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家ココチ[Vol.11] ペットのココチ 「ペット目線で考える住まい」
賃貸住宅でも一人住まいでも、ペットと生活することは今や珍しくありません。家族として共生する小さな動物のために、住まいへの工夫も様々に施されています。けれど「なにかは誤ったものも多い」と警鐘を鳴らすのは、愛玩動物飼養管理士でもある建築家の金巻とも子さん。人間の満足のためではなく、ペットと人間がお互いに本当に住みやすい配慮とは?彼らの習性や社会的なマナーをも考慮した、ペットと暮らす心地よい住まいのコツを学びます。
Profile
金巻とも子
金巻・こくぼ空間工房主宰。設計業務と共に、動物との暮らしをテーマにした建築コーディネーターとして活躍。愛玩動物飼養管理士の資格を持ち、医療や行動学の勉強会に定期的に参加して、常に新しい情報を住まいの観点からアドバイスする。

Kokochi01 間違いだらけだったペット設備

大好きなペットとの生活のためによかれと思ってしたことが、実は間違った配慮だったとしたら? ペットとの共生住宅には、そんな事例が少なくないようです。例えば建材の選択。犬の爪による床のキズや、壁の引っかきを防ぐための配慮です。「欧米ではペットと住宅の工夫で、床材の話題は出てきません。土足生活という習慣の違いだけでなく、家は犬にとっていわば巣の中。ゆっくり歩くべき場所なのです。そこで滑るような歩き方をしていることは異常な状態。そのことに、まず気づくべきです」と金巻とも子さんは問題の本質を説明します。落ち着いていれば、室内で滑るほど走り回ることもないはず。また硬すぎる床はかえって滑り、脱臼やヘルニアの危険も生まれます。本来なら落ち着くべき場所で興奮しているのは、ほかに何らかの問題が隠されている可能性もあるでしょう。

また便利な足洗い場にも誤解が。通常のお散歩のあとは、湿った布で丁寧に拭くだけで十分と言われます。水洗いするなら指の間の毛まできちんとドライヤーで乾かさなければ、ムレや冷えにつながり、清潔どころかかえって病気を招く事態に。「足洗い場は、まず人間がじっくり腰を下ろして作業できることが条件」と金巻さん。よく耳にするこれらの設備さえ、理解不足だった点が見えてきます。

ペットの代表である犬と猫について、まずはそれぞれの習性を基に、彼らの居場所を考えてみます。

Kokochi02 群れの一員が心地よい犬
収納の下にハウスを組み込んだサークルの例。
寝床になる場所が収納下で奥まっているので安心して休むことができる。

犬はリーダーを筆頭に群れをなす社会的な動物。人間がリーダーシップをとることで、互いにストレスのない関係が築けます。基本の居場所は家族と同じリビングが最適。その一画に、犬が落ち着ける場所、避難できる場所であるサークルスペースを設けます。寒暖の差の激しい窓際、AVや扉そばは落ち着かないので避けるように。「個室は群れから隔離した状態。また出入り口付近に居させる監視を依頼したことになり、いつまでも緊張状態を強いることにもなりかねません」。犬は人間と一緒に出かけることが大好きですから、刺激はお散歩のときの季節の移り変わりや、人や犬と出会うことで満足されます。

サークルはハウス(ベッド)+遊べる+トイレが目安の広さ。ハウスと対角線上にトイレがあると、無理なく覚えられます。また日ごろからハウスをキャリーバッグにしておくと旅行や診察の際にも嫌がりません。「収納や棚の下にハウスを組み込むのもいいアイディアです」。

Kokochi03 退屈がストレスになる自由な猫
金巻さんのお宅のキャットタワー。
てっぺんから段階的に猫が下りられるように工夫されている。

テリトリーのちょっと高い場所にいて、獲物を待つ習性があるのが猫。家中を自由に歩き回るので、家の中にも上下運動ができる場所を用意します。
待ち伏せしての狩ごっこができたり、隣の部屋や外の様子が眺められれば、猫の探究心をそそります。その際、登れるけれど降りられない、ということのないように、スロープやジャンプなら90cm程度の高さに抑えて場所を設定します。着地点が滑らないよう、ラグを敷くなどの考慮も必要。

キャットタワーだけでなく、家具を微妙に模様替えしたり、ダンボールを置いてあげるなどすることで、精神的にも老けさせません。「猫は自分が納得したことしかやりません。この人が喜ぶことをしたい、と思わせること。怒ると人が嫌いになって、見えないところでの環境悪化を招きます」。

トイレや寝床の数は、頭数+1と考えて。爪とぎはマーキングと新しい爪のために必要なもの。「壁の保護を施しつつも、個体差があるので、やりたい場所、好きなものでやらせてあげることです」。

Kokochi04 通風・採光・調湿が何より大切
縦にしたドアノブは、ドアノブを横に動かさねばならず、犬や猫にとっては難しい動作なので入室を防ぐのに効果的。

犬と猫の習性によるポイントを学んだところで、インテリアの視点から見直してみましょう。

理想の室温は、猫の場合、冬場は20℃くらい。犬は暑いのが苦手なので、土間など体温調節できるような冷たい場所を用意し、移動できるようにします。乾燥は人と同じく苦手なので、湿度50%以下にならないよう配慮します。これは人間にとっても最適な湿度です。犬や猫は乾燥で毛に静電気を持ち、ハウスダストを体に付けやすくなってしまいます。珪藻土(けいそうど)など調湿機能のある素材遣いや、ラグなどのファブリックによっても調湿を心がけます。

明るい日差しはペットにとっても気持ちのよいもの。特に老いてくると明るさの体内時計が乱れるため、日なたぼっこを通して、1日のサイクルが日光で分かるようにしてあげましょう。反面、夜のリビングがこうこうと明るいのは辛い。眠る2時間前には落ち着ける明度にしてあげることも人間と同じです。におい対策としては、部屋の空気の流れを調べ、排気の最終ポイント近くにトイレを置くこと。換気扇ならば静音タイプを取り付けます。

ペットドアは、自由に歩く猫には最適、犬の場合、出入りできる場所には守る義務が生じ、人間が管理していることが分かりにくくなります。しつけという点では、扉、仕切り、段差などの空間のメリハリが指示を出しやすいポイントになります。「行動の正否が分かる時間は0.5秒と言われます。ちょっとした空間の節目を教えることが大切。例えばドアは下まで見通せるスリット窓などで安全を確保しつつ、内開きにすると、人が先で犬が後という順番が自然にでき、しつけになります」。金巻さんは市販のレバーハンドルを縦に付ける工夫で、ペットがドアを開けることを防いでいます。

人も十人十色というように、種類による性格だけでなく、育ちによっても性格は変わり、個体差はあります。「ベーシックな行動と照らし合わせながら、大きな問題がないようならば、ウチの子は変わっているなぁと思うくらいのほうが、神経質になりすぎず、お互いストレスなく暮らせるのではないでしょうか」。

取材・文 甲嶋じゅん子