2014/08/04
ひとり暮らしになったら相談したい!自宅は残す?それとも売却?
ひとり暮らしの末、自宅は空き家になる!?
子どもたちは成人すると学校や仕事の都合で家を離れていきます。今では、学び方も働き方も様々ですので、いつまでも同居して、ずっと実家に住み続ける人は多くないでしょう。結婚も家を離れるタイミングと言えます。
子どもたちが独立すると夫婦二人の生活に戻りますが、いずれはどちらかが先に亡くなり、ひとり暮らしをする時期が訪れます。そして、そのうちひとりで暮らすことが難しくなり、老人ホームなどに入ることになれば、自宅は空き家になります。
住まなくなっても自宅は残したい?
多くの人は、「自宅は残して、次の代の子どもや孫に継承させるもの」という考えをお持ちです。老人ホームなどへの転居は仮住まいであって、誰も住まずに空き家になり、そうした状態が何年続いていても、維持することが財産だという認識をお持ちなのでしょう。
しかし、自宅は活用してこそ価値があるもの。住んだり、貸したりしてこそ価値が生まれるのです。おそらくは、自分はもう住まなくても、子どもに住んでもらいたい、資産として子孫に残してもらいたいという気持ちもあるのでしょう。ただ、親がそう思っていても果たして子どももそう考えるでしょうか?
「実家」は財産になるか?負担になるか?
子どもが「実家」を残してもらいたいと思うか?いらないと思うか?は、ご家庭の事情により分かれます。
例えば、子どもが自分の家を持っているのなら、2軒目の家は不要と考えるのではないでしょうか。
親と子どもの気持ちに温度差が生じる場合も少なくないので、自分が高齢になったときどこに住むかと自宅をどうするかは、元気なうちに親子で話し合い、自分の考えだけでなく、子どもの考えも確認したうえで判断するようにしましよう。
【実例】母親が老人ホームに入ったまま自宅に戻れないAさんの場合
被相続人:Aさんの母親 相続人:Aさん(60代女性)+弟さん
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Aさんの母親は80代後半で、実家にひとり暮らし。Aさんも弟さんも近くに住んではいるものの、ともに自宅を所有しています。長女であるAさんが定年前に仕事を辞めて、実家に通いながら母親の面倒を看てきました。
しかし、一昨年、母親が自宅で転倒して骨折し、入院生活を余儀なくされました。リハビリで回復はしたものの、要介護3の認定を受け、実家でひとり暮らしを続けることが困難になってしまいました。そこで、介護付き老人ホームに入所することになり、実家は空き家となりました。
母親はAさんの父親から相続したアパートも所有しています。老朽化が進んでいますが、130坪の土地にアパートが2棟建っており、相続時にはAさんと弟さんで1棟ずつ分けることで合意しています。問題は空き家となっている実家。Aさんも弟さんも自宅があるため、実家に戻って住むという選択肢はありません。相続税の改正も気になり節税対策を検討されました。
その結果、実家を売却し、老朽化したアパート2棟を解体し、建て直すことに。アパートの建築資金には実家の売却資金と預金を当てるようにすれば、土地や現金が建物に変わります。この方法により借入れのない節税対策をすることができ、家賃収入を増やすことができました。
[対策前]
●財産評価 2億4,000万円
内訳
実家:8,000万円
アパート2棟:1億円(土地 9,000万円+建物 1000万円)
預金:5,000万円
その他(有価証券):1,000万円
[合計]2億4,000万円
●相続税 4,540万円(改正法)
(計算式)
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 2億4,000万円 - 基礎控除 4,200万円(3,000万円+600万円×法定相続人数 2人)=1億
9,800万円
2.子どもだけの相続の場合は均等割となり、1人9,900万円の相続額に税率30%を掛け、定められた控
除額700万円を引きます。さらに2人分を合算します。
9,900万円×30% - 700万円=2,270万円
2,270万円×2=4,540万円
◇対策
1.実家を8,000万円で売却(仲介手数料などの諸経費、譲渡税を差引後)。
2.老朽化したアパート2棟の建直し費用1億2,000万円+諸経費1.000万円に、自宅の売却金8,000万円
と預金5,000万円を充当することで借入金は必要なし。
3.新しいアパートは、固定資産税評価で建築費1億2,000万円の40%の評価額に。さらにそこから借地
権30%を引いた3,360万円の建物評価になった。結果対策後の財産評価は1億3,360万円まで減額す
ることができた。
[対策後]
●財産評価 1億3,360万円
内訳
アパート2棟:1億2,260万円(土地 9,000万円+建物3.360万円)
その他(有価証券):1,000万円
[合計]1億3,360万円
●相続税 1,432万円
(計算式)
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 1億3,360万円 - 基礎控除 4,200万円(3,000万円+600万円×法定相続人数 2
人)=9,160万円
2.子どもだけの相続の場合は均等割となり、1人4,580万円の相続額に税率20%を掛け、定められた控
除額200万円を引きます。さらに2人分を合算します。
4,580万円×20% - 200万円=716万円
716万円×2=1,432万円
【節税額】対策前の相続税 4,540万円 - 対策後の相続税 1,432万円 = 節税額 3,108万円
※さらに小規模宅地等特例を適用すれば△2,250万円の評価減が可能。その場合、対策後の相続税は
982万円に。
親子間で考えの食い違いが生じやすい実家の相続問題も、Aさんや弟さんの意思を尊重しながら、最終的に持ち主である母親が決断することでスムーズに解決。活用できていなかった実家を相続の節税対策に当てることができたのです。
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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。