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知らないと損をする
相続・贈与対策

2014/04/14
相続税を減らす生前の不動産対策【購入編】

現金を残しても利息もつかず、節税もできない

「土地は所有してさえいれば値上がりする財産」という常識が崩れたため、多くの方が価値の変わらない「現金」を残すためにコツコツと貯蓄をされています。相続相談に来られる方の中にも、子どもや孫に財産を残すために節約し、何千万円、中には億単位で貯蓄をして、「相続税がかかっても現金で払えるから安心だ」と言われる方が、数多くいらっしゃいます。

ですが、今や貯金にはほとんど利息がつかず、利息で生活費をまかなうことなど夢の話。相続ともなると、貯めてきた現金により多くの税金が課税される時代です。貯金は金融機関に預けてある残高がそのまま財産評価となり、亡くなった後では1円も減らすことはできません。現金のままでは、節税することができないのです。

現金だと15%減ってしまう

1億円の現金を残して亡くなり、子供1人に相続した場合に税金がどうなるかを検証します。

相続財産:1億円
基礎控除:3,600万円 (2015年以降)
課税財産:6,400万円
相続税:1,220万円 (税率30%、控除額700万円)
納税後の財産:8,780万円

このように、2015年の相続税改正後は1億円の財産を1人の相続人が相続する場合、1,220万円の納税が必要になります。そのほか相続税の申告費用などもかかってきますので、残りを8,500万円程だとすると財産の15%が減ってしまう計算になります。

資産現金よりも不動産で持つ

現金が全部なくなるわけではなく残るから良いのでは?という方もいらっしゃるでしょうが、これを不動産に替えれば相続税をなくすこともできるのです。
たとえば、1億円で自宅を購入し、子供が同居していれば、財産評価と特例の効果で納税は不要になります。また、1億円で賃貸不動産を購入し、賃貸事業をしている場合も、評価と特例の効果で納税も申告も不要になります。

【実例】
ご主人の生命保険を解約、収益マンションを購入して節税したYさんの場合

相続人:Yさん(妻)+息子さん1人  被相続人:Yさんのご主人

Yさんのご主人は会社を定年退職し、ほっとしたのもつかの間、体調を崩されてしまいました。近くの総合病院で検査を受けたところ深刻な病気だと診断され、入院して手術を受けられました。その後、ご主人は何度か入退院を繰り返しましたが、いよいよ余命半年と宣告されてしまったことから、Yさんは息子さんと一緒に相談に来られました。これまで資産の運用はご主人に任せきりでしたので、Yさんはどのような対策をすれば良いかわからない状況でした。

そこで、いつご主人が亡くなられるかわからないため、2段階に分けた相続対策を提案しました。

対策1:居住用の配偶者贈与の特例で自宅を妻に贈与する

まずはご主人の体調を考慮し、すぐにできる節税対策として、自宅をご主人から妻であるYさんに贈与することを提案しました。万一、ほかの節税対策が間に合わなかったときのために、確実に節税できることから着手しようと判断しました。

対策2:生命保険を解約し、収益マンションを購入する

Yさんのご主人は、父親から相続した財産を1億3,900万円に換金して、すべて全期間一括払い(一時払い)の生命保険をかけられていました。生命保険であれば相続税対策は安心という認識を持たれていたのかもしれませんが、相続の節税効果は2人で1,000万円にしかならず、それ以上は課税されてしまいます。
そこで、生命保険を解約しても元金割れしないことが確認できたので、1億3,900万円のうち1億2,OOO万円を解約し、そのお金で収益マンション4室を購入することで、節税しながら家賃を受け取る方法を提案。そうすることにより賃貸事業で小規模宅地等の特例が使えるようになりました。

対策1、2については、ご主人の理解を得ながら進めました。自宅の贈与はすぐに手続きができ、生命保険の解約、収益マンションの購入も3ヵ月ほどで完了したので、ご主人の意識があるうちに対策をすべて完了することができました。節税対策が進んで納税を少なくでき、家賃収入を得られる財産ができたことで、ご主人はとても安心されたそうです。対策後、3ヵ月後にご主人は亡くなられましたが、配偶者の特例を使ったり、財産の一部を不動産に換えることで相続税を減らすことができました。短期間で対策できたことが幸いでした。

◇対策1・2を施したことによる節税額◇
[対策前 財産評価1億9,630万円 相続税3,229万円(改正法)]

(計算式)
1億9,630--4,200万円(基礎控除)=1億5,430万円
1億5,430万円÷2(妻と息子1人)=7,715万円
7,715万×30%-700万円(控除)=1,614万5,000円(1人あたりの相続税)
1,614万5000円×2=3,229万円

対策前の相続財産の内訳
自宅(土地、建物):1,830万円
生命保険:1億3,900万円
その他(マンション、預貯金、有価証券など):3,900万円
[合計]1億9,630万円

◇対策1
自宅を配偶者に贈与。配偶者贈与の特例により贈与税は0円。
◇対策2
1.生命保険1億2,000万円を解約し、収益マンションを4室購入。固定資産税、貸家評価などで約3分の1の4,000万円の評価額に。
2.収益マンションの土地の価格は4,000万円の3分の1と想定し、1,333万円。
 小規模宅地等の特例を適用し、50%に値する666万円が評価額から減額に。

[対策後 財産評価9,800万円 相続税640.1万円(改正法)]

(計算式)
9,800万円- 666万円=9,134万円
9,134万円-4,200万円(基礎控除)=4,934万円
4,934万円÷2(妻と息子1人)=2,467万円
2,467万円×15%-50万円=320万500円(1人あたりの相続税)
320万500円×2=640万1,000円

対策後の相続財産の内訳
自宅(土地、建物):0円
収益マンション:4,000万円
生命保険:1,900万円
その他(マンション、預貯金、有価証券など):3,900万円
[合計]9,800万円

【節税額】2,589万円

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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。

本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。