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2014.02.17.
平成26年度税制改正:相続等により取得した土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特例の見直し
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株式会社タクトコンサルティング
1.現行の相続により取得した資産を譲渡した場合の譲渡所得の特例(相続税の取得費加算の特例)
個人が資産を譲渡した場合、その譲渡益は譲渡所得とされ、所得税、復興特別所得税と住民税が課されます。譲渡所得の金額は、譲渡収入からその資産の取得価額(取得費)と譲渡費用を控除して計算します。
個人が相続又は遺贈(以下「相続等」といいます。)により取得し、相続税の課税対象となった資産を相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合には、譲渡所得の金額の計算上、その譲渡した人に係る相続税のうち一定の額(以下「取得費加算額」といいます。)が、譲渡した資産の取得費に加算されます。これを「相続税の取得費加算の特例」といいます(措法39)。取得費加算額は、譲渡する相続財産が土地又は土地に存する権利(土地等)であるかどうかによって、次の①又は(2)の算式により計算します(措令25の16(2))。
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つまり、譲渡する相続財産が土地等である場合(1)は、譲渡する相続財産が土地等以外の資産である場合(2)と異なり、譲渡していない土地等に対応する相続税額も譲渡収入金額から控除されることになります。
2.平成26年度税制改正による相続税の取得費加算の特例の見直し
平成26年度税制改正により、上記1の加算額の計算のうち、1の場合の計算、すなわち、相続財産である土地等を譲渡した場合の取得費加算額の計算方式がなくなり、相続税の取得費加算額の計算は、全ての相続財産につき(2)の計算に一本化されました(その点以外の改正はありません)。つまり、土地等を申告期限から3年以内に譲渡した場合でも、その譲渡所得の金額の計算において取得費に加算できる相続税額は、土地等以外の相続財産を譲渡した場合と同様に、その譲渡した土地等に対応する部分に限定されることになります。この改正は、平成27年1月1日以後に開始する相続等により取得した資産(土地等)の譲渡について適用されます。
この特例が昭和45年に創設された当時の取得費加算額は、譲渡資産を土地等と土地等以外の資産とに区別せず、上記(2)の算式により計算した金額のみとされていました。これが平成5年度の税制改正により、相続財産である土地等を譲渡した場合の取得費加算額については、上記(1)の算式により計算することになりました。
平成5年度改正が行われたのは、昭和60年代初めからの急激な地価高騰を背景に、相続開始後一定期間内に相続財産である土地等を譲渡した場合における所得税の更なる負担の軽減を図る必要が生じ、かつ相続税を物納した場合における所得税負担(物納は資産の譲渡に該当するものの、措法40の3に基づき譲渡所得は非課税。)とのバランスを図るためでした。しかし、地価の高騰が沈静化し、相続税の物納も平成18年度税制改正以降は申請者数が急減したことから、改正の理由である相続税と所得税の更なる負担の調整の必要性が低下していました。しかし上記(1)の計算方式が見直されなかったため、現行税制の下で土地等を多く相続した人の中に所得税額が著しく軽減されているものが見受けられるようになり、会計検査院から財務大臣に対し改善を求める意見表示(平成24年10月19日付)がなされる等、見直しが求められていました。このため平成26年度改正により、取得費加算額の計算が平成5年度改正前の取扱いに戻されることになったわけです。