暮らしの中で「新しいふつう」をみつけるサイト

仕事後、しかもまだ明るいうちに、
妻と待ち合わせをするのは、いつ以来だろう。
普段はまだ会社にいる時間を、早めに仕事を切り上げて待ち合わせ。
何とも贅沢な感じがする。そういえばこの腕時計も、
結婚記念日にふたりで選んだものだ。

家の近くのいつもの駅。
いつもと変わらない駅に、妻が先に待っていた。
改札の向こうにいる妻を見た瞬間、仕事の緊張がすっと解け、ほっとした。

「お疲れ～！意外に早かったね」
普段の何気ない言葉から元気をもらう。
今日は、普段なかなか話せないことをのんびり語り合い、向き合ってみよう。
そう思った。

買った物は袋につめる。つめ方にもひと工夫。重い方は妻には持たせられない。こっそり、何も言わずに軽くしてあげる。

ふたりで手をつないで、近くのショップへ。
「今日は何食べたい？」と僕。
ふたりで献立を考えるのは、やっぱり楽しい。
妻が嫌いだという旬の野菜を手にとり、
その野菜の栄養価の高さや素晴らしさを切々と語る。
「好き嫌いはよくない！」と言いながら、
よく冷えたビールに、妻の好きな果物も買った。
おいしくできるかどうか、自信はないけど、
今日は僕のアイデア料理で喜んでもらうか！
なんて考えながら、家に帰る。
もちろん、また手をつなぎながら。

一緒に料理を作って、一緒に楽しむ。共同作業のおもしろさ。
お互いの意外な側面を再発見して、新鮮な気持ちで向き合える。
小学生の頃、給食当番で身に付けて以来、
20数年ぶりのエプロン。
手を切らないように慎重に野菜を切る。妻の目は心配そうだ。
キンキンに冷えたビール。日頃のお互いの頑張りに乾杯。
ホクホクの天ぷらをふるまう。
おいしいサラダや天ぷらの揚げ方。こんなにコツがいるなんて。
二人で向き合う時間はおいしい料理で盛り上がる。
会話といえば日々の業務連絡。会社じゃないんだから、
一日、10分でも仕事以外の話をしないとなぁ。
お互い疲れているかもしれないけど、楽しい時間は疲れもとってくれる。
「すごくおいしい」と言って笑った。