2015/03/02
認知症のリスクが増える!後見人を立てると節税対策はできない
高齢化社会は認知症も増える
誰しも元気で長生きするのを望んでいることでしょう。日本人の平均寿命は世界一となり、他にはないほどの長寿国になりつつありますが、それにともない、認知症も爆発的に増加。認知症は、年齢を重ねるほど発症する可能性が高まるため、高齢化社会においては今後も増え続けると予想されています。
成年後見人は「相続人のため」には動けない
認知症になると意思能力が低下するため、自分の財産管理もできなくなります。それだけでなく、契約行為もできなくなるため、日常生活に支障をきたすようになります。そのようなことを避けるために、本人に代わって財産管理や契約行為を代理で行う「後見人」を選任することができます。
ただし、「後見人」はあくまでも本人の代理として財産管理、保全をする役割になるため、贈与や購入に関する節税対策を講じることはできません。相続人のための節税対策は、本人のためではないという見解です。
認知症になる前に節税対策をしよう
このように、認知症になり後見人を立ててからでは遺言書や節税といった相続対策ができなくなります。では、相続対策はいつから始めるのがよいのでしょうか?
当然、一人ひとり決断の時期は違うでしょうが、「相続する立場」の方は、"70歳"をボーダーラインとして、相続を考え始める年齢のようです。まだ自分の意思が明確なうちに決断することを心がけたいものです。
【成功実例】
自宅も預金も自分(被相続人)は使えない。相続を前倒して財産を活用
被相続人:祖父
相続人:本人(Yさん 40代女性)
お祖父さんの代襲相続人になった孫のYさん
Yさんのお祖父さんは90歳。お祖母さんはすでに亡くなり自宅で独り暮らしをしていましたが、老人ホームに入所したため自宅は空き家になりました。
お祖父さんの子供は、自宅で同居していた独身の長女と、次女であるYさんのお母さんの二人になります。ですが、 お祖父さんよりも先にYさんのお母さんが亡くなり、続いて長女が亡くなってしまいました。結果、お祖父さんの相続人は次女(Yさんのお母さん)の代襲相続人であるYさんひとりに。お祖父さんの財産も唯一の身内であるYさんが管理することになりました。

不動産購入による節税と、現金贈与による対策を実行
お祖父さんの財産には亡くなった長女の預金が加わり、自宅と預金を合わせて約1億円に。基礎控除3,600万円をはるかに超えています。老人ホームに入所し、年金で暮らせるお祖父さんにとっては、もはや自分では使いきれない財産です。お祖父さんは高齢ながらまだまだ元気で意思能力もはっきりしており、Yさんは対策をするなら今のうちと判断し、私のところに相談に来られました。相続争いの心配はありませんが、お祖父さんが元気なうちに、前倒しで対策をして、相続税を節税する提案をしました。
まず自宅は築50年以上で老朽化しており、Yさん家族が住む選択肢はありません。そこで、売却をして賃貸不動産に買い替えました。相続するYさんが売却するより、所有者であるお祖父さんが売却することで譲渡税はかかりません。次に預金は、Yさんには住宅宅取得資金として、Yさんのお子さん 3人には教育資金として、それぞれお祖父さんから贈与を受けるようにして活用。お祖父さんの同意も得られたので、半年の間に手続きが済み、みなさんが安心されました。
〈揉めないための生前の相続対策のポイント〉
Yさんのような例も含めて、親がまだ元気なうちに揉めずに相続対策を行うポイントとしては、以下のようなことが挙げられます。
・親のサポートを主な目的として相続対策を切り出す
・親の希望を聞き、子どもの役割分担を決める
・情報を家族で共有できるようコミュニケーションを図る
また、親の老後の過ごし方を本人の意向を踏まえながら考えておくことも大切です。
・独り暮らしになっても大丈夫か
・介護が必要になったら、誰がサポートするのか、誰にサポートしてもらいたいか
・認知症になったら、誰がサポートするのか、誰にサポートしてもらいたいか
・もし老人ホームなどに入るなら費用は足りるのか
そして、冒頭でも述べたように、後見人をつける前に相続対策を済ませておくことが重要です。
ご本人が亡くなられてから相続となるよりも、事前にプランをつくって相続を前倒しする方が、家族の絆をより深めるというもの。認知症だと診断される前に行動するよう心がけましょう。
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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。