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2016.3.28
改正消費税法・・軽減税率の適用対象取引について
Provided by 税理士法人タクトコンサルティング
株式会社タクトコンサルティング
1. はじめに
皆さんご存知の通り、消費税の税率が10%(地方消費税を含む。) に上がる平成29年4月1日以降、同時に、いわゆる生鮮品など一定の商品に対しては軽減税率=現行の8 %( 同) を適用しようとする改正法案が現在国会で審議されています。軽減税率が適用される取引については、新聞やニュースで具体的な事例を挙げて当たる・当たらないが説明されていましたが、今回は実際の改正法案の文言に基づいて整理します。
2. 軽減税率が適用される取引
表題の取引を、法令上の用語でいうと、改正消費税法(案)の2条1項9号の2の「軽減対象課税資産の譲渡等」です。そして、それは「課税資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものをいう。」と定義されていますから、具体的には改正法案の別表第一を見ないとわかりません。
なお、この定義中の「課税資産の譲渡等」とは、消費税が非課税とされている取引(土地の譲渡や貸付、医療サービス、住宅の貸付けなど)以外の取引全てのことで、要するに、消費税が課税される取引すべてをいいます。
3. 飲食料品の譲渡(別表第一の一号)
軽減税率が適用される取引その一が、表題の「飲食料品の譲渡」なのですが、「飲食料品」とは何か、ということが具体的に明らかにされなければなりません。改正法案では「飲食料品」について、「食品表示法に規定する食品(ただし、酒税法に「酒類」として規定されているものは除く。)」とされていますから、生鮮品に限らず、「酒類」以外の「食品表示法に規定する食品」であればいいことになります。その「食品」とは、全ての飲食物(医薬品等は除かれます。)をいう、と食品表示法に定められています。要するに、酒類以外の「食品」の譲渡であれば軽減税率の対象となるのですが、食品の譲渡には当たるものの、次のイとロは例外として含まれない(つまり、通常の10%税率で課税される) 旨別表第一の一号は定めています。
- イ:食堂、レストラン等の飲食店業その他の政令で定める事業を営む者が行う食事の提供
- ロ:課税資産の譲渡等の相手方が指定した場所において行う場所において行う加熱、調理又は給仕役務を伴う飲食料品の提供
イの具体的内容としては、テーブル、椅子、カウンターその他の飲食に使われる設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいう旨定められていて、いわゆる外食をする場合がこれに当たります。そうすると、そばやピザの出前は、そのような場所(店)ではなく、自宅で食べるものですから、これには当たらない飲食料品ということで8%の軽減税率が適用されます。また、そのような場所で提供される飲食料品でも、その飲食料品を持ち帰りのための容器に入れて包装等をして譲渡するもの(わかりやすいイメージでいうと、ハンバーガーや牛丼のいわゆるテイクアウト)は含まない(つまり8%となる)とされています。
ロは、文字通り読むと、いわゆるケータリング(特定の場所に出向いてその現地で調理して、飲食させる)がこれ当たりますが、「有料老人ホームその他の人が生活を営む場所として政令で定める施設において行う政令で定める飲食料品の提供を除く」とされていて、今後明らかになる政令を確認しないとその全貌は分かりません。
4. 定期購読契約に基づく新聞の譲渡(別表第一の二号)
表題の譲渡も軽減税率の適用対象となりますが、ここでいう「新聞」とは、発行者が‘〇◇新聞’と称しているだけではダメで、「政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞」とされていて、1週間に2回以上発行するものに限られます。
5. おわりに
消費者として飲食料品等の軽減税率の対象商品を購入する場合はともかく、飲食業を行う事業者(売る側)で、軽減税率と通常税率の両者の適用が生じうる業態の店は、注意深くそれぞれの場合に応じて正しい税率を適用した金額を計上・請求し、税抜き処理等も正しくできるよう、ハード・ソフトの両面で準備を進めなくてはなりません。また、軽減税率が適用される飲食料品等を含む様々なモノやサービスを購入する事業者は、簡易課税制度を選択している場合を除き、それらの購入取引に係る仕入税額控除(消費税法第30条)に際し、その購入取引に適用されている税率を反映した仕入税額控除の計算を行うよう、同条が改正されます。