投資用物件の「掘り出し物」を見つける方法
不動産投資の指南などでは、「掘り出し物を探そう」と書かれているものがあります。その一方で、「不動産に掘り出し物はない」ともいわれます。いったいどちらが本当か、「資産形成」や「相続対策」などで、収益物件を買う時の視点で考えてみましょう。
【今回のポイント】
・収益物件なら「掘り出し物」はある!
・同じ物件が、目的や人の条件次第で良くも悪くもなる
・磨けば光る物件を掘り出す
・隠れた優良物件情報の出どころ
・「掘り出し物」をいち早くつかむコツ
収益物件なら「掘り出し物」はある!?
「不動産に掘り出し物はない」と、よく言われます。住まいを探しているときに、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。ここでいう「掘り出し物」は、「相場より安く買える、条件の良い物件」という意味でしょう。
これは、自分が住む「マイホーム」探しでは、おおむね正しいのではないでしょうか。しかし、投資用の物件、収益物件にはなじまない気がします。マイホームとそれ以外(投資用の収益物件や相続対策の不動産)は、同じ不動産であっても、買う時の視点が全く違うからです。
まず、 マイホームは「自分が住む」という共通の使用目的があります。住環境や住み心地の良さを優先するのが普通ですから、「人気の条件」も万人で共通する点が多くなります。
しかも、取引状況は比較的オープンで、取引量もそれなりにあるので、地域や物件の条件による価格相場が形成されています。人気条件をより多く満たす物件の価格は高く、人気条件があまり満たされていない物件は安くなるわけです。
つまり、条件が似ているのに価格が安い物件には、安いなりの理由があるということです。安いからと言って、掘り出し物とはいえません。
もちろん、「急いで売りたい」などの売主の事情で、条件の良い物件が相場より安く出ることも、ないわけではありません。しかし、そういった物件は、スピーディーに現金化できる不動産買取業者への売却が多くなり、一般の流通市場には出てきにくいといえます。
一方で、収益物件の場合は、次の二つの理由から、「掘り出し物」に出会える可能性があります。
まず、収益物件は、必ずしもオープンな市場で取引されるとは限りません。売主が情報を公開したくないケースもあるため、レインズやインターネットの物件検索サイトなどに掲載されない物件もあります。そのため、マイホームのような取引事例をベースにした価格相場というのは形成されにくいのです。
さらに、投資物件を買う目的によって希望条件が大きく異なります。同じ物件が、ある人にとってはまったく対象外となり、別の人にとっては「よい物件」となります。住まい探しとは違う、「掘り出し物」が存在しうる背景があるわけです。
同じ物件が、目的や人の条件次第で良くも悪くもなる
では、わかりやすく、目的と買うべき物件の条件の例を見てみましょう。
たとえば、「相続対策」と「資産形成」では、それぞれ次のような条件が求められます。それぞれの目的に対してより有利な物件が見つかれば、それが「掘り出し物」になるでしょう。
<相続対策>
収益性の高さよりも、評価額の圧縮効果が高い物件を希望する人が多くなります。現金で購入したりするケースや立地を重視する傾向にあるため、表面利回り3~4%程度でも許容範囲です。利回りよりも将来的に資産価値が目減りしないエリアを好みます。
→人気物件の例:都心のタワーマンション最上階
相続対策の場合は、少しくらいなら価格が高い物件を買ったほうが、最終的におトクになるケースもあります(図1)。価格の高低よりも、評価額の圧縮率の大きさがポイントで、この例では、物件Bが掘り出し物といえるかもしれません。
<資産形成>
現在の収入アップや資産形成を図るなら、収益性が高くなければなりません。キャッシュフロー重視で、利回りの高い物件を希望するのが一般的です。インカムゲイン(運用益)で手持ち資金を増やしつつ、うまくいけばキャピタルゲイン(売却益)も狙える物件だと、なお良いでしょう。
その点では、安く買えることは、掘り出し物の条件のひとつかもしれません(融資条件によっても判断は分かれます)。
→人気物件の例:都心周辺部、やや郊外。表面利回り7~8%の一棟レジデンス
同じ資産形成でも、手持ち資金の状況などによっては、別の条件のほうが有利になることもあります。また、投資への志向によっても、適した物件は変わります。
手持ち資金が豊富で収入が高く、金融資産を不動産に変えて、長期的に安定収入を得たい場合は、利回りは5%程度でも、なるべく都心に近い物件を希望するケースが多いでしょう。さらに、減価償却費を多く計上できる建物割合の高い一棟マンションなら、所得税・住民税の節税にもつながります。つまり、節税しながら資産形成効果の高い物件が、このタイプの人とっての掘り出し物となるわけです。
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1998年から不動産業界に携わり、首都圏のマンション販売・投資用マンションの販売を経験。その後、2005年より主に一棟マンション・ビル等の投資事業用不動産を中心とした仲介業務に従事。
他の投資商品との比較から不動産投資の具体的な投資・運用方法まで、初心者の方にも、経験者の方にも参考になる内容を、わかりやすく丁寧にご説明いたします。