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2015.08.03.
生前贈与加算の対象とならない相続開始前3年以内の贈与
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株式会社タクトコンサルティング
1.生前贈与加算とは?
相続または遺贈により財産を取得した方のうち、その相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から財産を贈与によって取得していた場合、その贈与により取得した財産を相続税の課税価格に加算して、相続税を計算する規定です。生前に贈与を受けた財産であっても相続により取得したものとして相続税の課税対象とします。土地のように登記により所有権移転が明確に完了している財産についても例外ではありません。贈与税の支払いがあった場合には相続税より差引くことにより調整します。
しかし、この生前贈与加算の対象とならない贈与の特例についてここ数年、新設・改正・延長が相次ぎましたのでまとめてみました。
2.生前贈与加算の対象とならない贈与の特例
(1) 贈与税の配偶者控除
1)概要
贈与の日において婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受けた場合、贈与税の課税価格から2000万円が控除されます。
2)生前贈与加算との関係
贈与税の課税価格から控除された配偶者控除額は、加算対象となりません。(2000万円が限度)
(2) 住宅取得等資金贈与の非課税
1)概要
平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、下記表の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。
2)生前贈与加算との関係
贈与税の課税価格から控除された非課税額は、加算対象となりません。
(3) 教育資金贈与の非課税
1)概要
平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、30歳未満の方が教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、直系尊属から(A)信託受益権を付与された場合、(B)書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合、(C)書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等において有価証券を購入した場合には、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が原則として非課税となります。
2)生前贈与加算との関係
教育資金贈与として金融機関等に預入等をした金銭等のうち1500万円までの金額は、原則として加算の対象となりません。
(4) 結婚子育て資金贈与の非課税
1)概要
平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の方が結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、直系尊属から(A)信託受益権を付与された場合、(B)書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合(C)書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等において有価証券を購入した場合には、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が原則として非課税となります。
2)生前贈与加算との関係
結婚子育て資金贈与として金融機関等に預入等をした金銭等のうち1000万円まで(結婚資金は300万円まで)の金額は、原則として加算の対象となりません。
ただし、贈与者が死亡した時に贈与した金銭等の残高があった場合は相続税の課税財産に加算されます。
各特例には様々な適用要件や対象者・適用時期の制限などがありますが、ご家族の状況にあった特例の活用をご検討されてはいかがでしょうか。