実際の取引事例における路線価倍率 ~オフィス編~

不動産の売買価格の検討・査定において、相続税路線価は一つの基準として参考にされることが多くあります。一般的に、相続税路線価は公的価格の8掛け水準と言われるためですが、もちろん「公的価格=時価」ではなく、また常に「公的価格×0.8=相続税路線価」という訳でもありません。

2020年7月に発行したレポートに続き、2020年、2021年のREITの取引事例を追加して、前面相続税路線価に対する実際の取引価格の倍率(以下、「路線価倍率」)を調査しました。


【サマリー】

●路線価倍率の調査方法は次の通り。①REITの取引事例より、各物件の売買価格、土地比率を抽出する。②取引価格に土地比率を乗じ、土地価格を算出する。③②を土地面積で割り、土地単価を算出する。④③を取引年の相続税路線価で除し、路線価倍率を算出する。

●東京の路線価格帯別の路線価倍率は、以下の通りとなった。
 ・3,000千円/m2以上:概ね2倍
 ・1,000~3,000千円/m2:2.7~3.3倍程度
 ・500~1,000千円/m2:3倍前後

Ⅰ.調査方法

本調査は、前回と同様にREITのプレスリリースを用いて行いました。具体的な手順は以下の通りです。

(ア)REITの取引事例(プレスリリース「資産の取得に関するお知らせ」など)より、各物件の取引価格、土地比率を抽出する。
(イ)取引価格に土地比率を乗じ、土地価格を算出する。
(ウ)②を土地面積で除し、土地単価を算出する。
(エ)③を取引年の相続税路線価(以下、「路線価))で除し、路線価倍率を算出する。

(例)PMO浜松町の場合
取得価格43.8億円、土地比率79.1%、地積500.00m2、路線価1,550千円/m2 ⇒ 土地価格 = 43.8億円 × 79.1% = 34億6,458万円
⇒ 土地単価(m2)= 34億6,458万円 ÷ 500.00m2 ≒ 6,929,160円/m2
⇒ 路線価倍率 = 6,929,160円/m2 ÷ 1,550,000円/m2 ≒ 4.47倍

Ⅱ.路線価倍率の検討

はじめに、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡の5都市における2018年~2021年のREIT取引事例について、路線価倍率を算出します(末尾「集計データ」参照)。この集計データをもとに、路線価倍率の中央値の推移を、都市別かつ路線価水準別に集計しました。

事例がない、または極端に少ない都市や路線価水準については傾向を分析することが難しいため、今回は、東京の3,000千円/m2以上、1,000~3,000千円/m2、500~1,000千円/m2の3つの価格帯について分析しました。

まず、東京の3,000千円/m2以上のエリアについては、2019年を除き、路線価倍率は約2倍となっています。2019年の路線価倍率は1.32倍と極端に低くなっていますが、地価公示より低い金額で取引された取引事例(東京サンケイビル、末尾集計データ参照)を除くと2019年の路線価倍率の中央値は1.78倍となります。よって、東京の3,000千円/m2以上のエリアの路線価倍率は概ね2倍前後と言えそうです。

次に、東京の1,000~3,000千円/m2以エリアについて、路線価倍率の推移をみると2019年から2020年にかけて下落し、2021年に上昇していることが読み取れます。

個別事例について、取引価格に影響がありそうな項目を確認していきます。

まず取引エリアについて、物件所在地が都心5区である割合は、2019年が67%、2020年が79%、2021年が69%であり、2020年の割合が少し高いものの、大幅な違いは見られませんでした。取得時の平均築年数は、2019年が18.6年、2020年が27年、2021年が22.1年と2020年はやや築古の物件の取引が多いことがわかりました。

また、物件の賃料単価の平均は、2019年が19,026円/坪、2020年が18,076円/坪、2021年が20,402円/坪、取得時NOI利回りの平均は、2019年が3.95%、2020年が4.15%、2021年が3.86%でした。以上により、I.の調査方法で計算された土地単価は、2019年から2020年にかけて下落したものの、2021年には回復したと考えられます。

一方で、路線価については2019年から2020年にかけては上昇、2021年にかけては下落しています。

以上より、土地単価÷路線価で計算される路線価倍率は2019年から2020年にかけて下落、2021年にかけて上昇する結果となったと考えられます。よって、東京の1,000~3,000千円/m2エリアの路線価倍率は2.7~3.3倍程度となることがわかりました。

次に、東京の500~1,000千/m2エリアについて路線価倍率の推移をみると、他の価格帯と比べて年によってばらつきが大きいことがわかりました。この価格帯は大通り背後の物件の事例についても多く含まれていますが、大通り背後の物件は、路線価は低い水準に抑えられるものの賃料水準はさほど変わらないため、路線価倍率が高くなりやすい傾向があります。

そこで大通り背後の物件について、大通りの路線価水準に補正して路線価倍率をみてみると、2018年は2.80倍、2019年は3.4倍、2020年は3.12倍、2021年3.31倍という結果になりました。

以上を踏まえると、東京の500~1,000千円/m2エリアの路線価倍率は3倍前後と言えそうです。

提供:法人営業本部 CRE情報部

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