不動産投資の出口戦略を考える
不動産投資では、購入物件の選び方も大切ですが、それ以上に「いつどのように売却するか」という「出口戦略」も重要です。売却のタイミングと「売り時」の判断の考え方についてご紹介致します。
「出口」のない投資は完結しない
不動産投資には「入口」と「出口」があります。投資物件を購入することが「入口」、売却することが「出口」です。マイホームの場合は一生持ち続けて永住することもあるかもしれませんが、投資物件の場合は必ず出口があります。なぜなら、最終的に売却しないと利益が確定しないからです。
なかには「高利回りの物件を購入して安定収入を得ているから、不動産投資が成功した」という方もいます。もちろん、入口として収益性の高い物件を購入することは大切ですし、成功の扉を開く必要条件といえます。しかし、購入して何年か賃貸経営しているだけでは本当に成功したとはいえません。
たとえ今は高い収益を維持していても、近い将来、収支が悪化してキャッシュフローがマイナスにならないとは限りません。金利が上がる、老朽化などで空室率が高くなり収入が減る、修繕費が嵩んで支出が増えるなど、さまざまな損失のリスクがあります。むしろ早いタイミングで売却することで結果的にトータルの収支が良くなる場合もあります。
このように、いかに損失を最小限に抑え、収益を最大化できるかを考えることが「出口戦略」です。最初から値上がり益を狙って物件を買うことはおすすめできませんが、購入する段階で出口を想定しておくことは大切です。また購入後も常に、物件の状況やマーケットをにらみながら、出口を検討することが必要なのです。
売主と買主が共存、
「売り時」かつ「買い時」の珍しいマーケット
まず、現在のマーケットを紹介しておきましょう。2012年秋までは、不動産投資物件は価格も利回りも大きな変化がない安定した市況でした。どちらかといえば、価格交渉の上で安く買える可能性がある「買い手市場」だったといえます。
しかし、2012年末から2013年の始めにかけて状況が一変しています。いわゆるアベノミクス効果で投資への注目が急激に高まって、一足先に"資産インフレ"の動きが出ているのです。簡単にいえば投資物件が値上がり(利回りが低下)し始めているということです。「今ならいくらで売れるか知りたい」「利益が出るなら売りたい」という売主が、現在のチャンスを生かそうと売却を検討し、実際に値上がり益を得ているケースも少なくありません。

物件価格が上がっているという点では「売り手市場」といえます。ただ、新規の売り出し物件が次々に出ていますし、超低金利の状態が続いているため、買主にとっても不利な状況にはなっていません。「先高感」がある一方で、まだ低金利で買いやすい時期なので、「買い時」と判断している買主が多いのです。いわば、「買い手と売り手が共存しているマーケット」といえるのです。
すでに物件を保有している人にとっては、もう少し待ったほうが値上がりして高く売れるので、まだ売り時ではないと思うかもしれません。しかし、価格が上がりすぎると利回りが下がり、買主の購入意欲が減ってしまい、売りにくくなる恐れもあります。現在のマーケットは、売主にとっての「売り時」と、買主にとっての「買い時」が微妙なバランスを取っている状況といえるでしょう。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。