オフィスマーケットレポート(2025年10月)
【東京都心5区 大規模ビル】

アナリストの視点

新築ビルへ移転するテナントの二次空室が予想したほどは発生していない。定量的な把握は難しいものの、旺盛な館内増床の需要が要因にあると考えられる。その背景には移転先の不足に加えて、建設業界における資材価格の高騰と人手不足の深刻化がある。移転時の内装設計や入居前工事、原状回復工事等に要する期間の長期化および費用の増加が、館内増床へのニーズを高めている。
(基準日:2025年9月30日)


※東京都心5区: 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区
※大規模ビル: 1フロア面積200坪以上の賃貸オフィスビル
※空室率: 貸付総面積に対する「現空面積」の割合
※潜在空室率: 貸付総面積に対する「募集面積」の割合。既存ビルにおいて、テナント退去前を含む募集床が対象
※募集面積: 各統計日において公開されているテナント募集面積の合計
※統計開始: 1994年1月1日

Ⅰ.実質GDP成長率予測

25年度0.7%、26年度0.9%

2025年4-6月期の実質GDP成長率2次速報(内閣府)を受け、ニッセイ基礎研究所は2025年度の成長率を0.7%、2026年度を0.9%と予測した。7-9月期は米国の関税引上げによる輸出の減少と住宅投資の落ち込みにより6四半期ぶりのマイナス成長を見込む。2026年以降は年率1%程度の成長が続くと予想している。(図表1)

Ⅱ.失業率

前月から上昇(=悪化)。有効求人倍率も悪化

8月の完全失業率(労働力調査 総務省)は前月から上昇(=悪化)の2.6%となった。有効求人倍率(厚生労働省) 、その先行指標である新規求人倍率も前月から低下(=悪化)した。就業者数は前月から21万人の減少となっている。(図表1)

【図表1】主要経済指標データ
202510_07_5ku_image01.jpg出所:ニッセイ基礎研究所

Ⅲ.空室率・潜在空室率

7ヵ月連続の低下。需給バランスは引き締まり傾向

空室率は前月比マイナス0.26ポイントの1.45%となった。新築ビルや湾岸エリアのビルで大口の空室が消化され、主な低下要因となっている。潜在空室率は前月比マイナス0.27ポイントの3.05%となり、2020年5月以来の2%台が目前に迫っている。空室率・潜在空室率ともに7ヵ月連続で低下し、需給バランスは引き締まり傾向にある。

【図表2】空室率&潜在空室率
202510_07_5ku_image02.jpg

Ⅳ.募集賃料

上昇傾向が継続。22ヵ月連続で前月比上昇・横ばい

募集賃料は22ヵ月連続で前月から上昇または横ばいとなり、上昇傾向が継続している。都心部の主要エリアでは募集床の品薄感が強まっていることから、複数の引き合いが集まる区画では募集条件を上回る賃料で成約に至るケースが散見される。加えて、選択肢が限定的なため移転を見送る事例も増えている。

【図表3】募集賃料&募集面積
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Ⅴ.ネット・アブソープション(吸収需要)

8期連続の需要超過

ネット・アブソープション(吸収需要)はオフィス需要の指標であり、一定期間におけるテナント入居面積(稼働面積)の増減を表す。直近2025年第3四半期の吸収需要は約8万坪の高水準となった。需要が新規供給を上回る需要超過は、8期連続となっている。

【図表4】ネット・アブソープション&新規供給
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Ⅵ.エリア別募集賃料(円/坪)

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※規模
(1フロア面積)
・大規模(200坪以上)
・大型(100坪以上200坪未満)
・中型(50坪以上100坪未満)
・小型(20坪以上50坪未満)

※「-」は、調査時点においてテナント募集を行ったビルが少なかったため、適正データが算出できなかったエリアです。

Ⅶ.空室率の推移(6大都市 大規模ビル)

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Ⅷ.募集賃料の推移(6大都市 大規模ビル・主要駅前地区)

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※募集賃料:共益費込
※外税表示

提供:三幸エステート株式会社

会社HP:https://www.sanko-e.co.jp/
当レポートは情報提供を目的とし、情報の正確性に十分配慮して作成されておりますが、その内容を保証するものではありません。使用にあたっては貴社の責任と判断にてお願い致します。

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