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2007/05/10:Vol.177

景観法に基く景観計画が各地で制定され始めました

景観法は2005年6月施行された新しい法律ですが、はや1年半が経過し、各地で徐々にこの法律に基いた景観計画策定の動きが出てきています。特に、京都市など歴史的に景観を保全すべき地域を持つ自治体に先進的な事例が見られていますし、東京都では都市景観としてのあり方といった観点からも検討がなされていますので、この2都市の事例を中心に見てみましょう。

◆ 東京都の場合

東京都は、1997年に景観条例を制定していますが、今回この取組を踏まえた上で、新たに再構築した「東京都景観計画」を策定しました。これは、「景観法」に加えて、「都市計画法」「建築基準法」「屋外広告物規制」とも連携した施策として体系化したものと言われています。本年4月1日からこの条例は施行されています。

1)景観法に基く体系として

「届出制度」による景観形成
景観基本軸の設定(内6軸に区域指定)
景観形成特別地区の制定
上記地区等での屋外広告物の表示等の制限
(許可制につき既存広告に対する効果にも期待)
色彩基準の制定
景観重要建造物、景観重要公共施設の制定
■ 景観基本軸の設定

2)都市開発諸制度の活用

大規模建築物に対する「事前協議制度」の活用により実行性を高める
(再開発・特定街区・総合設計などの手法を適用する案件に対して)
特に、東京都の場合、外壁の色彩基準にマンセル色度図を導入し、色相・明度・彩度の組み合わせによるルールを示したことが特筆されます。
ここでは基本色という考え方が示されていて、彩度が低く、明度の高い色が基本色とされています。
そして、外壁の80%を基本色の範囲とし、強調したい色は残り20%の範囲とする規制となります。
従来の自主条例である景観条例では、勧告と氏名公表迄でしたが、景観法に基く条例では、届出が義務化され、また変更命令や罰則を適用することが出来る点でその効果が期待されています。
■ 色彩基準の考えイメージ

◆ 京都市の場合

景観に関する先進都市である京都市では、本年3月に「新景観政策」関連条例が可決され、 9月にも、建築物の高さやデザイン、屋外広告への規制強化を目的とした条例が施行される見通しとなりました。主な特徴としては下記のようなものがあります。
田の字地区と呼ばれる幹線道路で、45m規制から31m規制へと高さ規制が強化される
その他各エリアで31⇒15m、20⇒15mといった高さ規制強化がなされる
市内全域で屋上屋外広告物が禁止される
清水寺や大文字等の市内観光名所を眺める低い視線からの眺めを保全する 等
これらの規制によって、例えば高さ規制では、既存不適格となるマンションが千数百棟にのぼるなどの問題もあるといわれます。ダウンゾーニングと呼ばれるこれらの引き下げ規制の方向性は、従来はなかなか見られないものでした。しかし、京都の景観は共有の財産であり我が国の宝であるとして、1200年の歴史とこれからの100年の計を見据えた都市づくりを優先する条例制定となったようです。

◆ 他の自治体でもこの景観法に基く景観計画の制定の動きが広がっています。都市地域では秩序ある市街地景観の形成を目指しており、歴史的保存景観を持っている地域ではその維持保全をめざした景観計画の制定となっていて、4/23現在、45団体で計画策定されています。

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