次に「買い時だと思わない」と考える理由についても紹介しましょう。
図4は、半年前(2015年1月)に実施した前回調査と今回の比較です。前回もっとも多かったのは「景気の先行きが不透明」という理由でした。今回は「不動産価格が高くなった」がトップで、前回より17ポイント近く増えています。
不動産価格は2014年から上がり始めていましたが、2015年に入って、特に都心部を中心に目立って上昇していることを反映しているのでしょう。こうした状況から「買いたくても買えない」という諦めに近い感覚が「買い時とは思わない」という判断の増加に表れているのかもしれません。
一方で、「今後、不動産価格は下がると思われる」という理由が、前回より増加していることにも注目してください。「既に不動産価格はかなり高くなっている。いずれ下がるはずだから、それまで待ってから買おう」という考え方です。こうした判断をしているのは、都心部を中心にした2008年前後の不動産ミニバブルとその後の価格下落を覚えていて、かなり冷静に不動産マーケットを見ている人かもしれません。
実際、都心のタワーマンションでも、高値で売り出したものの買い手がつかず、物件が滞留する例が出てきました。中には、30戸以上が売り出されている状態が1か月ほど続いているマンションもあります。こうした状況をインターネットのマンション系SNSなどで情報交換し、買い時を見極めている人も少なくないのです。
不動産価格が「上がると思う」と回答する割合は、2014年1月調査時点がもっとも多く、その後は減少しています。逆に「下がると思う」の割合が徐々に増加しているのです。
「上がると思う」人のフリーアンサーを見ると「景気回復による物価上昇」「東京五輪の特需」「外国人投資家のインバウンド投資の増加」という声が多いようです。おおむね5年後までの中期的な見方をしていることがわかります。
一方「下がると思う」人のフリーアンサーでは「人口減少による需要減」「供給過剰、空き家の増加」など、長期的なスパンで見ている意見が少なくありません。中には「適正価格から明らかに高騰している」「長期的には必ず収益還元価格に収れんしていく」「中国バブル崩壊で需要が減る」など、投資家的な目線で値下がりを予測する声もあります。これらは、ライフステージとしてこの1~2年で住宅を購入したいなどの純粋な実需層とは少し異なる視点といってよいでしょう。
以上の点から考えると、短期的に住宅購入を考えている人は「買い時感」が強く、中長期的に住宅を検討している人や投資的に見ている人は「買い時ではない」と考えている印象を受けます。
こうした意味では、現段階では、2017年に予定されている消費税率の再引き上げまでに購入したいなら「買い時」、4~5年以上待てるなら「買い時ではない」といえるかもしれません。しかしながら、6年後、10年後に金利や不動産価格がどうなっているかは、誰にも予測できないことではあります。
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