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不動産投資・収益物件 > 不動産投資の最新動向 > 財産の管理から引き継ぎまで「家族信託」の効果(3ページ目)
不動産投資の物件選びのポイントや不動産投資の出口戦略、利回り・不動産価格・マーケット情報など不動産投資に関する最新動向をわかりやすく解説いたします。
2015年2月17日
――具体的には、どのような仕組みで活用するのですか。
芳屋/いくつか事例を紹介しましょう。まず、不動産投資や土地活用を実践しているオーナーによくあるケースです。
82歳のAさんは老朽化したアパートを2棟所有し、長男・長女の2人の子どもがいます。あるとき、建物の不具合を修繕している際にうっかり頭にケガをして入院してしまいました。もし意志判断能力がなくなり、そのまま寝たきりになった場合アパートの管理はどうするのでしょうか? 今後、大規模修繕や建て替えの機会があっても何もできなくなるし、賃貸借契約を結ぶことすらできなくなるおそれがあります。
そこで、認知症や病気・ケガによる意思判断喪失のリスクを回避するために、家族信託の仕組みを採り入れて、元気なうちは子供と一緒に管理を行い、良い時期に子どもたちに任せ、自分は楽隠居をすることにしたのです。
Aさん本人が委託者と受益者を兼ね、長男と長女それぞれが将来引き継ぐ物件ごとに受託者となりました。それによって、子供たちは自覚をもって物件を管理し、ノウハウも受け継ぐことができるようになり、Aさんに万が一のことがあっても、財産はしっかり管理ができ、将来も安泰になったといえるでしょう。
―――1つの収益物件を複数の兄弟で共有しているケースも多いのですが、その場合も家族信託は有効ですか。
芳屋/よくあるケースですね。つい最近も、平均年齢が80歳を超える兄弟姉妹5人で、築年の古い賃貸マンションを共有している例がありました。仮に誰か一人が先に亡くなると、その子どもたちに持ち分が相続され、さらに共有者の数が増えてしまいます。そうなるとほとんど意志決定ができずに、手の施しようがなくなります。
しかも、兄弟の中には既に認知症予備軍の方もいたので、その子どもを受託者として信託契約を結ぶことで、財産管理に支障がないようにしました。さらに将来全員で売却して共有者で金銭を分配しようという話になった場合でも、受託者である子供とその他の兄弟姉妹で協力すれば売ることも可能です。もし家族信託を組んでいなければ共有者の一人でも意思判断ができない状況では、売ることも建て替えることもできない可能性があることを認識する必要があります。
芳屋/次の例は、一族の外に資産が流出するのを防ぐ対策です。
Bさんには、2人の息子がいますが、自宅に同居している長男夫婦には子どもがいません。独立した次男夫婦に子どもが1人います。他に収益物件を所有していますが、代々引き継いだ不動産はすべて長男に相続させたいと考えていました。
昔ながらの家督相続的な方法も、遺言で指定すれば可能です。しかし今のままでは、長男が亡くなるとその妻がこれらの不動産を相続し、さらに妻が亡くなるとその親族に引き継がれることになってしまいます。次男夫婦の子ども、つまり直系の孫がいるのに、不動産が一族の外部に流出してしまうのです。
そこで、家族信託を活用し、次男夫婦の子(Bさんの孫)を受託者として信託契約を結びました。Bさんは委託者と受益者を兼ねています。その上で、長男を第2受益者、その妻を第3受益者、そして孫を第4受益者に指定しました。
最終的には受託者兼受益者となるため一定期限で信託が消滅し、残余財産は現物として孫に帰属します。これによって、長男夫婦が生きている間は"家督相続"をしたのと同じように収益を享受でき、その後に直系の孫に財産が引き継がれる、という道筋を作ることに成功しました。
―――家族信託を使うに当たって、何か注意点はありますか?
芳屋/家族信託は非常に有効な手法ですが、万能ではありません。決して、家族信託を組成することが目的ではなく、その人が望む資産管理や承継の姿を実現するために家族信託が必要であれば、その手段の一つとして選択すればいいのです。当然、遺言や成年後見制度との比較も必要でしょうし、複合的に併用するケースも当然あることでしょう。
また、家族に託すのが一番安心できるといいましたが、場合によっては、財産を食いつぶしてしまう"不肖の息子"がいないとも限りません。そうした懸念がある時は、税理士や司法書士などの専門家に信託監督人として、監視役になってもらう方法もあります。
いずれにしても、家族全員でよく話し合って、みんなが幸せになれる財産承継のために協力するという視点が大切でしょう。
まだ新しく誕生したばかりの制度ですから、個別の事情に合わせて緻密に組み立てるのは難しい面があります。家族信託の実務に長けた専門家と相談の上、実行することをお勧めします。