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人生を豊かにする
老後のマネー

2014/11/17
介護予防で実現!お金のかからないアクティブな老後

健康寿命延びた

平成24年内閣府が団塊世代を対象に行った意識調査によると、日常生活で悩みやストレスを「あまり(まったく)感じない」が6割、「(非常に)感じている」は4割で、その原因の1位は生活費などの経済的なことでした。続いて2位は僅差で自分の健康や病気が続き、5位に同居している家族の健康や病気、6位に家族や親族に対する介護、といった健康や介護に対する悩みが大きいことが読み取れます。

介護と健康の関係を表す指標の一つに健康寿命(=日常生活に制限のない期間)があります。2014年10月厚生労働省が、2013年の健康寿命は男性71.19歳(2010年より0.78年延び)、女性74.21歳(同0.59年延び)、日常生活に制限のある期間は男性9.02年(2010年より0.11年短縮)、女性12.40年(2010年より0.28年短縮)と発表しました。

東京都福祉保健局では「65歳健康寿命」なるものを発表しています。2012年は、要支援1以上の認定を受けるまでの平均自立期間が男性80.74年、女性82.47年。ほんの少しのサポートでほぼ自立した生活ができる介護2以上の認定を受けるまでの平均自立期間は、男性82.02年、女性85.16年で、平成25年簡易生命表の65歳平均余命(男性19.08年、女性23.97年)との差は男性2年、女性4年です。ピンピンコロリには程遠いですが、このくらいの介護期間ならば、介護者・要介護者はそれほど負担感を持たずに対応できそうな気がします。

体力・運動能力伸びた

「平成24年度体力・運動能力調査の結果」(文部科学省)によると、65歳~79歳の運動能力(上体起こし、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行、など)は調査開始の1998年から一部を除き一貫して上昇しています。また、「10㎏程度の荷物を10m運べる、布団の上げ下ろしができる、立ったままでズボンやスカートがはける」などのADL(日常生活活動)12項目について65歳から79歳の男性の90%以上がすべて可能と答えました。それに対し女性は65~69歳で92%、70~74歳87%、75~79歳79%と加齢に従って可能の割合が減少しています。

スポーツクラブやハイキング同好会などに所属して定期的に少しハードな運動をしたり、日々友人や犬と散歩するなど気軽に、かつ意欲的に身体を動かしている高齢者が増えており、このような地道な運動習慣が健康寿命の延びにつながっているのでしょう。

キーワードは「テクテク、カミカミ、ニコニコ、ドキドキ」

健康寿命を延ばすキーワードは、亀田ファミリークリニック館山の院長によると「テクテク、カミカミ、ニコニコ、ドキドキ」です。「テクテク」はよく歩くこと、「カミカミ」はよく噛むこと、「ニコニコ」はよく笑うこと(ストレスのない生活)、「ドキドキ」はよく感動すること(生きがいのある生活)です。これに「モグモグ(栄養バランスの取れた食事)」を加えると鬼に金棒です。

杏林大学の名誉教授は「一読、十笑、百吸、千字、万歩」を提唱しています。

「一読」...一日に一度は少しかための文章を読む(認知症予防)
「十笑」...一日に少なくとも十回は大笑いする(免疫力アップ)
「百吸」...一日に少なくとも百回は深呼吸をする(副交感神経の緊張が高まり、神経の高ぶりが収ま      り、脈拍は遅くなり、血圧が下がり、筋肉の緊張が低下して動脈中の酸素が増加する)
「千字」...一日に千字くらいは文字を書く(認知症予防)
「万歩」...一日に一万歩は歩く(骨粗しょう症や認知症の予防、ストレス解消、メタボリック症候群の     予防と治療)

以上のような個人で実践する健康寿命を延ばす生活習慣は、一朝一夕に身につくものではありません。そのきっかけづくりに、介護保険や地方自治体が提供する介護予防サービスを利用するのも一手です。

介護予防サービスの内容に変化が

介護予防デイサービスの多くは、ゲームや体操、食事、入浴などを集団で受けるものです。しかし最近は、民間のスポーツクラブと提携し、介護度の進行抑制や機能回復を目的に開発された運動プログラムを使った運動サービス(例えばマシンやプール、ヨガ、脳トレなど)を個人で受けるサービスも提供しています。

要介護・要支援認定を受けていない高齢者に対して地方自治体が実施している介護予防事業にも変化の兆しがあります。例えば埼玉県深谷市が提供する高齢者運動サポート事業は、高齢者が運動習慣を身につけることを目的とするもので、民間スポーツクラブのプール・ジム・スタジオを低料金で利用することができます。

これらは、2015年から2~3年かけて、介護保険の「要支援」向けの生活援助と通所介護(デーサービス)が、介護保険から市町村に移管されることに伴う変化です。今後公的な介護予防サービスは、要介護高齢者をできるだけつくらない介護予防プログラムを提供するようになっていくでしょう。それは、アクティブシニアが利用したくなるような新しいタイプの、集団対応ではなく個人対応の、お仕着せではなく自由度の高いプログラムです。そのような介護予防プログラムの提供を行政に働きかけ積極的に利用することが、自立して生活する幸せな老後期間を延ばすことにつながるでしょう。健康寿命を延ばすということは、リタイア時に想定したライフプランを実現できるということです。豊かで喜びに満ちた幸せな老後は老後資金の準備だけでは片手落ちです。健康と生きがいに留意し、日常生活で介護予防を実践することが必要です。

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執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。

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