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不動産投資・収益物件 > 不動産投資の最新動向 > 不動産投資の節税・常識vs非常識(1ページ目)
不動産投資の物件選びのポイントや不動産投資の出口戦略、利回り・不動産価格・マーケット情報など不動産投資に関する最新動向をわかりやすく解説いたします。
2013年10月21日
「相続税の大増税時代」「相続税の大衆課税スタート」など、相続税の増税に対する注意喚起のコメントが新聞や雑誌などで目立ってきました。しかし、不十分な知識で安易に"節税"を進め、それを実行した結果、当初の思惑通りに行かずに失敗する例も出ているようです。
そこでまずは、不動産を活用した相続対策の基本からおさらいしておきましょう。
不動産は相続対策に有効といわれますが、その理由の第一は、市場で取引が成立するであろう価格、つまり「時価」と、相続税を課税する基になる「評価額」との間に差があるからです。
図1のように、遺産の中で預貯金や現金は、その額面通りに評価されます。1億円の現金なら相続税評価額も1億円です。しかし、不動産の相続税評価額については、土地は時価(公示地価)の8割程度の水準で決まる路線価に、建物は時価の5~7割程度といわれる固定資産税評価額になっています。つまり、現金を不動産に変えることによって、課税のベースになる評価額が何割か減るため、その分だけ税金も少なくなるわけです。
さらに、同じ不動産でも自分で使っていたり、何も使わずに遊ばせていたりする場合よりも、賃貸住宅などに活用したほうが評価額は下がります。土地が貸家建付地に、建物が貸家になると、借地権や借家権の分が評価額から差し引かれるからです。最終的には、手持ちの現金を使って賃貸住宅を購入することによって、評価額を5割前後も圧縮できます。
また、大幅に評価額を減らせる特例もあります。たとえば、亡くなった被相続人が住んでいた自宅や、事業を営んでいた店舗などを相続する場合については、同居していた相続人が引き続き住むことや事業を引き継ぐなどといった条件に合うと、一定面積までの土地の評価額を80%または50%も軽減するという「小規模宅地評価減の特例」が代表例としてあります。こうした特例を使うことで、相続税額を大幅に抑えることもできます。
上記のように、賃貸住宅を取得することは相続対策として非常に有効ですが、注意しておきたい点があります。
ひとつは「賃貸割合」です。これは、建物全体の床面積の中で実際に貸し出されている部分の面積の割合のことです。前術の貸家建付地や貸家の評価減は、この賃貸割合の部分にしか適用されません。
仮に1棟10戸のアパートがあって、満室ならば賃貸割合は100%ですが、2戸が空いていると80%、全体半分が空室だと50%になります。この空室の分だけ、評価減の割合が減ってしまうのです。
現在の賃貸住宅の空き家率は全国平均で12%程度といわれています。しかし、郊外や地方に行くほど空き家率が高くなるのが実態です。都心部では5%以下のところもあれば、地方都市の郊外部では30%以上も空いているケースが珍しくありません。したがって、なるべく空室率が低く、高い賃貸割合を適用できるエリア、物件を選ぶことが大切です。
※一時的な空室は、評価減の対象とできる場合があります。また、実際には、資産管理会社やサブリース会社を利用して空室を解消する対策も可能です。
効果的な相続対策として昨今注目されているのが、タワーマンションの上層階の購入です。その理由は、相続税評価額が土地の持ち分割合と建物面積で決まるのに対して、実際の取引金額(時価)は階数や住戸配置によって変わるからです。
図2のように、40階建てのタワーマンションがあったとしましょう。上に行くほど眺望が良くなるため、販売価格は階数が上になるにつれて高くなるのが一般的です。同じ専有面積でも、2階は5,000万円、最上階の40階は1億円となっています。しかし、専有面積割合に応じた土地の持ち分と建物面積が同じため、相続税評価額はどちらも約2,120万円。評価額の割合は、2階住戸が時価の約4割、40階が約2割と、評価額圧縮効果が2倍も違ってきます。こういった効果があるため、階数や向きによる価格差の大きいタワーマンションが注目されているのです。
この場合、タワーマンションの最上階なら、1億円の価値がある財産を2,000万円そこそこの評価額で相続させることができる、と言い換えることもできます。
しかし、ここで注意しておきたいのは、取得した住戸の資産価値です。
最近、あるベイサイドに立つ築10年以内のタワーマンションで、最上階にある100m2超のペントハウスを持つオーナーから「売りに出したい」という依頼がありました。購入価格は1億半ば強ですが、売却希望価格は2億円です。
ところが、価格査定をすると購入した時と同程度の金額かそれを少し下回る金額程度にしかなりません。床面積が大きくて総額が高すぎること、この広さを必要とする購入層も限られることなどが原因です。一方、低層階の60m2前後の住戸は、単身者からディンクスファミリーまで多くの需要がある広さで、また価格も比較的手頃なため、購入時の価格よりも高い金額で成約することも珍しくありません。結果として、最上階のほうが単価も低くなってしまいました。
つまり、物件の条件によっては、評価額が下がるだけでなく、時価まで下がってしまい、財産を目減りさせてしまうおそれがあるということです。それでは元も子もありません。タワーマンションの最上層階には床面積の広いプレミアム住戸が多いので注意が必要といえます。
もちろん、総額が高いというだけで値下がりするとは限りません。都心の超一等地のハイグレードマンションでは、面積が広いほど単価が高く、分譲時より値上がりしているケースもあります。単に評価額の圧縮効果だけに目を奪われることなく、エリアやニーズに応じた物件を選択する眼が必要といえるでしょう。