【江東区】水害対策や地域の防災組織「災害協力隊」などを実施する江東区の防災対策
江東区は東京23区の東部、隅田川と荒川に挟まれた場所に位置しています。江東区は1947(昭和22)年に旧城東区と旧深川区が合併して誕生しました。区名は隅田川の東側という地理的位置を示し、「江」は深川、「東」は城東という意味も含むことから名付けられました。
今の江東区内では東京湾にそそぐ河川が形成したデルタ地帯が広がっていますが、江戸時代から埋め立てが始まり、江戸に食料を供給する新田開発が行われました。深川八郎右衛門による深川村、砂村新左衛門が開発した砂村新田はその代表です。
明暦の大火後、江戸幕府は火事に強いまちつくりを目的に、貯木場を現在の木場に移転します。さらに、深川地区には武家屋敷や社寺を移しました。こうして、今の江東区では河川や運河を活用した木材集積地や米問屋、社寺の門前町が発展し、都市としての歴史が始まります。明治時代以降は鉄道の開通もあり、都心に近い住宅地として発展を遂げました。
江東区東部は、関東大震災や第二次世界大戦時の東京大空襲で大きな被害を受けました。復興に際して区画整理が行われたことから、現在のような比較的整った街並みが形成されました。
近年も臨海部では埋め立てが進み、豊洲や東雲などでは大規模住宅の開発が盛んに行われています。

江東区では防災に関する情報をまとめた冊子として「江東区全域防災マップ」を作成、配布しています。これは地図面と解説面で構成されています。
解説面では震災時の建物倒壊危険度、火災危険度、総合危険度といった災害リスクを紹介し、非常時の持出品リストや災害時の情報取得方法など日頃の備えを説明しています。さらに、地震発生時の行動ポイント、大規模水害発生時の避難方法、高層住宅における避難行動など実際に災害が起きた際にとるべき行動も具体的に示された冊子です。
地図面には、大地震発生時の避難場所や避難所が記載されています。避難場所は、大地震で火災が発生し延焼している時に避難する場所で、大規模公園や大学キャンパス、大規模団地が指定されています。区内では「大島・北砂団地一帯」や「清澄庭園」、「東京海洋大学一帯」、「亀戸中央公園」など12か所が指定されています。
比較的近年に開発された若洲地区をはじめ、新木場・夢の島地区や豊洲地区、有明・東雲地区などの臨海部は、震災時の火災延焼の危険が少ないことから地区内残留地区とされています。ここで火災が発生した場合は、近隣の安全な区画に避難します。

周辺に河川が多く、水害リスクが想定される江東区では、3種類の「水害ハザードマップ」を作成しています。「江東区洪水ハザードマップ【洪水氾濫】」では荒川が氾濫した際の浸水想定を示しました。「江東区大雨浸水ハザードマップ【内水氾濫】」は雨水の排水能力を超えた局地的大雨などで内水氾濫が発生した時の浸水想定を示したものです。
「江東区高潮ハザードマップ【高潮氾濫】」は台風や強い低気圧で東京湾の海面が堤防を乗り越えるほど上昇して高潮氾濫が発生した時の浸水想定を図示しました。それぞれの浸水する深さや継続時間を示し、水害時に避難すべき地区や避難できる公共施設、避難に関する情報も掲載しています。
これらの水害が予想される際は、公共施設などへの避難のほか、浸水しない地域の親戚や知人宅への広域避難も推奨しています。また、地盤が高い臨海副都心など一部のエリアでは、地区内の浸水しない区画や公園などへの避難も想定されています。避難が間に合わない緊急時には自宅や公共施設など丈夫な建物の3階以上へ垂直避難し、命を守りましょう。
大規模災害時には「自らの身の安全は自らが守る。自分たちのまちは自分たちで守る」という「自助」・「共助」が重要です。そこで、江東区では区民の防災意識の向上、防災関係機関との協力体制の確認を目的として、首都直下型地震を想定した「総合防災訓練」を実施しています。
この訓練では発災初期対応訓練、インフラ復旧訓練、消火・延焼阻止訓練といった消防署や消防団など防災関係機関を対象にした内容のほか、避難所運営訓練、災害対応力向上訓練など地域住民を対象にした内容も実施しています。
地域の防災力向上を目的に「自主防災組織(災害協力隊)」の結成も促しています。「災害協力隊」はマンション管理組合や自治会などの地域住民が区や消防などと協力しながら地域の防災活動を行います。
「災害協力隊」の活動を円滑にするため「災害協力隊活動マニュアル」もまとめました。ここには拠点避難所への集合、災害協力隊本部の設置、情報収集、救出救護、初期消火、避難誘導、避難所運営など災害時に必要な活動内容が記載されています。防災計画の作成、防災知識の普及・啓発、防災資機材の整備、防災訓練実施方法といった平常時にできる準備についての説明もあります。
さらに、「災害協力隊」の自主防災訓練時には、地震体験車派遣や煙体験機の貸出、クラッカーなどの支給を行い、活動を支援しています。
地域での防災力を高めるため、江東区では「防災用品・家庭用消火器のあっせん」を行っており、特別価格で購入できます。このほか、区内約3,000か所に街頭消火器を設置しています。
災害時に必要になる食料や衣類は区内24か所に整備した防災倉庫や全ての江東区立小・中学校など84か所がある備蓄倉庫に保管しています。さらに、備蓄倉庫に災害復旧資機材を備えるほか、全ての江東区立小・中学校に設けた災害応急物資格納庫には避難所運営で使用する資機材を用意しています。
また、川に囲まれた江東区は水害の発生も想定されることから、再開発に合わせて荒川、隅田川沿いで高規格堤防(いわゆるスーパー堤防)の整備を推進しています。高規格堤防は通常の堤防に比べて幅が広く、決壊のリスクを減らせます。さらに広がった堤防上を公園や住宅として利用することも可能です。すでに「越中島公園」周辺などでは完成しています。
既存の防災対策強化も進めています。例えば、高潮対策として、高潮堤防を必要な高さにかさ上げしたり、市街地側に鋼矢板を打ち込み、地震時の液状化による動きを抑制したりする対策が行われています。
江東区では大規模地震や水害を念頭に、地域の防災力アップを含めた幅広い防災対策を実施しています。
- 掲載日
- 2025/06/26
本記事は、(株)ココロマチ が情報収集し、作成したものです。記事の内容・情報に関しては、調査時点のもので変更の可能性があります。