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2016.2.15
個人が土地を譲渡した場合の譲渡所得に係る取得費の計算
Provided by 税理士法人タクトコンサルティング
株式会社タクトコンサルティング
1. 取得費の意義
土地に係る譲渡所得の金額上控除する取得費は、土地の取得に要した金額及び改良費の合計額とされます(所得税法(所法)38条1項)。土地の取得に要した金額とは、土地を取得したときの買入代金や、その土地を取得するために直接要した費用を加えた金額をいい、例えば次のようなものが該当します。
- 1.土地の取得代金
- 2.土地の取得の際に、宅地建物取引業者に宅地の媒介に関して支払った仲介手数料
- 3.建物のある土地をその建物と共に取得した場合において、その取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手する等、その取得が当初からその建物を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときにおける、その建物の取得に要した金額及び取壌しに要した費用の額の合計額(所得税基本通達(所基通)38-1)
- 4.土地の取得に係る契約書に貼付した印紙
- 5.業務の用に供されていない土地の取得に係る登録免許税(登録手数料を含む。)及び不動産取得税(所基通38-9)
- 6.土地の測量費(各種所得の金額の計算上、必要経費に算入されたものを除く。)(所基通38-10(注))
- 7.土地の取得のための借入金の利子のうち、その借り入れの日からその土地建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子(各種所得の金額の計算上、必要経費に算入されたものを除く。)(所基通38-8)
- 8.土地の取得に当たって支払う立退料 (所基通38-11)
2. 改良費の額の範囲
土地の取得に際して、埋立て、土盛り、地ならし、切土又は防壁工事等、その土地の改造又は改良のために要した費用は、原則として土地の改良費に該当し、その取得費に算入されます。ただし、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、構築物の取得費とすることができます(所基通38-10)。
3. 相続により取得した財産を譲渡した場合の譲渡所得の特例(相続税の取得費加算の特例)
個人が相続又は遺贈(以下「相続等」という。)により取得し、相続税の課税対象となった土地その他の財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合には、確定申告を要件に、譲渡所得の金額の計算上、その譲渡者に係る相続税のうち一定額(以下「取得費加算額」という。)が、譲渡した土地の取得費に加算されます(租税特別措置法(措法)39条)。相続等により取得した土地を譲渡した場合の取得費加算額は、その土地を相続等により取得した時期に応じ、次の(1)又は(2)の算式により計算します(措法施行令25条の16)。
- (1)平成26年12月31日以前に開始した相続等により取得した土地を譲渡した場合
-
- …譲渡者が納付した相続税額×譲渡者が相続したすべての土地の相続税評価額÷譲渡者が相続した財産に係る相続税評価額の合計額=取得費加算額
- (2)平成27年1月1日以後に開始した相続等により取得した土地を譲渡した場合
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- …譲渡者が納付した相続税額×譲渡者が相続したすべての土地のうち譲渡した土地に係る相続税評価額÷譲渡者が相続した財産に係る相続税評価額の合計額=取得費加算額
(1)の場合は、相続により取得したすべての土地(譲渡しない土地も含む。)に対応する相続税相当額を取得費に加算することができます。これが(2)の場合は、譲渡した土地に対応する相続税相当額についてのみしか取得費に加算することができません。したがって、(2)の場合の方が取得費に加算される金額が少なくなり、取得費が少なくなります。
4. 概算取得費控除の特例
昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地を譲渡した場合における、長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、上記1の金額よりもその譲渡に係る収入金額の5%相当額の方が多い場合には、その譲渡に係る収入金額の5%相当額をもって、土地の取得費とすることができます(措法31条の4)。
なお、昭和28年1月1日以後に取得した土地についても、取得時期が古いため取得費がわからない場合や、実際の取得費が収入金額の5%相当額を下回る場合については、その取得費を譲渡に係る収入金額の5%相当額とすることができます(租税特別措置法通達31の4-1)。