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不動産投資・収益物件 > 不動産投資の最新動向 > 不動産投資シミュレーション(2)法人化で得する人(1ページ目)
不動産投資の物件選びのポイントや不動産投資の出口戦略、利回り・不動産価格・マーケット情報など不動産投資に関する最新動向をわかりやすく解説いたします。
2015年8月25日
「個人増税・法人減税」の流れが強まっていることから、不動産投資にあたっても、所得分散などにより節税効果の高い「法人化」を勧められるケースが増えています。個人と法人ではどのような違いが発生するのでしょうか。シミュレーションしてみましょう。
図1は、前回の記事でも取り上げた1億6,500万円の一棟マンションを購入したケースで、個人の場合と法人の場合の、税引き後キャッシュフローを比較しています。個人では、この物件の不動産所得のみの場合(税引き後CFその1)と、給料などほかの課税所得が1,000万円ある場合(税引き後CFその2)で試算しています。
また、建物価額の設定も「建物価額小/購入金額の約50%(8,640万円)、減価償却費が約302万円」と「建物価額大/購入金額の約75%(1億2,500万円)、減価償却費が約438万円」の2パターンで試算しました。建物価額の設定については、このページの後半で解説します。
まず「建物価額小」のパターンを見てみましょう。購入した不動産所得だけ(ほかに給料などの課税所得がない)の場合、税引き後キャッシュフロー(手取り額)は、個人では約180万円、法人では約145万円となります。実効税率は個人が約15%、法人が約25%です。
しかし、他に課税所得が1,000万円(給料なら額面で1,400万~1,500万円くらい)ある場合はどうでしょうか。結果は、個人の税引き後キャッシュフローが約126万円となり、法人のほうがキャッシュフローが多く入ります。
これは、個人の場合は総合課税で、各種の所得金額の合計で税額を計算するため、所得が増えると累進税率が高くなって税額が増えてしまうからです。このケースでは個人の実効税率は30%を超えます。
購入する不動産からの所得のほかに一定以上の所得がある人は、法人化のメリットが出ることが明らかでしょう。「一定以上の所得」の目安は、課税所得がおよそ900万円以上くらいではないでしょうか。
実効税率の差だけで見ると、課税所得が600万円を超えると法人が有利(※)になります。しかし、法人化すると税理士報酬や赤字でも課税される法人住民税の均等割(中小企業の場合7万円)などの経費がかかるため、これらを勘案すると、もう少し所得が多くないと、実質的な節税効果が得られないためです。
※個人の場合には、復興特別所得税・住民税含、所得控除は考慮せず、法人の場合には、法人税・住民税・事業税の実効税率で見た場合の比較です。実効税率は地域により異なります。資本金等が1,000万円以下の法人且つ従業者数が50人以下の場合を想定しています。
もう一つ「建物価額大」のパターンではどうでしょうか。建物価額が大きいほど経費として計上できる減価償却費も増えるので、不動産所得が少なくなって税額は減ります。その結果、他に課税所得が1,000万円あっても、法人より個人のほうが、税引き後キャッシュフローが大きくなるという試算が出ました。
個人では、青色申告も節税効果を高めるのに役立ちます。おおむね「5棟10室以上」の事業的規模で不動産賃貸経営をしている個人が青色申告をすると、青色申告特別控除65万円が適用されます。
また、家族に対して給与を支払い、青色専従者控除を利用することができるため、一定の所得分散もできます。減価償却費やこれらの控除によって経費率が高まるため、必ずしも法人化しなくても損はしないといえるでしょう。しかし、その他の課税所得が2,000万円を超えるなど、合算の所得が膨らむ場合は、やはり法人化したほうがメリットがあるでしょう。
このように、不動産以外の課税所得の水準や減価償却費の大小などによって、法人化したほうが良いかどうかの判断が分かれて来るのです。正確にシミュレーションをせずに法人化ブームに乗ると、失敗しかねません。
なお、減価償却費の大きさを左右する建物価額の違いは、購入する際の契約内容によって変わります。消費税課税事業者から投資物件を購入する場合は、売買契約書の金額に消費税が記載されています。これを8%で割り戻せば、自動的に建物価額が決まるわけです。
個人など非課税事業者から購入する場合は、契約書に消費税が記載されていません。その場合は、合理的と思われる方法で建物価額を設定します。通常は、所在地の路線価や公示地価から土地価格を割り出し、総額から差し引いて建物価額を按分します。固定資産税評価証明書の金額をベースにしてもいいでしょう。どの金額を採用するかによって、減価償却費を多少は調節することが可能です。