「J-REIT」と実物不動産、それぞれのメリット・デメリット
不動産への投資の一つとして、数万円から始められるJ-REIT(不動産投資信託)が注目されています。一棟マンションやアパートなどの実物不動産と比較しながら、メリット・デメリットを紹介しましょう。
【この記事のポイント】
•株式より堅調?注目のJ-REIT
株価指数よりも高い水準で推移するJ-REIT
日銀によるマイナス金利政策の実施以降、一段とJ-REIT(Jリート)に対する注目度が高まっています。2%前後の株式の配当利回りに比べて、3%を超えるJ-REITの予想分配率の高さが目立っているからです。また、国は、不動産投資市場活性化の一環として、リートなどの資産総額を、2020年頃に現在の2倍に当たる30兆円に拡大する成長目標を打ち出しています(不動産投資市場政策懇談会提言)。
図1は、J-REITの投資口価格を指数化した「東証リート指数」と日経平均株価の騰落率の推移を示したものです。2016年5月末時点で、日経平均株価が年初比マイナス7.5%を付けているのに対し、東証リート指数は年初比プラス9.3%となっています。
J-REITの「REIT」は、「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとった略称で、「不動産投資信託」を意味します。投資家から資金を集めて不動産に投資し、購入した物件の賃料収入や売買益を配当するものです。投資家が購入するのは受益証券(証券会社を通じて購入します)で、投資家自身が不動産の所有権を得るわけではありません。日本では、不動産保有者と運用者を分けるなどの規制があるため、区別をしてJ-REIT(Jリート)と呼んでいます。
ただ、「不動産投資信託」という名称から、J-REITは「不動産投資の一つ」として紹介されることも多いようです。そこで、実物の不動産投資とJ-REITについて比較しながら、それぞれについて理解を深めていきたいと思います。
J-REITは1口6万円台から、配当利回りは3~4%
まず、J-REITについて、大まかな仕組みと現状を見てみましょう。
J-REITの多くは、「不動産投資法人」の形態を取っており、保有資産を証券化した受益証券を証券取引所に上場し、株式と同じように売買できるようになっています。収益の90%超を配当に回すなど、一定の条件を満たせば、投資法人には法人税がほとんどかかりません。そのため、通常の株式などに比べて、配当利回りを高めに設定できます。運用実績などの情報も開示されるため、透明性の高い仕組みといわれています。
投資対象の種類は、オフィスビルがもっとも多く、次いで商業施設、住宅と続きます。物件の種類に特化した商品だけでなく、オフィスと商業ビル、オフィスと住宅など複合したタイプもあり、最近では物流施設やホテルなどバリエーションが増えています。投資口価格や配当利回りの高低は、物件の種類や組み合わせ、地域など、銘柄によってかなりのバラつきがあります。
2016年8月上旬時点で、J-REITの銘柄(投資法人)は56に上ります。1口当たり投資口価格と予想配当利回りの関係は、図2の通りです。投資口価格は6万円台から120万円以上まで幅広く、平均で約27万円です。予想配当利回りは2%台後半から6%台で、平均は4%弱となっています(いずれも2016年8月24日現在)。
株と同じくらいの投資額で、利回りは比較的高めということが分かります。また、株式の銘柄をブランドなどの「好き嫌い」で選ぶ人もいるように、著名なビルや商業施設などにも投資することができ、資産形成とは違った楽しみ方もあるかもしれません。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。