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2016.11.21
【Q&A】贈与者よりも後継者が先に死亡した場合の非上場株式に係る贈与税の納税猶予
Provided by 税理士法人タクトコンサルティング
株式会社タクトコンサルティング
【問】 私の父は、平成28年10月に死亡しました。父の相続人は私のみです。(株)X(X社)のオーナー経営者であった父は、平成25年にX社の創業者である祖父からX社の株式の贈与を受け、その際に租税特別措置法(措法)70条の7の「非上場株式に係る贈与税の納税猶予制度」の適用を受けていました。なお父の母である祖母は既に亡くなっていますが、父にX社株式を贈与した祖父はまだ健在です。私は父からX社株式を相続し、同社の3代目の経営者となる予定です。この場合の税務上の取扱いについて、次のとおり質問します。 【問1】 父が納税猶予を受けたX社株式に係る贈与税は、父の死亡により、どのように取扱われますか。 【問2】 非上場株式に係る贈与税の納税猶予の適用を受けていた場合、贈与者(私の場合は祖父)が死亡したときには、非上場株式の贈与を受けた後継者(父)が贈与者から贈与税の納税猶予の適用を受けた非上場株式を相続により取得したものとみなされ、相続税が課税されると聞きました。 将来、私の祖父が亡くなった場合に、祖父に係る相続税の計算上、父が祖父からX社株式を相続により取得したものとみなされ、父の代襲相続人である私に相続税が課税されるのでしょうか。 |
【回答】
【問1】について
(1)非上場株式等に係る贈与税の納税猶予
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当する会社で、同法による経済産業大臣の認定を受けたものの株式につき、その会社の代表権を有していた先代経営者(以下「贈与者」という。)から贈与を受けた受贈者が、一定の要件を満たす、その会社のいわゆる後継者(以下「経営承継受贈者」という。)である場合は、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限る。以下「特例受贈非上場株式等」という。)に対応する額の納税が、その贈与者の死亡の日まで猶予されます(措法70条の7第1項)。
(2)経営承継受贈者が死亡した場合の、特例受贈非上場株式等に係る納税猶予税額(贈与税)の免除
特例受贈非上場株式等に係る納税猶予税額は、その贈与者の死亡の時以前に、その経営承継受贈者が死亡した場合は、その全部が免除されます(同第16項1号)。
(3)結論
ご質問の場合は、贈与者の祖父の死亡前に経営承継受贈者の父が死亡しているので、上記(2)より、納税が猶予されていた特例受贈非上場株式等であるX社株式に係る贈与税は、免除されます。
なお、あなたが父から相続したX社株式に対しては、相続税が課税されます。この場合、一定の要件を満たすことにより、あなたは非上場株式に係る相続税の納税猶予制度(措法70条の7の2)の適用を受けることができます。
2. 【問2】について
(1)非上場株式に係る贈与税の納税猶予における、贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例
前述1の非上場株式に係る贈与税の納税猶予の適用を受けていた場合において、一定の要件を満たすときには、経営承継受贈者は贈与者から贈与税の納税猶予の適用を受けた非上場株式を相続又は遺贈により取得したものとみなされ(措法70条の7の3第1項前段)、贈与税が免除になる一方で相続税の課税対象とされます。
なお、この規定は経営承継受贈者よりも先に贈与者が死亡した場合に適用を受けるものであり、贈与者よりも先に経営承継受贈者が死亡している場合には、適用対象から除かれます(同かっこ書)。
(2)結論
ご質問の場合、X社株式は祖父(贈与者)より前に亡くなったあなたの父から、あなたが本来の相続によって取得したものとして、あなたの相続税の対象になり、要件を満たせば非上場株式に係る相続税の納税猶予制度の適用を受けることができます。将来、祖父が亡くなった場合は、 X社株式を祖父から(祖父よりも先に亡くなっている)父が相続したとみなされることもなく、また、父の代襲相続人であるあなたが、相続によってX社株式を取得したとみなされ、祖父に係る相続税が課税されることもありません。