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2014.08.11.
株式会社が他社との業務提携に際して契約書を作成した際の印紙税
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株式会社タクトコンサルティング
1.はじめに
商取引上、契約書その他の文書を作成した場合において、その文書が印紙税法上の「課税文書」に該当するときは、その作成者は印紙税を納付する必要があります。今回は、事例に基づき、株式会社が他社との業務提携に際して契約書を作成した際の印紙税の課税について検討をします。
2.事例による印紙税の課税の検討
(1)契約書の概要
株式会社X(X社)は、株式会社Y(Y社)と業務提携を行い、次の内容の契約書を締結しました。
1.X社は、Y社に対し、自社の関係先のうちY社の顧客となりうる者を紹介する。
2.Y社は、1によりX社から紹介を受けた者と業務委託契約を締結し、報酬を受領した場合は、その受領額のうち一定額を紹介料としてX社に支払う。
3.上記2の具体的な支払額及び支払の時期等は、X社とY社間で別途協議の上、決定する。
(2)印紙税の課税文書の意義
印紙税法上の課税文書とは、次の三つのすべてに該当する文書をいいます(印紙税法第3条1項、第5条、印紙税法基本通達第2条)。
1.印紙税法別表第一に掲げる第1号から第20号までの20種類の文書により証明されるべき事項(「課税事項」といいます。)が記載されていること。
2.当事者の間において、課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
3.印紙税法第5条の規定により印紙税を課税しないこととされている文書でないこと。
なお、作成した分書が課税文書に該当するかどうかは、文書の全体を一つとして判断するのみならず、その文書に記載されている個々の内容についても判断がされます。また、単に文書の名称又は呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断が行われ、その文書に記載又は表示されている文言、符号を基に、その文言、符号等を用いることについての関係法律の規定、当事者間における基本契約又は慣習等を加味して、総合的に行われます(印紙税法基本通達第3条)。
(3)事例における印紙税の課税の有無の検討
まず、上記(1)の契約書(以下、「本件契約書」といいます。)が、(2)1、2の印紙税の課税文書の要件に該当するかどうかを検討します。
本件契約書は、当事者の一方がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約ではありません。したがって‘請負’ではないので、印紙税法別表第一の第2号の「請負に関する契約書」に規定する文書には該当しません。
次に、印紙税法別表第一に規定する課税文書のうち本件契約書が該当する可能性が残るのは、第7号の「継続的取引の基本となる契約書」です。この第7号に規定する文書に該当するためには、次の1~5のいずれかに該当する必要があります(印紙税法施行令第26条)。
1.営業者の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して行うため作成される一定の契約書。
2.代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの。
3.金融機関から信用の供与を受ける者と当該金融機関との間において作成される一定の契約書。
4.金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者又は商品先物取引法第2条第23項に規定する商品先物取引業者とこれらの顧客との間において作成される一定の契約書。
5.損害保険会社と保険契約者との間において二以上の保険契約を継続して行うため作成される一定の契約書。
上記1~5のうち、本件契約書が1及び3~5に定める契約書に該当しないことは明らかです。残る2についても、本件契約書の内容は業務等を委託するものではないので、2の契約書には該当しないと考えられます。したがって本件契約書は、印紙税法別表第一の第7号に規定する文書には該当しません。
さらに、本件契約書は、印紙税法別表第一に規定する残る18種類の課税文書にも該当しません。
以上により、本件契約書は印紙税法上の課税文書に該当せず、その契約書には印紙税が課税されないものと考えられます。