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一期一会の手仕事 インタビュー

あかり作家 坂本尚世 (39歳)さん
2004年、奈良県吉野に工房兼常設ギャラリー「あかり工房 吉野」をオープン。吉野の良質な桧や杉を使った癒しの照明器具を制作販売。あかり作り体験も開催している。(9月中旬にはパリデザインウィークへ参加出展の予定。)
吉野の大自然をあかりで表現
ピンクからオレンジ色へと変わりゆく暖かい夕日。そんな夕日を思わせる、優しいあかりを作り出しているのが、あかり作家の坂本尚世さん。坂本さんの実家は吉野の製材所なので、幼い頃から、木に触れ合って育ってきたと言います。短大を卒業後、インテリアの仕事がしたくて専門学校へ。そこで、照明塾・橋田裕司氏の提唱する「ライトセラピー」に出合い、強い感銘を受け、翌年から吉野檜(ヒノキ)と吉野和紙を使って本格的な「あかり創り」をスタートさせました。そんな彼女が「あかり作家」になったきっかけ、また、あかりがもたらす効果などについてお話を聞いてきました。

「ライトセラピー」という考えとの出会い

インテリアデザイナーの専門学校で出会った、照明塾・橋田氏は「あかりが心理的に影響を与える」ということを教えてくれました。人間は「朝日を浴びて起き、白日の下で仕事をする。夕日が沈む頃、家に帰り休息する」という生体リズムになっています。そのため、寝る前に蛍光灯のような白い光を使っていると脳はリラックスできず、夕日のようなオレンジ色を使うことで、脳はリラックスするといわれています。専門書で読んだのですが、眠る2時間前からオレンジ色のあかりを使っていると、より深い良質の眠りが得られると実証されているようです。当時はすでに「アロマテラピー」とい言葉を良く聞く様になっていたので、橋田氏の提唱する「ライトセラピー」という言葉が感覚的に理解できて、奥深さを知るにつれ、自分のなかでとても納得し、感銘を受けました。

ちょうどその頃、地元の吉野檜の価値が下がっていて、とても大切に育てられたものなのに、世のみなさんになかなかその良さが伝わらないというもどかしさがありました。そこで「この吉野檜を使って、人に癒しを与えるあかりを作りたいな」と思ったのです。しかし、材料は定まったものの、薄さや模様などで微妙に違ってくる檜を前に苦悩の日々が続きました。木工教室で、かんなのとぎ方、木の扱い方の基本を学び、別の木工所に頼み込み、電動かんなの使い方をマスター。木は呼吸しているので、反ってきたり色が変わってきたり……。試行錯誤すること2~3年。ようやく自分で納得のいくものが出来上がってきたように思います。

あかりは健康へつながるもの

現在は、あかり創り教室やイベントなどでさまざまなお客様と出会い、お話をすることができるのですが、眠りに対して問題を抱えている方がとても多いような気がします。「良い睡眠」への関心が高まる昨今、ストレスは万病のもと、とも言いますし、特に日本人というのは交感神経が高まりすぎていて、いざ眠ろうとしたときにすぐに副交感神経に変化することができないようです。眠る前の時間、暗めのオレンジ色のあかりを灯すことによって副交感神経が高まり、良い眠りに誘うことができるのです。良い眠りはストレスを解消し、またそれが健康につながることであると私は思っています。

お客様の喜ぶ顔が原動力に

すべてのかたに私の作品を使って頂くことはできませんので、試していただきたいことがあります。今、みなさんが使ってらっしゃる照明の位置を床に近い場所に変える、これだけで部屋の雰囲気がぐっと変化します。照明を高い位置ではなく、なるべく床に近い低い場所へ置くことで、夕日が沈むように、身体もリラックスします。実際、マッサージやアロマテラピーなどサロンを経営されている方々からは、「照明を暗いオレンジ色に、そして位置を変えただけで、雰囲気も良くなり、とてもリラックスできました」と、喜んでいただいています。

坂本さんが丹精こめて作り上げたやさしい日だまりのようなあかりは、照明器具という枠からさらに広がり、人々の心と身体に癒しを届けてくれそうです。

注目の商品

あかり工房 吉野 http://www.akari-yoshino.com/
工房&ギャラリー見学ご希望の方は必ず事前にお電話でご確認下さい。

「私が吉野檜をあかりの素材に使うのには、主に2つの理由があります。
ひとつは地元の素晴らしい素材を活かしたいから。 そしてもうひとつは檜を透過した光の色や質が「ライトセラピー」に適しているからなのです。ライトセラピーとは、心を癒すあかり(あかりでやすらぎの時間を過ごす)という意味。心を癒すのは、夕日が沈む頃のような「オレンジ色、暗め、低い位置からの光」です。人間の身体には本来、太陽の動きに深く関係した「生体リズム」があり、明るくなると活動的に、暗くなると静的になります。 寝る直前まで明るい蛍光灯の光を浴びているとストレスが溜まるそうです。
「暗めのオレンジ色のあかり」は実は人間にとって必要なあかりなのです。
さらに自然素材の持つ「ゆらぎ」や手触り、貼りあわせによって生まれる陰影や「不均質さ」が リラックス効果を高めてくれるようです。」

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