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2013.5.27.
やっぱりあった!小規模宅地特例の厳格化の影響
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1.平成22年度改正の影響は?
平成22年4月1日から、相続税の特例である「小規模宅地の評価減の特例」が厳格化され、この特例で評価減できるケースが縮小されています。このため改正以来、どのような影響が相続の現場で出ているのか、各方面から注目されてきました。
小規模宅地の評価減の特例とは、被相続人の事業用宅地や居住用宅地を相続人等が相続した場合に、そのうち一定要件を満たす宅地(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等)につき、その土地の課税価額が一定割合減額される租税特別措置です。
このうち実家の相続で問題になる「特定居住用宅地等」については、240m2までを限度面積としてその課税価額の80%を減額するものです。
しかし平成22年度の改正により、配偶者以外の相続人が実家の敷地を継いだとしても、被相続人と生前から同居し、相続後継続して住み続けているなど、所定の要件を満たす場合以外は、80%の評価減の適用ができなくなっています。
たとえば特定居住用宅地等を被相続人の配偶者とともに同居していない子が共同相続した場合がその一つです。改正前なら子の相続分にも80%減額が認められていましたが、改正後は認められなくなっています。
また、改正前では特定居住用宅地等に入れることが可能だった賃貸併用住宅の賃貸部分の敷地について、改正後は特定居住用宅地等に入れられなくなっています。
こうしたことが特例の適用件数などに影響を与えそうだと考えられた。
小規模宅地の評価減の改正点 | 上限面積 | 軽減割合 | |
事業用 | 事業継続 | 400m2 | 80% |
非継続 | 200m2 | 50% | |
不動産貸付 | 200m2 | 50% | |
居住用 (配偶者以外) |
居住継続 | 240m2 | 80% |
非継続 | 200m2 | 50% |
2.特定居住用宅地等での減額が減少
小規模宅地の評価減の特例の適用状況をまとめた国税庁の平成23年分までの資料によると、直近の平成23事務年度の小規模宅地の評価減の適用件数は全体で、3万4,880件、減額金額は5,569.6億円にとどまり、平成21事務年度の値に比べて、件数で3,396件、減額金額で1,094.1億円減少しました(表1参照)。
表1 | 20年 | 21年 | 22年 | 23年 |
---|---|---|---|---|
適用件数 | 42,507 | 38,276 | 34,247 | 34,880 |
相続人数 | 53,280 | 54,009 | 50,878 | 51,073 |
小規模宅地 の面積(m2) |
9,299,758 | 8,187,848 | 7,255,035 | 7,392,518 |
減額金額 (億円) |
8,102.9 | 6,663.7 | 5,709 | 5,569.6 |
このうち特定居住用宅地等として評価減の適用を受けた相続人の人数2万8,663人、減額金額は3,864.3億円にとどまりました。平成21事務年度の値に比べ、人数で2,442人、減額金額で730億円減少しています(表2参照)。
表2 | 20年 | 21年 | 22年 | 23年 |
---|---|---|---|---|
特定居住用宅地 等の適用件数 |
30,090 | 26,352 | 24,838 | 25,678 |
相続人人数 | 34,721 | 31,105 | 28,474 | 28,663 |
減額(億円) | 5,747.3 | 4,594.3 | 3,970.2 | 3,864.3 |
やはり子が相続人にとなって特定居住用宅地等を選択して課税価額の減額を受けることが難しくなった等の影響も表れたものとみられます。
3.貸付事業用宅地での特例適用の動向
実は平成22年度の改正に伴い、貸付不動産の敷地については、「貸付事業用宅地等」との項目でデータが採取されるようになりました。それによると、平成22事務年度の貸付事業用宅地等の適用件数は7,371件、適用者は1万1,666人、平成23事務年度では適用件数が1万1,442件、適用者数1万7,918人となっています。どうやら、特定居住用宅地等で特例が適用できないならば、貸付事業用宅地等で適用を考える人が増えたのではないか、そんなことがうかがえるデータになっています。