知っておきたい
一戸建て購入のキホン
- 基礎知識
- 2017.04.17
「インスペクション」って何のこと? そのメリットは?
中古住宅を売買する際のインスペクションが注目を集めています。この数年間で活用例がかなり増えてきたほか、2018年4月1日にはインスペクションへの対応に関する改正宅地建物取引業法が施行されることになりました。
しかし「インスペクション」が何のことなのか、まだ十分に知られていない面もあります。そこでインスペクションの基本的な内容や、インスペクションを活用するメリットなどについて、みていくことにしましょう。
インスペクションとは?
住宅におけるインスペクションは、建物に精通した者(建築士など)が第三者的な立場で、劣化の状況や欠陥の有無などを調べ、修繕や改修、メンテナンスをするべき箇所やそのタイミング、費用の概略などをアドバイスするものです。「住宅診断」「建物検査」「建物現況調査」など日本語での呼称は統一されていませんが、どれも基本的には同じだと考えて良いでしょう。
単に住宅の状態を知るため、あるいはリフォームの参考にするために「所有者が居住したまま」で実施されるインスペクションもありますが、活用が期待されているのは中古住宅を売買する前のインスペクションです。アメリカなどではごく一般的になっているインスペクションを国内でも普及させるため、国土交通省は2013年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定しました。
インスペクションの主な対象部位(戸建て住宅の場合)は次のとおりです。
【構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの】
基礎、小屋組、柱、壁、梁、床、床組、土台
【雨漏り、水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの】
屋根、外壁、屋外に面したサッシ等、小屋組、天井、内壁
【設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの】
給水管、給湯管、排水管、換気ダクト
なお、検査は原則として目視や計測を中心とした「非破壊検査」であり、特別な依頼をした場合を除き、壁に穴を開けて内部を確認するような検査が実施されるわけではありません。
売買前のインスペクションにはどのようなメリットがある?
中古住宅は、売主がこれまでどのようなメンテナンスをしてきたのかなどによって状態が異なり、単純に築年数だけで判断することができません。劣化の状況などがはっきりしなければ、購入した後にどのような費用がかかるのかも分からず、漠然とした不安感を抱くこともあるでしょう。
しかし、売買をする前にインスペクションを実施して建物のコンディションを把握すれば、直すべき箇所の有無や修繕に必要なおおよその費用をあらかじめ知ることができ、建物の質を踏まえた購入の意思決定や、売買価格が妥当かどうかの判断もしやすくなります。
購入に合わせてリフォームを予定する場合でも、その資金計画が立てやすくなるでしょう。築年数の古い住宅なら「あと何年くらい使えそうか」といった判断材料にもなります。また、インスペクションの実施を前提とした保険に加入することで、引き渡し後に何らかの欠陥が見つかった場合に備えることもできます。
売主にとっても、あらかじめインスペクションを実施することで取引の安心感が生まれるでしょう。
改正宅地建物取引業法におけるインスペクションの位置付け
インスペクションへの対応を盛り込んだ改正宅地建物取引業法が2018年4月1日に施行されます。ただし、これはインスペクションの実施そのものの義務付けではなく、仲介会社が売主から売却の依頼を受けたときなどに「インスペクション業者のあっせんの可否を示し、依頼者の意向に応じてあっせんすること」および「インスペクションを実施した場合に、その結果を重要事項として買主へ説明すること」を義務付ける内容です。
検査結果は報告書としてまとめられますが、宅地建物取引士による重要事項説明では報告書の中の「検査結果の概要」と同様のものになります。買主が詳細な説明を求めれば、インスペクションを実施した者(インスペクター)から連絡が入る場合もあります。
インスペクションの実施が義務ではないとはいえ、今後は「インスペクション済み」として売り出される中古住宅も増えるでしょう。インスペクションが実施されていない場合には、買主から購入希望物件の検査を依頼しても構いません。
インスペクションを実施するのは、国土交通省が実施する「既存住宅状況調査技術者講習」を修了して登録を受けた建築士となります。
国土交通省による制度説明資料より引用(一部抜粋、加工しています)
インスペクションに関することだけにとどまらず、「中古住宅を安心して買うことのできる市場」を目指してさまざまな環境整備が進められています。改正宅地建物取引業法によるインスペクションの導入に先駆け、大手仲介会社では既に数年前から建物検査と保証をセットにしたサービスを提供する例が多くなっています。分からないことは仲介会社の営業担当者に聞いて、物件選びの参考にしましょう。