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2014.04.07.
相続税の計算における「法定相続人の数」
Provided by 税理士法人タクトコンサルティング
株式会社タクトコンサルティング
既にご案内の通り平成27年1日1日以後開始の相続から相続税の増税が予定されています。基礎控除額が大幅に引き下げられて、新たに相続税の課税対象となる方が大幅に増加することが見込まれます。漠然と不安を感じている方も多いと思われます。この基礎控除額の計算や相続税の総額の計算では「法定相続人の数」が重要になってきます。今回はこの「法定相続人の数」について解説します。
(1)相続税の計算における「法定相続人の数」
相続税の計算過程で「法定相続人の数」が登場するのは、以下の4つの項目です。
(1)遺産に係る基礎控除額
相続税は、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続財産の総額(プラスの財産からマイナスの財産を控除した純額)が遺産に係る基礎控除額を超える場合に申告義務があります。この遺産に係る基礎控除額は、平成26年12月31日以前開始の相続では、(5,000万円+1,000万円×「法定相続人の数」)です。平成27年1月1日以後開始の相続では、(3,000万円+600万円×「法定相続人の数」)です。
(2)相続税の総額
相続税の総額は、上記(1)の相続財産の総額から遺産に係る基礎控除額を控除した金額を「法定相続人の数」に応じた相続人が法定相続分に応じて取得したものとして、その各取得金額に相続税率を乗じて各相続人の相続税額を計算し、その各相続人の相続税額を合計して計算します。
(3)生命保険金の非課税限度額
相続人が取得した生命保険金の内、(500万円×「法定相続人の数」)が非課税限度額とされます。
(4)死亡退職手当金等の非課税限度額
相続人が取得した死亡退職手当金等の内、(500万円×「法定相続人の数」)が非課税限度額とされます。
(2)「法定相続人の数」の数え方
「法定相続人の数」は、民法第五編第二章の規定による相続人の数に、相続税法の規定による一定の制限を加えた数になります。上記(1)のとおり「法定相続人の数」が増えれば相続税の負担が減少することになりますので、恣意的に「法定相続人の数」を増やすことにより、不当に相続税の負担を回避することを防止するために制限が加えられています。
具体的には、民法で定める相続人の数に次の制限を加えます。
(1)養子の数の制限
「法定相続人の数」に算入する養子の数は、次の通りです。
i)被相続人に実子がいる場合、又は実子がなく、養子が1人である場合・・・1人
ii)被相続人に実子がなく、養子の数が2人以上である場合・・・2人
(2)相続の放棄があった場合
相続の放棄があった場合には、民法上は相続人に変動が生じますが、相続税法上は相続の放棄がなかったものとして「法定相続人の数」を数えます。
(3)実子とみなされる養子等
上記(2)(1)のとおり、養子については「法定相続人の数」に算入できる人数が制限されるのが原則です。しかし、次に掲げる者については、「法定相続人の数」の規定上は実子とみなされて養子の数の制限を受けないこととされています。
(1)特別養子縁組により養子となった者
(2)被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
(3)被相続人と配偶者の婚姻前に、配偶者の特別養子縁組により養子となった者で、婚姻後に被相続人の養子となった者
(4)実子若しくは養子又はその直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため民法の規定により相続人(相続の放棄があった場合には、放棄がなかったものとした相続人)となったその者の直系卑属
養子縁組の活用により、相続税の負担の軽減や、一世代飛ばした相続などの対策が可能になります。ただし、他の相続人の権利関係に大きな影響を及ぼしますので、後々のトラブルの種にならないように事前の十分な説明等が重要になります。