「J-REIT」と実物不動産、それぞれのメリット・デメリット
不動産への投資の一つとして、数万円から始められるJ-REIT(不動産投資信託)が注目されています。一棟マンションやアパートなどの実物不動産と比較しながら、メリット・デメリットを紹介しましょう。
「資金計画」「収益性」「換金性」「税金」での比較
では、実物の不動産投資とJ-REIT、それぞれの特徴やメリット・デメリットを考えていきましょう。
1.必要な資金額とレバレッジ
J-REITは数万円から投資できますから、ちょっとした余裕資金で手軽に始められるといえるでしょう。また、50~60万円のJ-REITを数十口、数千万円も保有している投資家もいるようです。
一方、実物不動産は、もっとも少額と考えられる郊外の区分ワンルームでも数百万円程度から、一棟マンションでは1~2億円です。キャッシュで買える富裕層を別にすれば、融資を受ける必要があります。
ここで、レバレッジの面での大きな違いがあります。J-REITの取得資金に融資はありませんから、「自己資金の大きさ=投資可能な金額」です。リターンの大きさも決まってきます。
実物不動産の場合は、物件を担保に借り入れを起こします。少ない自己資金で大きな物件を取得する、つまり、レバレッジを効かせることができるわけです。その人の属性や物件によっては、頭金なしで物件を購入できる場合もあります。運用資産のパフォーマンス、資産形成のスピードという点では、実物不動産のほうに軍配が上がります。
2.収益性
J-REITの予想配当利回りは2~7%程度で、平均4%弱です。実物不動産(収益物件)の場合、表面利回りが3~10数%で、平均6%台(ノムコム・プロ調べ)となっています。
この数値だけを見ると、実物不動産のほうが高いように見えますが、利回りの中身が違うため、単純に比較はできません。J-REITは、運用実績によって変動はしますが、表示された利回りで配当され、決まった税金(後述)を引いたものが手取り額です。仮に1口50万円で3%なら、年間1万5,000円の配当(税引き前)ということになります。
実物不動産の表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割ったものです。その家賃収入から、ローンを借りる場合はその返済額や管理運営の経費などを差し引く必要があります。物件や購入者の属性によって返済額や税額が変わるため、手取り額は大きく変わってきます。表面利回りが7%でも、税引き前キャッシュフローの実質利回りでは2%程度になることもあります。
また、実物不動産では、管理運営の実務は管理会社に委託するとしても、空室対策や物件の修繕など賃貸経営の重要事項についてはオーナー自身の意思決定が必要で、リスクも取らなければなりません。融資金利や税額、先々のリスクなども含め、シミュレーションをしたうえで物件を購入する必要があります。
裏を返せば、J-REITの運用はプロにお任せで投資家は手を出せないのに対して、実物不動産の場合は物件の選び方やオーナー自身の工夫によって収益性を高められるともいえます。
3.流動性・換金性
J-REITは、リート市場に上場されているため、全国の証券会社の窓口や、インターネットのオンライン取引を通じて、いつでも売買できます。その意味では、流動性、換金性が高いといえます。短期間に売買することも可能です。
実物不動産を換金するには、売り出しから資金の決済までに1カ月程度はかかります。場合によっては数カ月、半年かかることもありますので、流動性は低いといえるでしょう。そのため、数年から5年程度は所有することを前提に投資するのが一般的です。
4.税金、節税対策
J-REITは、配当所得・売却益ともに分離課税で、所得税と住民税を合わせて20%(他に復興特別税)です。配当所得は、本来なら総合課税ですが、証券会社の特定口座で「源泉徴収あり」を選択すれば源泉課税となります。またNISA(少額投資非課税制度)を利用すれば、2016年から年間120万円までは非課税です。
実物不動産の場合、不動産所得は総合課税、売却益については個人なら分離課税です。不動産所得は、他の所得を含めて所得水準が高くなるほど税率が上がります。売却益に対する譲渡税は、5年以下の短期譲渡は約39%、5年超の長期譲渡は約20%です。実物不動産のほうが、税率は高めになるケースが多いかもしれません。
ただ、実物不動産の場合は、法人設立など工夫次第で所得税の節税対策も可能です。相続税対策に生かすこともできます。裁量の範囲が広いといえるでしょう。
J-REIT vs 実物不動産、比較まとめ
最後に、J-REITと実物不動産の違い、メリット・デメリットをまとめました。
J-REITへの投資は、自己資金の範囲内でプロに運用を任せ、流動性が高く、リスクも実物の不動産に比べて小さいといえます。実物不動産への投資は、融資によるレバレッジで資産形成スピードや規模感にメリットがありますが、その分リスクもあります。自分で工夫できる点も多くありますが、手間がかかると感じることもあるでしょう。
それぞれの利点を活かして、組み合わせて投資をしてみるのがいいかものかもしれません。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。