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2013.11.11.
取引相場のない株式の評価方法について
Provided by 税理士法人タクトコンサルティング
株式会社タクトコンサルティング
1. 取引相場のない株式の評価方法
非上場株式(取引相場のない株式)については、相続や贈与によりその株式を取得した株主が、評価対象会社の経営支配力を持っている同族株主等に該当する場合は基本的に原則的評価方式により評価します。
2. 原則的評価方式の内容
原則的評価方式には、1.類似業種比準価額方式、2.純資産価額方式、3(1と2の両方式を併用する)併用方式があります。
類似業種比準価額方式とは、評価対象会社の営む事業と類似する業種の上場企業の株価並びに1株当たりの配当金額、年利益金額及び簿価純資産価額(これらは国税庁が公表)を基に、評価対象会社の1株当たりの配当金額、年利益金額及び簿価純資産価額を比準させて、株式を評価する方法です。配当、利益、純資産の各要素の中では、利益のウェイトが配当及び純資産に比べて3倍と高くなっています。
一方で、純資産価額方式は評価対象会社の資産及び負債を財産評価基本通達に定める方法により評価することで、会社の純資産を時価ベースに置き換えて評価する方法です。したがって、土地や有価証券等の資産に大きな含み益を有している会社については、決算書における簿価純資産に比べて評価額が高くなります。
原則的評価方式における類似業種比準価額と純資産価額の適用割合については、評価対象会社の会社規模に応じて決定されます。会社規模が大きく判定されるほど、類似業種比準価額の適用割合が高くなるように定められおり、大会社に区分されると、純資産価額は反映されず、類似業種比準価額100%で評価することになります(納税者の選択により純資産価額により評価することも出来るので、類似業種比準価額よりも純資産価額の方が低い場合には、純資産価額を選択することになります)。
なお、会社規模については、(1)簿価ベースの総資産、(2)従業員数、(3)直前期末以前1年間における取引金額(売上高)により判定します。
3. 一般的な株価対策の考え方
多くの会社では、純資産価額に比べて、類似業種比準価額の方が低く評価されることから、類似業種比準価額の適用割合が高いほど、株価は低くなり、納税者にとって有利な結果となります。
したがって、一般的な株価対策としては、(A)類似業種比準価額の適用割合が高い、規模の大きな会社にすることや、(B)類似業種比準価額自体を引き下げることが挙げられます。
(A)としては、例えば、ある事業年度の売上高が大きい等、会社規模が大きく判定されるタイミングで、株式の贈与を行うことが考えられます。また、複数の会社の株式を保有している場合に、それらの会社を合併し、1つの会社とすることで、会社規模が大きくなり、結果として株価が低下することも考えられます。
(B)の類似業種比準価額自体を引き下げる方法としては、創業者が取締役を退任する際の役員退職金支給等、一時的な損失計上により利益(課税所得金額)を減少させることが考えられます。
4. 類似業種の株価について
類似業種比準価額の計算において採用する類似業種の株価は、相続・贈与日の属する月以前3ヶ月間の各月の平均株価又は前年平均株価の中で、最も低いものを選択することが出来ます。
アベノミクスによる平成24年末からの株価上昇により、平成25年の直近株価とアベノミクスの影響が十分に反映されていない平成24年の年平均株価の間には大きな乖離が生じています。平成25年中に株式の贈与を行う場合には、平成24年の年平均株価を選択することが出来ますが、贈与が平成26年に行われる場合には、平成25年の年平均株価又は平成26年の直近株価の中から選択することになります。贈与を検討されている方はこのあたりの影響も考慮して判断を行う必要があります。