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2007/09/21:Vol.184

「特定同族株式等に関する相続時精算課税の特例」の注意点
~平成19年度税制改正により創設された制度について

平成19年度税制改正において「取引相場のない株式等(特定同族株式等)に係る相続時精算課税制度」が創設されました。しかし、当該制度は、多くのケースで将来の相続税が増えると考えられ、現段階での適用には十分注意していただきたいと思います。

◆ “取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制”の創設

中小企業の早期かつ計画的な事業承継を円滑に進める目的で、オーナー経営者が、取引相場のない株式等(自社株式等)を後継者である子供(会社の代表者になる場合に限られます)に贈与する場合には、2007年1月1日から2008年12月31日までの間の贈与について一定要件を満たす条件で贈与者の年齢制限が60歳以上に引き下げられ、非課税枠は3,000万円に引き上げられる新たな制度が創設されました。

● 適用要件

(1) 当該会社の発行済株式等の総額(相続税評価額ベース)が20億円未満であること。
(2) 次の各要件を、この特例を選択したときから4年経過時において満たしていること。
1. 当該受贈者が当該会社の発行済株式総数の50%超を所有し、かつ議決権の50%超を所有していること。
2. 当該受贈者が当該会社の代表者として当該会社の経営に従事していること。
●注1: 上記適用要件に加えて、以下の要件が必要です。
この特例の適用を受けることについて、贈与者である親の推定相続人すべての同意を得ていること。
●注2: 当該制度を利用して自社株の生前贈与をしますと、贈与者である親の相続税課税価格の計算において、下記の特例の適用が受けられなくなります。
<1> 小規模宅地の特例 特に要注意!
(相続した住宅や事業用宅地等の価額の特例)

…遺産の中に住宅や事業に使われていた宅地等がある場合に、その宅地等の評価額の一定割合を減額する特例
⇒最大240㎡(特定事業用宅地は400㎡)までの部分について最大80%減額できる特例
<2> 特定事業用資産についての課税価格の計算の特例
…相続又は遺贈により一定の取引相場のない株式又は出資を取得した場合で、この特例の適用を受けることを選択したものについては、一定の要件のもとその取引相場のない株式又は出資に係る相続税の課税価格が、一定の割合減額されます。
⇒自社株について、発行済み株式総数の2/3までの部分(最大10億円)について10%減額(最大1億円)できる特例
上記2つの特例は、適用を受ければ相続税の額を抑えることが可能になります。(①と②は、原則としていずれか一方を選択する制度です。)
上記●注1の要件が必要な趣旨…注2記載の二つの特例(どちらかを選択)が受けられない。
例えば自社株を事業承継者である長男が生前贈与を受け、父の自宅は次男が相続する、というケースで、長男が当該制度を使って生前贈与を受けると、注2①,②の特例が受けられなくなるため、次男が相続する自宅敷地にかかる相続税については特例を受けられなくなります。したがって、相続税に関して不利益を被る可能性があるということになります。こうした理由から当該制度を使う場合には、他の推定相続人の同意が必要になるということになっています。
現段階では、「特定同族株式等に関する相続時精算課税の特例」の適用は、将来相続税計算時に不利となるケースが多いようです。適用に当っては、専門家との充分な相談が必要です。

 ※この制度の活用に際しては、税理士等の専門家にご相談の上実行して下さい。
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