新生活と住宅ローン~無理のない予算の考え方と、住んでいた家を貸すときの住宅ローン~
2017年04月19日
4月といえば、新生活がスタートする人も少なくないでしょう。昇給や子供の進学などもあって、マイホーム購入を検討している人もいることでしょう。あるいは、転勤の辞令が下りて、急遽引越しをして元の家をどうするか悩まれている人もいるかもしれません。新生活にまつわる住宅ローン関係で知っておきたいことを整理します。
無理のない住宅取得の予算を考える
マイホーム購入を検討する際、まずは物件を調べたり、モデルルームに行くなどをしてイメージを広げることから始める人がほとんどではないでしょうか。エリアや間取り、周辺の環境など、納得するまでいろいろな物件を探されることでしょう。
夢が広がるマイホームですが、その一方でしっかり押さえなくてはいけないのが資金計画です。ついつい後回しになりがちですが、老後資金不足につながるかも知れない重要なものなため、慎重に検討することが大事です。また、負担の大きな住宅ローンを組んで返済に苦しむようでは、せっかくの夢のマイホームも台無しです。物件そのものを選ぶのと同様に、資金計画も十分に検討したいものです。
さて、「無理のない資金計画」とは一体どういう計画でしょうか。「私の場合はいくらまで借りられるでしょうか?」という質問をよく受けますが、銀行がいくら貸してくれるのかということより、「私はいくらのローンなら無理なく返せるのか」ということの方が重要ではないでしょうか。ひいてはそこから逆算した住宅の予算が、「無理なく購入できる予算」です。これについては、銀行も不動産会社の人も考えてはくれません。自分で判断し、自分で家計を守っていくしかないのです。
では、「いくらの物件なら無理なく買えるのか?」を具体的に試算してみましょう。あくまでも、現在の家計状態からの試算です。
<STEP1>毎月支払える住居費はいくら?
まずは、毎月支払うことができる住居費を考えてみましょう。ここまでの額を住居費に充てても大丈夫、というラインを設定する作業です。
「住居費」 =「現在の家賃、駐車場代」+「住宅購入のために貯蓄してきた金額(平均月額)」 |
この金額が、今後も支払える「住居費」の目安となります。ただし、次のような方は少し調整が必要です。
・現在の家賃は負担が重いと感じている方
「現在の家賃」を少し少なめにして計算してみましょう。また、今は共働きなどで高い家賃を払えていても、将来は難しいという方も減らしておいた方が良いでしょう。あくまでも、今後ずっと無理なく支払っていけそうな金額にすることが大事です。
・ボーナス月に住宅購入の貯蓄をしていた方
12ヶ月で割った月平均額をプラスします。
・今後、他の目的の積立てが必要
教育資金など、現在行っていない別の目的の積立が必要な場合、その分を差し引いて算入しない方が無難です。
【Aさんの場合】「毎月支払える住宅費」はいくら? ・現在の家賃13.5万円 ・住宅のための積立 月平均5万円 ・今後、教育資金の積立を始める予定 月3万円 現在の家賃、駐車場代 住宅のための積立 調整額 13.5万円 + 5万円 - 3万円 = 15.5 万円 ・・・I |
<STEP2>購入後、必要になる維持費はいくら?
住宅を購入すると、住宅ローン返済以外にも、賃貸では必要なかったいくつかの費用が生じてきます。固定資産税や修繕費のほか、マンションなら管理費・修繕積立金がかかります。これらのいわゆる「維持費」は実は意外にかかるのです。
維持費を考えずにローン返済額だけを見て、「今までの家賃と同じだから大丈夫」と考えるのは大きな問題です。甘く見ていると、購入後の負担が大きくなってしまうので要注意です。賃貸と購入の大きな違いでもある維持費が、毎月どのくらい必要になるか算出してみましょう。
1・固定資産税・都市計画税
不動産を所有していると毎年かかってくる税金です。すでに販売会社から資金計画を見積もってもらっている場合には、概算が出ていると思います。実際の支払いは年4回の分割(一括支払いも可能)ですが、毎月積み立てて用意しておいた方がいいでしょう。どのくらいになるかわからない人は、仮の額として月1万円としておきます。
2・管理費・修繕積立金
マンションを購入した場合に、毎月必要になる費用です。具体的な物件が決まっていないときは月2万円を仮の額にしておきましょう。一戸建ての方も、定期的に外壁などの手入れが必要になりますので、自主的に積立をしておくといいでしょう。
3・駐車場・駐輪場代
車を持っている方の場合は、駐車場代もかかります。一戸建てで駐車場付きならコストはかかりませんが、一戸建てでも駐車場なしの物件やマンションでは、別途駐車場代がかかります。毎月、だいたいどれくらいの駐車場代がかかるのかを調べて予算に入れておきましょう。自転車やバイクに乗る場合も、マンションなら別途費用がかかる場合がありますので確認しましょう。
4・光熱費等の増加分 賃貸から一戸建てやマンションを購入して住む場合、一般的にはより広い住居となります。また、床暖房など今までなかった設備がつけば、やはり光熱費がアップします。月数千円から1万円は増えるものとして試算してみましょう。
【Aさんの場合】毎月の維持費はいくら? 1・固定資産税・都市計画税分 1万円 2・管理費・修繕積立金 2万円 3・駐車場・駐輪場代 1.8万円 4・光熱費等の増加分 0.7万円 5.5 万円 ・・・II |
<STEP3>無理なく支払える、ローンの月返済額は?
STEP1で出した毎月住居費として使える月額から、STEP2で出した「維持費」を差し引いた額が、住宅ローンの返済に充てることができる金額ということになります。
【Aさんの場合】無理なく支払える、ローンの月返済額は? Iの毎月支払える「住居費」 IIの毎月の「維持費」 15.5万円 - 5.5万円 =10万円 ・・・・・III |
<STEP4>無理なく借入れできる住宅ローンはいくら?
さて、いよいよあなたが無理なく借入れできる住宅ローンの金額を算出してみましょう。
<STEP3>で出した返済可能な毎月のローン返済額と、返済年数から、サイトのシミュレーションを利用して算出します。ここでは、現在の長期固定金利の水準である2%の場合で試算します。返済年数はできるだけ60~65歳までの年数にしましょう。
なお、借入の際には、収入や購入する物件などによって借入可能額が異なります。あくまでも、借入可能額>無理なく借入れできる住宅ローン、という前提になります。
【Aさんの場合】無理なく借入れできる住宅ローン額は? ・Aさんは35歳⇒65歳までは30年間 ・金利は全期間固定1.8%で試算 毎月返済額10万円、返済期間25年の交わる箇所の金額が無理なく借入れできる住宅ローンの目安 約2,780万円 ・・・IV |
<STEP5>購入物件の予算はいくら?
<STEP4>で算出した借入れできる金額に、いままで貯めてきた預貯金や両親からの援助資金をプラスした金額が、無理のない住宅購入の総予算です。ただし、この金額が全額、物件の購入代金に回せるわけではない点に注意しましょう。
購入の際には、ローンに関する諸費用や税金がかかります。また、引越し費用や家具の購入費用なども必要です。この分は、手元に現金で残しておかなくてはなりません。どのくらいの費用がかかるかは、それぞれ異なりますが、一般的には物件価額の5~10%が目安とされています。
【Aさんの場合】購入できる物件はいくらくらい? ローン借入れ額(IVで出した数字) 約2,780万円 住宅に回せる預貯金 400万円 両親等からの援助 600万円 合計 約3,780万円 ・・・V Vのうち、諸費用を5%と考えれば、 Vで出した金額 約3,780万円 ÷ 1.05 = 約3,600万円← 無理なく購入できる物件価格 |
住宅の予算は、あくまでも、自分自身の生活が無理なく送れるかどうかという点を重視して資金計画を立てなくてはなりません。そのため、20年、30年間のお金の収支を確認するために「キャッシュフロー表」を作成して確認したいもの。ファイナンシャルプランナーなどに作成してもらうと安心です。住宅を購入しても、老後まで家計を維持できることが確認できます。
また、住宅購入を機に、ムダな保険に入っていないか、食費や通信費などでもっと節約できないだろうか、知らないうちに使ってしまっている使途不明金はないだろうかなど、家計の見直しにも取り組んでみましょう。住宅ローンを完済して、老後まで楽しく暮らせることが、本当の意味での住宅取得の成功と言えます。
住んでいた家を人に貸すときの住宅ローンは?
マイホームがあるのに、転勤などで家族全員で引越す場合は、住んでいた家の問題が残ります。
特にまだ数年しか住んでいないマイホームであれば、なおさら手放したくない気持ちになります。また戻れる可能性があるのであれば賃貸に出してキープするのはありですが、そうでない場合には大いに迷うことでしょう。
ちなみに住宅ローンが残っていて、賃貸に出す場合のメリット・デメリットを整理しておきましょう。
<売らずに賃貸に出すメリット>
・借り手が見つかれば家賃収入が入る
・金利や固定資産税が経費になる
・保有する間に物件価格が上がれば資産価値が上がる
<売らずに賃貸に出すデメリット>
・原則、住宅ローンのまま借りられない(原則、アパートローンなどに借り換える必要あり)
・住宅ローン控除は利用できない(非居住者となるため)
・リフォームやハウスクリーニングでそれなりのコストがかかる
・借り手が見つからないと家賃収入が入らず、住宅ローンを負担しなければならない
・管理を人に頼むと管理コストもかかる
・賃貸物件として売却する場合、価格が低くなりやすい
・保有する間に物件価格が下がれば資産価値が下がる
このほかにも、今の家に住宅ローンが残っていて赴任先でまた家を買う場合に、住宅ローンが借りられない可能性が高いこともデメリットになるでしょう。社宅などが提供されたり、賃貸で住むのであれば問題はないですが。
最終的には、不動産は保有が5年超か5年未満かで売買時の税金が変わるため、そのあたりも判断材料の1つになるかもしれませんが、何より、保有することで少なくとも今より価値が下がらないか、上がることが見込まれるかどうかをよく考えてみる必要がありそうです。
気持ちがわくわくしがちな春ですが、わが家の資産の大きな部分を占めるわけですから、しっかり判断したいものです。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。
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