晴れてマイホームを購入し、新しい生活をスタートさせた野村夫妻。貯蓄も順調で、美咲はそろそろ繰上返済をしようと健太に提案。
しかし健太は、せっかく貯めたのだから、今すぐ繰上返済をしなくても、新しい車を買ったり、海外旅行に行ったりしては?という意見。
果たして、繰上返済は今すべきなのか、もっとあとにするべきなのでしょうか――。
●野村夫妻の住宅ローン
表1 繰上返済の時期・方法の違いによる効果の比較
●100万円の繰上返済をした場合(美咲の住宅ローン)
借入額1,500万円 全期間固定金利型1.5% 返済期間30年 元利均等返済 ボーナス返済なし
ファイナンシャル・プランナー's アドバイス!
「期間短縮型」と「返済額軽減型」はどっちがお得?
繰上返済は、返済期間を短縮するか(期間短縮型)、返済額を軽減するか(返済額軽減型)を選択することができます。
同じ時期、同じ金額を繰上返済する場合、「期間短縮型」と「返済額軽減型」を比べると、「期間短縮型」のほうが利息軽減効果は大きくなります。
期間短縮型 繰上返済のイメージ
返済額軽減型 繰上返済のイメージ
単純に総返済額を減らしたいという場合は「期間短縮型」のほうが効果が大きいといえますが、将来、何らかの事情で世帯収入が減るようなことが予想される場合には、「返済額軽減型」で月々の返済額を減らし、家計の負担を軽くしておくほうがいい場合もあります。繰上返済を行うときは、そのときの状況だけではなく、将来の家計の変化も想定して検討するようにしてください。
ちなみに、夫婦で別々の住宅ローンを借りている、2カ所から住宅ローンを借りている、というように、2つ以上の住宅ローンを利用している場合は、「金利の高いほう」「金額の多いほう」「借入期間(残期間)の長いほう」から優先的に返済していくと利息の軽減額が多くなります。
ただし、変動金利型または固定期間選択型の住宅ローンを借りている場合は、将来の金利上昇リスクに備えて、全期間固定金利型の住宅ローンよりも先に繰上返済をしておいたほうがいい場合もあります。
いずれにしても、2つ以上のローンを借りている方は、繰上返済の効果をそれぞれシミュレーションして、慎重に検討するようにしましょう。
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繰上返済はいくらからできる?
繰上返済する場合の金額は「1円~」としている金融機関が多くなっています。ただし、中にはフラット35の10万円以上(インターネットからの場合)のように、最低額が決まっているところもありますので、確認してみましょう。
1円から返済OKといはいえ、期間短縮型の場合、実際には、毎月返済額の元金の額に相当する金額1ヶ月分は最低必要になる金融機関もあります。また、ボーナス返済を併用している人は、短縮期間が6ヶ月きざみにしかできないなど、細かいルールは、金融機関ごとに異なります。あらかじめ窓口やサイトのシミュレーションを利用して、実際の最低額を確認するようにしましょう。
繰上返済の手数料は?
繰上返済にあたっては、手数料がかかる場合もあります。また、同一の金融機関であっても、繰上返済の額や金利タイプ、店頭で行うかインターネットで行うかなどによって、手数料額が異なる場合もあります。窓口だと手数料がかかるが、インターネットから手続きすれば無料とする金融機関が多くなっています。
手続きは、窓口・インターネット・電話からなど、自分にあった方法を選ぶことができます。好きなタイミングで、少額ずつ繰上返済したいと考えている人は、「インターネット可、手数料無料」としている金融機関を選んでおくとよいでしょう。
表2 繰上返済手数料の例(一部繰上返済の場合)
※ 保証料を一括で支払っている場合、繰上返済によって保証料の一部が戻ります。別途、保証会社手数料(例えば、3,240円、10,800円など)がかかりますが、戻る保証料から差し引かれます。
今回の教訓
(繰上返済に)手数料がかかるローンは、ある程度まとまった額になってから繰上返済しよう!
利息軽減効果が大きいのは「返済額軽減型」より「期間短縮型」!