不動産ニュース

2016/02/08

マイナス金利+「神話」が必要

「マイナス金利」から1週間余。驚きが薄れるにつれ、醒めた見方も少なくない。いわく「欧州で効果なし」とか「苦肉の策」「一時的効果」といったものだが、日本経済を支える中央銀行の意志に、経済界や政策がどう反応するかだろう。

マイナス金利は、政策金利とされている。中銀と銀行の話だが、欧州では昨今、個人の預金に実質マイナス金利を課す議論が進められているというではないか。

収益機会が狭まり、株価は下がり、金融機関の叫びが聞こえてくるが、その付け回しは、企業や大口顧客、さらには個人となれば、行き場を失ったマネーはどこへ向かうのか。政府や日銀の狙いは、通貨安・資産高にある一方、バブルにはない。

日銀は今回、Jリートの資産買取り方針を維持するとともに、銘柄別の買取り枠拡大に動いた。異次元緩和はいつまでも続けるものではないが、これで日銀は、リート4000億円分の買い増しを可能とし、向こう4~5年は買い進められるという状況をつくり出した。

不動産市場も対話を通じ、絶妙のコントロールが求められるが、追加緩和はいわゆる「貯蓄から投資へ」、あるいは賃金、消費へといったマネー循環をつくり出す可能性を秘めている。

例えば、スウェーデン。マイナス金利導入で、住宅ローンが金利を下げ、住宅需要が高まった。住宅供給が抑制されてきたこともあり、高騰を招いた負(マイナス)の側面が目立つが、日本でも「史上最低」の住宅ローンやローン減税をセールスすれば、注文住宅やマンションの売れ行きを押し広げると期待できる。

他方、資金の受け皿として収益不動産も浮上する。とりあえず五輪までは説明をつけるとして、20年代の成長ストーリーをどう描くのかによるが。

例えば、観光は消費を補う有力な手立てであり、足元の民泊や空港コンセッション、20年以降のリニアやカジノなど、不動産とどう組み合わせるかが問われる。

また、同時に海外からのヒト・モノ・カネであれば、企業や投資を呼び込むという実効性あるプランが必要となる。マイナス金利が日本の市中で始まるかはわからない。

それは、銀行業の概念をまったく塗り替えるものであり、超高齢社会の日本で受け入れられ難いものともいえる。
だが、世界では、市中でマイナス金利が始められ、議論もされている。

今般、日本もその世界に踏み出したことで、企業や個人が意識し出すとは考えられることである。緩和状態を長らく続けてきた。消費、投資に火が付くことを願ってきたが、肝心なのは、アナウンスメントだった。

黒田日銀は、かなりな心理戦に踏み込んだ。サプライズを三たび巻き起こしたが、結局、サプライズにとどまってきたともいえる。
それは金融政策を超えたところかもしれないが、必要とされるのは、誰もが信じ込む醒めないストーリーだろう。中国に、中東、北朝鮮で株価は大崩れした。米国では、どんな人物が大統領になるともしれないリスクが出てきている。

米中が良くても悪くても悪い影響を受けるようになってしまっている。年明けの波乱の国際情勢。驚きだけでは、「行って来い」にならざるを得ない。

「必要ならさらに金利を下げる」までが日銀の限界か。持続可能な効果を得るには、国民も世界も誰もが信じ込む「神話」が必要ではないか。

いま、日本に神話があるとしたら、少子化は克服できないとする「少子化神話」かもしれない。ネガティブな神話はポジティブに変えなくてはならない。それは政府の仕事と突き放すだけなら、以前の日銀と大差ない。

ただし、異次元緩和はまともではない。異次元がさらに新次元入りし、強化され、旧・アベノミクス第3の矢だった「成長戦略」を果たすための「時間稼ぎ」の位置付けは変えようがない。

有力な成長戦略の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に不安要素が出てきたが、アベノミクス第2ステージとして打ち出した「1億総活躍社会」を、いかにブラッシュアップするかにかかってくる。考え方はわかる。最重要課題は、「50年後(2065年)に1億人を維持」としている。

閉塞感の大本である少子化に経済から切り込んだ。次世代が先細り続けるなら、年金・福祉も、経済も、国家さえも、無いわけである。

反対に、メドが立てば好転が見込める。アベノミクスは、国民誰にもやさしいが、静かに軸足を次世代に移したわけである。欲張りなやさしさが、わかりにくさとなっている。成長戦略なのか、一見、福祉政策と見まごう国家戦略である。

共働きの「所得倍増」、高齢者の「ダブルインカム」(就労+年金、あるいは、共働き)、若年からの「資産倍増」(金融商品や不動産)など、わかりやすい訴求が必要だろう。

さらには、成長と再建という隘路だが、世界を信じさせるためには、産業の成長を押し出してこそ成長戦略となる。

そして、1億総活躍に呼応して、住宅政策(住生活基本計画)も、新たなスタートを切る。

ポイントは、高齢者支援から少子化対策に舵を切ったこと、中古住宅流通の活性化を押し出したことである。

空き家のリノベーションを支援し、「準公営住宅」として、子育て層に家賃補助を入れ、中古住宅を流通させるという。

さらに、貯蓄環境まで整え、住宅取得に導く面倒見である。低所得者対策として、家賃支援に加え、家賃保証システムを整備する。これらは、住宅・不動産関連にチャンスとなる。

少子化と、新たな住宅投資を拡大するワンストップのソリューションが望まれる。 (松本 義弘)

(提供:日刊不動産経済通信)

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