不動産投資を始めるときの3つの「壁」の乗り越え方
不動産投資に関心はあっても、収益物件を実際に購入するところまでたどりつけない人もいます。不動産投資を始めるまでの壁は、三つです。不動産投資を実践している先輩たちは、その壁をどう乗り越えて来たのでしょうか。
第3の壁/購入契約に踏み切れない
「契約に踏み切れない」のは、判断基準がないから
→【対策】ゴーサインを出す自分のルールを明確にする
希望したエリアで、無理のない資金計画で購入できる物件が何件か見つかっても「どれに決めればいいか迷ってしまう」。あるいは、購入すれば自分にとってメリットがあるとわかっている物件が目の前にあっても、「本当にこの物件で契約していいのか、ためらってしまう」という人がいます。
原因としては、次のようなケースが考えられます。
ケース1:目先の損得にとらわれ、目標を見失っている
「不動産投資をするからには、もっと収入がなければと思ってしまう」「思ったより手残りが少ない」
ケース2:予測できない未来に振り回される
「探せばもっと良い物件があるのではないか」「待てば価格相場が下がるのではないか」
ケース3:失敗やリスクをおそれ、足がすくんでしまう
「入居者が出て行ってしまい、家賃収入が激減したらどうしよう」「ローンが払えなくなったらどうしよう」
それぞれの迷いを解くカギについて考えていきましょう。
上記の1と2については、「イエス/ノーの判断基準」「自分のルール」を明確にすることに尽きます。まず、物件を絞り込む段階では、借入能力に応じた予算額、希望の利回りを数字で設定します。「1億円以内で表面利回り7%」といったように決めますが、この段階ではあまり厳密にしすぎないほうがいいでしょう。
次に、具体的な物件を検討する時は、収支シミュレーションをして手残り(キャッシュフロー/経費を引いた手取り収入)がいくらになるかを計算します。価格と利回りが同じでも、物件ごとに減価償却費や維持費などの経費率が違いますし、本人の給料などその他の所得によって税金が変わりますから、個別に計算することが必要です。
そして、「不動産投資の目的・目標」に合わせて、この手残りが「○○円以上なら買う」と決めておくわけです。実際に購入している人のほとんどは、この「自分ルール」がはっきりしています。
ケース3の失敗・リスクについては、次の項目で解説しましょう。
失敗とリスクを冷静に判断するには
確かに、不動産投資の経験者の中でも「失敗した」と感じるケースはあるようです。収益物件情報サイト健美家の調査では、不動産オーナーの約4割が「失敗経験あり」と答えています(図3)。
しかし、これらの失敗は未然に防止または軽減する対策があり、実際に発生したとしても損害を最小限に抑えることが可能です。
図3に挙げられた失敗のうち、「1.空室が埋まらなかった」「3.相場より高く買ってしまった」「5.賃貸需要の低い場所に買ってしまった」「6.立地を考えずに買ってしまった」「9.想定家賃を間違えた」は、マーケット調査が不十分だったために起きることです。
また、「2.修繕費や維持費に出費がかかりすぎた」「4.リフォームに費用がかかりすぎた」「7.既存の入居者に問題があった」「8.高金利で買ってしまった」「10.ローン期間を短く組み過ぎた」は、不動産会社の営業担当者からヒアリングしておくべき項目です。
逆に言えば、きちんとした不動産仲介会社であれば、これらのリスクやマーケット状況もアドバイスしてくれるでしょう。
「1.空室が埋まらなかった」について補足するなら、しっかりとマーケット調査をしたとしても、不動産経営を始めてから予想外に空室が増えたり、長引いたりすることはないわけではありません。しかし、入居率を高める事後対策もあります。
ちなみに、リートやファンドなどプロフェッショナルが手がける案件でも、上記のようなリスクは避けられません。そうしたリスクを定量化して、あらかじめ事業収支計画に織り込んでいます。たとえば、一棟マンションのうち、1年間稼働率が何%になるか、原状回復費用(リフォーム代)や入居者募集費用を試算し、その上で、利益が一定以上出る物件には「ゴーサイン」を出すのです。
以上のように、「自己分析」「投資の目標設定」「決断力」の3つの壁を乗り越えれば、きっと不動産投資の世界に踏み出すことができるでしょう。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。