産」があります。
不動産投資家の方が積極的に規模の拡大を進めている時期には、もちろん「融資を受けやすい不動産」を集中して購入し、できるだけ自己資金を温存しながら購入を進めていきたいところです。
まず、金融機関は不動産物件の「法定耐用年数」を非常に重視しており、法定耐用年数の残存期間のうちに、ローンの返済が終わっているような融資を好みます。
従って耐用年数が長い鉄筋コンクリート(RC)が融資戦略上は有利であり、返済期間が長く取れる築20年未満の物件を狙って購入すると、融資が受けやすくなります。
また、事務所や店舗に比べると一般の住居は賃料水準が安定しており、収入の予測が立てやすいので、同じく金融機関に好まれます。
築年数が古めの物件であったり、商業ビルであっても融資を受けることはできるのですが、多めに自己資金を入れるように要請されたり、返済期間が短めの融資しか受けられないことも多いので、比較的上級者向けの不動産だと言えます。
築年数が浅めのRC、居住用の不動産を好むという金融機関の姿勢は、ほとんど「ルール」と言っていいほど変化がありませんので、「できるだけ自己資金を使わずに不動産を購入していきたい」という方は、2011年もこのような不動産を狙って購入する必要があります。
銀行選びのポイント
それから、金融機関ごとに融資の姿勢はかなり違っているので「どの銀行を選択するのか」というのは、複数棟の物件を購入していく場合には、非常に重要な要素になります。
まず、「アパートローン」という定型化された融資商品を積極的に販売している銀行では、物件の積算評価や収益性、本人の年収など、あらかじめ決まっているチェックポイントにそれぞれの案件を当てはめて、合致していれば融資OK。基準からずれてしまった場合はNG...と、誰にでもわかりやすい基準で審査をしています。
このような銀行では、賃貸業の経験や実績、本人の熱意などは融資審査上あまり重視されません。従って、比較的初期の段階で利用するのに向いていると言えます。
また、アパートローンでは「本人の総借入額」を融資基準のひとつとしている場合が多く、例えば「他行も合わせての借入総額で2億円以内」「給与年収の20倍まで」などと決まっているので、そういう意味でも早めに活用する金融機関として向いています。
もちろん、「アパートローン」を取り扱っていない銀行でも、上記のような明確な融資基準がないというだけで、アパートを購入する資金の融資はしています。
そのような銀行では、融資を受けられるかどうかの判断は個別案件ごとに検討されるので、アパートローンの基準には合わないような物件でも融資を受けられる可能性があります。
また、過去に何億円借りていようと、それだけを理由に融資を受けられないということがありません。すでにアパートローンを利用して不動産を購入しており、その物件の運用実績(入居率や収支)が良好である場合は、「賃貸業経営者として優秀である」とプラスの判断をされるので、経験者向きということになります。
とにかく数を当たってみる
収益不動産購入のための資金を融資してくれる金融機関として、いくつの銀行が思い浮かぶでしょうか? 最近よく利用されているのが、オリックス銀行やスルガ銀行、千葉銀行などですね。
しかしもちろん、銀行は上記の3つだけではありません。それどころか、極端な話、すべての金融機関が不動産を担保にした融資を行っているわけです。メジャーな銀行ひとつかふたつに打診をしてみて、断られたら購入断念...というのは、あまりにももったいないのではないかと思います。
先日、収益不動産のコンサルティングを行っているある会社を訪問したのですが、日本各地の金融機関から、大量のお歳暮が届いていて驚きました。
お歳暮が届く理由はもちろん、そのコンサルティング会社が融資の案件をたくさん紹介しているからに他ならないわけですが、普段あまり名前を聞くことのない銀行であっても、日常的に不動産購入資金の融資を行っているということがわかった、興味深い出来事でした。
「このような(あまり聞かない)銀行とは、どのようにして取引ができるようになったのですか?」とたずねてみたのですが、このようなコンサルティング会社であっても、金融機関の開拓手法は、普通の大家さんと変わりがありませんでした。つまり...
「購入物件が所在するエリアに支店がある金融機関に電話をする」
「感触がよければ訪問して、案件の説明をする」
「その際に、その案件についての審査だけでなく、どんな物件が好まれるかなどの融資スタンスをヒアリングして、次回以降に役立てる」
という地道な行動の繰り返しです。
「こんな物件の融資が通りやすい」という予備知識は必要ですが、あとはできるだけ多くの金融機関に対して真摯にアタックを続けることができるかどうかが、最終的な資金調達の成否を分けるのではないかと思います。