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人生を豊かにする
老後のマネー

2014/08/18
高齢者支援サービスを利用して自立した在宅生活を

欲しいのは必要最低限の支援コミュニケーションの場

平成25年「国民生活基礎調査の概況」によると、平成25年6月6日現在、日本で65歳以上の方がいる世帯数は全世帯の44.7%を占めます。
また、高齢者世帯(65歳以上の方のみ、あるいはこれに18歳未満の未婚の方が加わった世帯)は全世帯の23.2%になり、その内訳は単独世帯が49.3%(男14.3%、女35.1%)、夫婦のみの世帯が47.5%、その他の世帯が3.2%となります。

平成23年度に75歳以上の自立もしくは要支援認定の在宅独居高齢者を対象に行った調査「一人暮らし高齢者・高齢者世帯の生活課題とその支援方策に関する調査研究事業報告書」(みずほ情報総研株式会社)によると、生活の中で困っていることの多い順に「家の中の修理、電球の交換、部屋の模様替え」「自治会活動」「掃除」「買い物」「散歩・外出」「食事の準備・調理・後始末」「通院」「ゴミ出し」「薬の飲む、はる、ぬる」。今後利用してみたいサービスの多い順に「緊急時に駆けつけてくれるサービス」「話し相手、困った時の相談相手」「買い物支援」「通院の支援」が挙っています。

同年に山口商工会議所が65歳以上の元気な高齢者と高齢者を支援する福祉員を対象に行った「高齢者が求める製品・サービスニーズ」調査結果も、手助けしてもらっていることの多い順に「修理や操作」「洗濯」「買い物」「掃除」「通院」。身近にあるといいと思うもの、またはあってよかったと思うものの多い順に「お茶を飲む場所」 「習い事・教えられる場所」「気さくなサークルや仲間」「健康や悩み事の相談ができる場所」「友達と料理や食事の場所」が挙っています。

これらの調査結果から言えることは、高齢者は必要最小限度の支援とコミュニケーションの場を求めているということです。

介護保険にも生活援助サービスあり

前出の「国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の中で要支援・要介護認定を受けた在宅の者がいる世帯は50.9%で、要支援1・2が33.2%、要介護は64.7%です。介護保険から給付される訪問介護の生活援助には、掃除や買い物、調理、生活必需品の買い物、ゴミ出し、ベッドメーキング、衣類の整理・修理、薬の受け取りなど、高齢者が望む支援の多くが含まれています。
なお、要支援1・2に対する訪問介護と通所介護(ディサービス)は、平成27年4月から3年かけて介護保険の給付から市町村の地域支援事業の給付にかわります。市町村が実情に合わせてサービス内容や基準、利用者の負担などを自由に決めるので、地域ごとによるサービス格差が不安視されています。

介護認定を受けた高齢者には介護保険から何らかの給付がありますが、自立している高齢者の「困った」はどうしたらいいのでしょうか。まずは地方自治体や社会福祉協議会などの支援体制を見てみましょう。

高齢者の望む支援をほぼカバー

高齢者にやさしいといわれる武蔵野市の高齢者支援には、一人暮らしの高齢者に対し毎週1回決まった曜日・時間に電話をかけて困ったことがないかなどを尋ねる「高齢者安心コール」をはじめ、食事サービス・会食型食事サービス、生活支援ヘルパー派遣、補助器具の貸与・給付、緊急通報装置の貸与、緊急ショートステイとデイサービス、などがあります。

相模原市社会福祉協議会では、配食、栄養相談、買い物・調理・選択・掃除などの日常的な家事援助から、通院介助や話し合相手、通院や外出の支援、公的サービスでは対応できない日常生活での困りごとに対応するボランティアとの橋渡し、緊急時における施設での一時預かり、福祉用具の貸し出し、悩みへの24時間電話相談など、高齢者が必要とする支援策を準備しています。

公益社団法人シルバー人材センターはどうでしょうか。例えば、横浜市シルバー人材センターでは、掃除・洗濯・食事の支度、介護保険対象外の介護補助、電気・機械設備の保守管理、障子・襖等の張り替え、庭木の手入れ・ペンキ塗装、大工仕事(小破修繕)、除草、草刈など、多くの仕事を引き受けています。

外出の足やコミュニケーションの場の支援策で最近増えているのが、デマンドバスの導入や自治会での老人会・いきいきサロン・ふれあいサロンなどの開設です。デマンドバスは、事前登録をした利用者が乗る場所と時刻・下りる場所を電話で予約し利用する乗合バスです。

居住地によって地方自治体のサービス内容は若干異なりますが、高齢者が望む支援策はほぼ準備されているようです。では、民間の高齢者向けサービスを見てみましょう。

買い物から緊急通報、離れた家族も安心のサービス

食料品や日用品などの宅配は生活協同組合や大手スーパー、コンビニなどが、配食サービスは生活協同組合やコンビニ、配食サービス会社などが取り扱っています。中には特定の病気に対応する配食もあります。掃除や調理、衣類などの整理整頓、ゴミ出しなどの家事代行を行う企業も増えました。警備会社は、高齢者向けサービスとして防犯・火災に加えて安否確認や見守り、緊急通報などを提供しています。

人的サービスだけでなく、家電にも高齢者が使いやすいものが増えています。フィルター掃除のいらないエアコンや長寿命の蛍光灯などは、メンテナンスの面倒さから解放されます。離れて暮らす家族に高齢者の状況を知らせる家電(例えば電気ポット・ガス・電気・トイレ・冷蔵庫など)や、高齢者が携帯電話を使用すると家族の携帯電話に1日1回のメール報告と前日の歩数を連絡するサービスもあります。

これらのサービスの多くは有料ですが、自立を維持するための保険と割り切って積極的な利用をお勧めします。部屋の蛍光灯を取り換えようとして台から落ちて骨折してしまった高齢者が、車いすの生活になった例を最近耳にしました。
高齢者が無理をすると要介護への道につながりかねません。心身の健康こそが住み慣れたわが家で暮らし続けるカギです。それは、老後資金の想定外の出費を防ぐ最良の道でもあります。

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執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。

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