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陶芸は、頭がからっぽになっていいですよ。 「おうちに帰ろ」読者 小宮さん:平日は通勤に2時間近くかけ、都心で会社員として働きながら、週末は郊外の住まいで土と向き合い陶芸を楽しむ小宮さん。時間があるときは奥様と一緒に窯元へ足を運んだり、好きな作家の個展を見に行ったり、陶芸を通じて趣味の幅はどんどん拡がっているようです。

自分を忘れて、職場と家の往復で、
あわただしく流れるウィークデイ。
だからこそ一変する週末がそこにはあります。

「ゆったりと流れる時間の中でちゃんと自分と向き合い、自分がやりたいことに
集中できる時間があるって最高に贅沢なことかもしれませんね。
僕はそれが、たまたま陶芸でした。
何も考えないで、大好きな土をこね、ろくろを回し、形を作っていく。
ひたすら手元だけに集中して、手元が生み出す形に自分が驚くというか
はっ!と気付くと『もうこんな時間だったんだ』ということが多いですね。

好きなことに集中できているからかもしれませんが
陶芸をするということは、頭がからっぽになって
平日の自分をリセットしてくれる良い時間だと思っています。
サラリーマン生活の活力を作ってくれているのかもしれません。

自分の作った器で食事をすると、いつもと同じ食事でもおいしく感じられるし
作った器を誰かにあげると『ありがとう』という笑顔をもらえるし
いいことずくめというとオーバーかもしれませんが
陶芸をはじめたことで暮らしの中に
思ってもみなかった楽しいリズムを生み出してくれました」。

好きなことができる贅沢は生活の幅も拡げてくれました。

窯元や個展で買い集められた器は全てが普段使い。「好きな器で食べると料理がいっそうおいしく感じられます」と小宮さん。 瓦をイメージして作られた花瓶は小宮さんの作品。「デザインから考え何度も試行錯誤して完成するまでの時間が陶芸の醍醐味です」。

陶芸を始められたのはいつ頃からですか?

「4年前です。ちょうど30代半ばの頃ですね。土日が休めるという生活リズムができてきて、今の自分が背伸びをせずにできる『好きなこと』って何だろうとふと考えたんです。そしたらやっぱり陶芸かなあ、と思って」

どうしてそれが陶芸だったんですか?

「一番大きい理由は、もともとなじみ深かったからです。母が家で華道や書道をやっている関係で、小さい頃から器が身近にあって、家族旅行は窯元さんのところへ行くことが多かった。それと『モノを作っていくプロセス』が大好きなんです。小学校の頃、工作の授業が大好きで、時間を忘れて熱中していました。もう陶芸の道しかない感じですね(笑)」

陶芸の楽しさってどんなところにあるんですか?

「無になれることです。その間は頭がからっぽになるというか。手元をじっと見つめる以外、何も考えませんからね。平日働いている時には、頭の中でいろんな内容や考えを想定して、話をしていかないといけない。まさに動と静ですね。そういう意味でいい気持ちの切り換えになっているかもしれません」

暮らし方も変わったと思うのですが?

「ええ、大きく変わりました。生活に幅がでてきました。夫婦で窯元を訪ねる旅にでたり、個展を見に行ったり、作る以外での時間の過ごし方も変わりました。それに家内も作ることが大好きな女性で、流行ものにすぐ飛びつくタイプなんですが、根っから何かを作ることが好きみたいです。僕が通っている教室には、お茶の時間があるよと言ったら、スイーツを焼いて届けてくれるようになったり、陶芸をするときに必要なエプロンを作ってくれたり、道具をいれる袋も家内が作ってくれたものです」

今後、どういう風に陶芸と向き合っていこうと思っていますか?

「仕事以外の時間って限られているじゃないですか。だからこそ、夫婦でおいしいコーヒーを飲むための器であったり、食事用の器であったり、知り合いに日頃の感謝を込めて贈ったり、生活に根ざしたものを作っていきたいですね。もちろん、陶芸の面白さが分かりかけてきたので今後も公募展にも出品したりしていきたいと思っています」

撮影協力:
アトリエいく陶工房
東京都多摩市和田12-3
TEL:042-374-0746
http://www.atorie-iku.com/

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