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2016.11.07
所得税の中高層の買換えに係る特例(租税特別措置法37条の5第1項第2号)の適用要件
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株式会社タクトコンサルティング
【問】租税特別措置法(措法)37条の5第1項第2号に規定する、「三大都市圏の既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための所得税の買換え特例(以下「特例」)の適用要件について、譲渡する資産(譲渡資産)と買換えにより取得する資産(買換資産)の要件を中心に教えてください。 |
【回答】
1. 特例の意義
この特例は、個人が2の譲渡資産を譲渡して一定期間内に3の買換資産を取得し、その取得の日から1年以内に事業の用又は居住の用に供した場合には、(1)譲渡資産の収入金額が買換資産の取得価額以下のときは、その譲渡資産の譲渡がなかったものとし、(2)その譲渡資産の収入金額が買換資産の取得価額を超えるときは、その超える部分に相当する土地建物等のみの譲渡があったものとして、長期譲渡所得の金額又は短期譲渡所得の金額を計算するというものです(措法37条の5第1項の表の二)。
譲渡資産の譲渡につき、居住用財産の譲渡に係る3,000万円の特別控除(同35条)、特定の事業用資産の買換えの特例(同37条)等の適用を受ける場合は、本特例の適用は受けられません(同37条の5第1項)。
2. 譲渡資産の意義
次の(1)~(3)の要件を全て満たすものが特例の適用対象となる譲渡資産とされ、これらの要件を満たす資産であれば、用途や所有期間は問われません。
- (1)三大都市圏の既成市街地等その他一定の区域内(具体的には、東京23区、横浜市、大阪市及び名古屋市の一部の区域等が該当します。)にある土地等(土地及び土地の上に存する権利)、建物又は構築物で、その土地等又は建物もしくは構築物の敷地の用に供されている土地等の上に、地上階数3以上の中高層の耐火共同住宅(注)の建築をする事業の用に供するために譲渡をされるものであること(措法37条の5第1項の表の二の上段)。
- (注)同法89条(1)に規定する信託。具体的には、受益者を指定し、又はこれを変更する権利を有する者の定めのある信託です。
- イ 耐火建築物又は準耐火建築物に該当する3階以上の構築物であること。
- ロ その建築物の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住用(居住用に供される部分に係る廊下、階段その他その共用に供されるべき部分を含む。)に供されるものであること。
- (2)(1)の土地等又はその建物もしくは構築物が、(1)の中高層の耐火共同住宅の建築をする事業の施行される土地の区域内にあり、かつ、措法第37条の5第1項の表の1号の適用対象となる資産以外のものであること(措法37条の5第1項の表の二の上段のかっこ書)。
- (3)棚卸資産又は雑所得の基因となる土地等ではないこと(措法37条第1項、措令25条第1項)。
3. 買換資産の意義
この特例の適用対象とされる買換資産は、2(1)の事業の施行により、譲渡資産である土地等又は建物もしくは構築物の敷地の用に供されていた土地等の上に建築された耐火共同住宅(その耐火共同住宅の敷地の用に供されている土地等を含む。)又はその耐火共同住宅に係る構築物です(措法37の5第1項の表の二下欄)。
なお、買換資産に該当する中高層耐火共同住宅を建築する者は、譲渡資産の取得者又は譲渡者に限られるので、注意が必要です。
4. 買換資産の取得期限
この特例の適用を受けるためには、原則として、譲渡資産を譲渡した日の属する年中に買換資産を取得することが必要です。
ただし、譲渡資産の譲渡の日の属する年の翌年中に買換資産を取得する見込みであり、かつ、その取得の日から1年以内にその個人の事業又は居住に供する見込みである場合は、取得価額の見積額により特例の適用を受けることができます。さらに買換資産の建築に要する期間等の関係上、譲渡年の翌年中に買換資産の取得をすることが困難な場合は、所轄税務署長の承認を受けることにより、一定期間、買換資産の取得期限が延長されます(措法37の5第2項、37条第4項、措令25条の4第7項、第8項)。
5. 申告要件
この特例の適用を受けるためには、譲渡資産の譲渡をした日の属する年分の所得税の確定申告書に適用を受ける旨の記載をし、かつ、一定の明細書等を添付する必要があります(措法37条の5第2項、37条第6項)。