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人生を豊かにする
老後のマネー

2015/02/17
高齢者雇用を生み出せ!シルバー人材センターに注目

意欲と能力のある高齢者は、「支えられる人」から「支える人」

総務省の平成26年8月人口推計確定値によると、0~14歳の人口は前年同月に比べて16万人減少し、65歳以上は109万4千人増加しました。0~14歳が人口に占める割合は12.8%、65歳以上は2倍を超える25.8%となり、少子高齢化はますます進んでいます。

少子高齢化が進むことで発生する多くの問題の中で、生産年齢人口の減少や年金・介護など社会保障費の増加に関しては、企業に対する65歳までの継続雇用の義務付けや、「そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み」(厚生労働省)になるマクロ経済スライドの発動などの対策が実行されました。これらの対策は、平成24年9月7日に閣議決定された「高齢社会対策大綱」に盛り込まれています。

高齢社会対策大綱では、「人生65年時代」を前提とする働き方や社会参加、地域におけるコミュニティや生活環境の在り方、高齢期に向けた備えなどを、「人生90年時代」に転換する必要がある、と謳っています。また、高齢者を単に「支えられる人」と捉えるのではなく、意欲と能力のある高齢者については「支える人」であるという意識を持つことが求められています。

シルバー人材センターの役割に変化が

定年退職した人の中には、仕事で培った人脈や技術・資格などを生かして起業したり、フリーランスで通訳や翻訳、コンサルタント業などに従事したり、有償ボランティアなどで社会参加している人たちがいます。ですが、多くの人は就業意欲を持ちながらもニーズに合致する仕事がなく、家の中で余生を送ることに留まっています。それは社会的に非常に"もったいない"こと。人生90年時代では、貴重な社会資源としてシニアが活動できる世の中になることが求められています。

高齢社会対策大綱では、シルバー人材センターに「臨時的・短期的又は軽易な就業等を希望する高齢者等に対して、地域の日常生活に密着した仕事を提供する事業の推進役」を求め、起業する高齢者に対しては「起業に伴う各種手続等の相談や資金調達等の支援」することを促進しています。

これを受けて港区シルバー人材センターは2014年~2016年度の基本計画を策定し、事業展開のポイントとして、「受動から能動へ」「支えられるから支えるへ」「余生から現役へ」「『でもできる』から『だからできる』へ」の4つを掲げました。「『でもできる』から『だからできる』へ」では、「高齢者でもできる仕事」ではなく、長年培った知識・技術・経験・人脈・地縁などを持つ「高齢者だからできる仕事(業務)の開発を進める」とシニアのスキルを積極的に活用する姿勢を打ち出しています。

2011年、東京大学高齢社会総合研究機構と千葉県柏市・UR都市機構が協働で「柏モデル地域創造事業」に着手しました。将来的にはシルバー人材センターにこの「高齢者の生きがい就労システム」を担ってもらうことを想定しています。「生きがい就労」とは、現役時代の生計維持のための就労と区別するための造語で、「働きたいときに無理なく楽しく働ける」、「現役時代に培ってきた能力・経験が活かせる」、「地域の課題解決の貢献につながる」、「地域社会全体にとっても効果的な働き方」を意味します。現在は横浜市をはじめ多くの自治体やシルバー人材センターで「生きがい就労」に向けた取り組みが展開されています。

学童保育や介護補助が「生きがい就労」

高齢社会対策大綱では、住民などを中心とした地域で支え合う仕組みづくりの促進や、社会参加活動の促進も謳っています。特に「高齢者の社会参加活動の促進」では、「情報通信技術等も活用して、高齢者の情報取得の支援を行うとともに、学校教育支援・子育て支援などの高齢者が活躍できる場の充実」を促進するとあります。

しかし、学校教育支援や子育て支援に対する高齢者の関心は高いとは言えません。「平成25年度高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果(概要版)」によると、60代が参加したいと考えている社会参加活動のトップは健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボールなど)となり、高齢者の支援(家事援助、移送など)や子育て支援(保育への手伝いなど)、教育関連・文化啓発活動(学習会、子供会の育成、郷土芸能の伝承など)は少数派です。

前出の「柏モデル地域創造事業」では、保育・子育て支援事業、学童保育事業、生活支援、福祉サービス事業に就労するシニアも多く、新たな仲間ができた、生活にハリができて規則正しい生活に戻った、など「生きがい就労」を実感しているようです。

アクティブシニアが超高齢社会の基盤をつくる

経済活動の停滞や社会保障費の激増などネガティブなイメージが多い超高齢社会ですが、本当にそうなのでしょうか。ある社会福祉協議会がバックアップしているボランティの多くは支える側にいる70歳前後のシニアです。数字には表れないこれらのボランティア活動は、女性の社会復帰をサポートし、介護離職を少なくすることにも貢献しています。

アクティブシニアの中核である団塊の世代が様々な「生きがい就労」に参加することで、安心して子育てができ、老いても住み続けることができる共生の地域社会の基盤をつくることができます。それは子供や孫への金銭的な贈与より大きなプレゼントになるでしょう。『人生90年時代』を、旅行や趣味などを楽しむのと同じように、地域住民にとって暮らしやすい社会をつくるための活動に参加しませんか。その果実は自らが要介護になった時に収穫できるでしょう。

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執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。

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