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2014.12.1.
法人が建物を取得又は建設した場合の法人税法上の取得価額の計算方法
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株式会社タクトコンサルティング
1.法人税法上の建物の取得価額の計算の原則
法人税の計算上、法人が取得又は建設した建物の取得価額は、原則として次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに定める金額とされます。
(1)建物を購入した場合
法人が建物を購入した場合、その建物の取得価額は次の1と2の合計額とされます(法人税法施行令(法令)54条1項1号)。
1.建物の購入の代価(購入手数料等その資産の購入のために要した費用を含む。)
2.建物を事業の用に供するために直接要した費用の額
(2)建物を建設した場合
法人が建物を建設した場合、その取得価額は、次の1と2の合計額とされます(法令54条1項2号)。
1.建設のために要した原材料費、労務費及び経費の額
2.建物を事業の用に供するために直接要した費用の額
2.建物の取得価額に算入する費用の主な例
(1)立退料(法人税基本通達(法基通)7-3-5)
法人が建物の取得に際し、建物の使用者等に支払った立退料は、前述1.(1)2に該当することから、建物の取得価額に算入されます。
(2)住民対策費(法基通7-3-7)
工場、ビル、マンション等の建物の建設に伴って支出する住民対策費(無形固定資産又は繰延資産の取得価額に算入されるものを除く。)の額で、当初からその支出が予定されているものは、前述1.(2)1の経費の一種と考えられるので、毎年支出することになるものを除き、その支出が建物の建設後に行われるものであっても、その建物の取得価額に算入されます。
3.建物の取得価額に算入しないことができる費用
(1)借入金の利子(法基通7-3-1の2)
建物を取得するために借り入れた借入金の利子の額は、たとえその建物の使用開始前の期間に係るものであつても、これをその建物の取得価額に算入しないことができます。ただし、借入金の利子の額を建設中の建物に係る建設仮勘定に含めた場合は、当該利子の額は建物の取得価額に算入したことになります。このため、建物が完成し、建設仮勘定から建物勘定に振り替える際に、当該借入金の利子を抜き出して損金算入することはできないので注意が必要です。
(2)借入金の利子以外の費用で、建物の取得価額に算入せず損金に算入できるものの例
次に掲げるような費用の額は、前述1.にかかわらず、たとえ建物の取得に関連して支出するものであっても、法人の選択により、建物の取得価額に算入せず、各事業年度の損金に算入することができます(法基通7-3-3の2)。
1.不動産取得税、登録免許税その他登記に要する費用。
・・・不動産取得税等の租税公課等は、一種の事後費用であり、その性格も流通税的なものや第三者対抗要件を具備するための費用であることから、必ずしも建物の取得原価とは言い切れない面があります。このため法基通では、これら租税公課等を建物の取得価額に算入するか損金として処理するかどうかについて、法人の判断に任せています。
2.建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等で、その建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
・・・建物の建設等のための調査、測量、設計等に要した費用の額は、その建物が当初の建設計画通りに完成した際には取得価額に算入すべきものです。しかし、その建設計画が中止・変更されたため、既に支出済みのこれらの費用が結果的に無駄になった場合には、その中止した旧計画に係る費用は、その時点で全くのロスになることから、そのロスを新たな計画に基づく建物の取得価額に算入することを強制するのは不適当です。このため法基通では、上記のような当初の計画の変更のため、やむを得ず生じたロスについては、法人の選択により、その支出の時点における損金として処理することを認めています。
3.いったん締結した建物の取得に関する契約を解除して他の建物を取得することとした場合に支出する違約金の額
・・・例えば、当初建物Aの取得を予定して手付金を支払ったが、最終的に建物Aに替えて建物Bを取得することにし、建物Aの取得に係る契約を解除して手付金を没収された場合は、建物Aの取得に係る契約と建物Bの取得に係る契約が別個のものであることから、建物Aの契約解除に係る手付金の没収額は強いて建物Bの取得価額に算入する必要はなく、法人の選択により、その支出の時点における損金として処理することが認められています。