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2015.7.6.
株式等譲渡所得の特例計算の最近の適用状況
Provided by 税理士法人タクトコンサルティング
株式会社タクトコンサルティング
1. 特定管理株式等が価値を失った場合の特例
特定口座で保管していた上場株式が、上場廃止となり、破産などで価値喪失した場合に、一定の条件のもと、その取得価額を譲渡損失の金額とみなす特例(租税特別措置法37条の10の2)の平成20事務年度以降の最新の適用状況は、表1のとおりです(国税庁:平成25事務年度までの資産税事務処理状況表より作成)。
件数は、また3,000件台にまで増加していることがわかります。
特例の対象は、特定口座で保管していた日本国内の上場会社の株式が、上場廃止となった日以降、一定の特定管理株式や特定保有株式となったものです。
特例が適用できるのは、その株式の発行会社に清算結了などの所定の事実が生じた場合とされています。特例は税務上その株式の取得価額を譲渡損失の金額とみなすというものです。
この特例を適用すれば、価値がなくなった株式の損失は、同じ年の他の株式などの譲渡益と相殺できます。相殺できない損失は、翌年以降に繰り越すことはできません。
2.株式などの相続に伴う取得費加算の特例
相続財産を売却するときに活用されるのが「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法39条)」、いわゆる取得費加算の特例です。
これは相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続財産を売却すれば、支払っていた相続税の一部を売却した相続財産の取得費に加算して結果的に譲渡益を減らすことができる制度です。
相続した上場株式や非上場株式などの売却で、この制度が利用された件数の平成20事務年度以降の最新データは表2のようになっています(同上)。
直近の平成25事務年度のデータは平成20事務年度以降、最も大きな件数になっていることがわかります。
国税庁の報道発表資料によると、相続財産となった有価証券の総額が1兆5千億円規模(平成20年)から2兆円規模(平成25年)へと増加基調にありますが、こうした動向に伴って、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例が活用される場面が増えるのに何ら不思議はない状況と言えそうです。
3.エンジェル税制
個人投資家が株式を売却した際に受けられるエンジェル税制に関して、直近のデータとなる平成25事務年度の適用状況が分かりました。株式を売却した際に適用できる制度とは、特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等(租税特別措置法37条の13)というものです。対象となるベンチャー企業の株式とは、外部からの投資を受けて事業活動を行うことが適切と認められる等の要件を満たす特定新規中小企業者の株式のことです。特例の仕組みは、この特定新規中小企業者の株式を払い込みで取得した個人投資家が、他の株式投資をしている場合、他の株式投資で生じた譲渡益を、特定新規中小企業者の株式の取得価額の合計額を控除するというものです。適用件数は次の通り推移しています。