不動産サイト nomu.com > ノムコムタイムズ > Vol.37 マンションで人気のある住戸の位置はどこ?
Vol.37 2011.12.01
次に、階別のメリット・デメリットを見てみましょう。前ページと同じく、3LDK、80m2、ファミリータイプの全く同じ間取りの住居が15戸ある小規模マンション(地上3階、外廊下形式)を例にします。
採光・通風・プライバシーでは2・3階が有利
採光・通風・プライバシー面で階別に比較してみましょう(【図3】)。採光面ではバルコニー側に大きな建物があれば下階から影の面積が広がっていくため上階ほど条件がよく、大きな建物がなければ1~3階ではそれほど大きな違いはありません。

【図3】各階平面図。今度は階別にメリット・デメリットを検証してみましょう。
一方で、風通りには階数別でかなり違いがあります。1階よりも2階、2階よりも3階の方が、風の通り抜けがよくなります。これはそれぞれの階の外廊下を歩いてみると違いが実感できると思います。
また、窓を開けやすい環境も下階よりも上階の方が整います。特に1階では、駐車場にくる人や道路を歩く人、ご近所の家と視線が合い、窓もカーテンも気持ち良く開けっぱなしにはしにくいでしょう。
反対に2階や3階になれば駐車場や道路の人と視線がずれるため、窓やカーテンはぐんと開けやすくなります。周りが戸建て住宅の多い環境であれば、3階以上なら目の前が開けて気持ち良く過ごせるでしょう。
足音等の騒音
子どもの足音や、引き戸を開ける際の「ガラガラガラ……」という音など、上階の音は下階に響きます。ですから、静かな環境を望むなら最上階が望ましいでしょう。しかし実際には上階にどのような家族が住むかどうかで受ける影響が変わってきます。たとえば1階に住んでいても、上階が大人だけの世帯であれば上からの音はあまり気にならないでしょう。また、1階なら下階への気兼ねもなく気楽に暮らせますが、上階に住めば下階への配慮が必要となり、どちらの方が良いかはケースバイケースといえそうです。
冬や夏の過ごしやすさ
階別にみる季節ごとの過ごしやすさですが、夏は太陽が照りつける屋根に近い最上階が一番暑くなります。たとえばあるマンションでは、夏の日中にエアコンなしで最上階の室温が一番高く30℃、その下の階では29℃、さらにその下の階では28℃……と、ワンフロア下がるごとに1℃ずつ室温が低くなっていました。

夏や冬のすごしやすさも階ごとで違いがあります。
反対に冬場は、床下からの冷気の影響で最下階である1階が一番冷えます。また、窓面の多い妻側住戸(101、201、301及び105、205、305号室)は窓が多い分、冷えやすくなります。したがって、夏も冬も比較的過ごしやすいのは、今回の例では2階の中住戸(202、203、204号室)となります。
結論:どの住戸に人気が集まりやすいか
以上、平面別・階別に、メリット・デメリットを大まかにご説明いたしました。
マンションはいろんな家族が入居する集合体であり、それがマンションライフの楽しさ、醍醐味でもあります。どんな人が隣や上下階に住むかによっても左右されるもの……という点では、やはり上下左右が隣人に囲まれる中住戸よりも、お隣が片側だけでその分気安く、窓が多く採光条件の良い妻側住戸に軍配があがります。
妻側住戸の中でもプライバシーや音の観点をプラスすると、メインエントランスからある程度離れた住戸や上階の方が条件がよいことから、今回のモデルケースでは東南角部屋・最上階である305号室がもっとも条件がよい(=人気のある)住戸だと言えるでしょう。
家族ごとに必要な条件を見極めて
もちろん家族構成により快適な住戸の位置はそれぞれです。子どもが小さいうちは階段の上り下りが少なく済み、外や駐車場に出やすく、下階への音の配慮も少なくて済む1階住居が住みやすいでしょう。昼間は留守がちな大人世帯であれば上階の中住戸が向くかもしれません。
大きな特徴がない中住戸には、寒さ・暑さに影響を受けにくいという見えないメリットがあります。今回ご紹介した特徴を踏まえ、ご自身の家族にとって理想の住居の位置を検討してみてください。
![[写真]井上 恵子(いのうえ けいこ)](images/ph_guide.jpg)
今月のガイド:井上 恵子(いのうえ けいこ)
マンション設計に携わった経験を数多く持つ一級建築士が、住まいの性能を解説。
