立地条件の中で、もう一つ見逃せないのが「安全・安心」という観点です。以前「中古マンションの資産価値」をテーマにした記事で、「街のブランド力」が資産価値の源泉になることを紹介しました。安全とブランド力は、結びつかないように見えますが、実は表裏一体といえます。
都心の中の都心ともいえる「3A地区」と呼ばれるのが「麻布・青山・赤坂」です。その中でも「プレミアム」が付くような超一等地には、江戸時代から武家屋敷が集まり、明治以降は広大な敷地が外国公使館などに引き継がれて来ました。こうしたエリアは、単に歴史が古いというだけでなく、多くは高台にあって低地よりも地盤が良く、豪雨でも浸水しないなど、自然災害に強いという条件も備えていたのです。
セキュリティ面でも「ブランド力」のある街は守られています。あくまでも参考指標の一つですが、図4は1つの交番や駐在所でどれだけの人口をカバーしているかを示したものです。1件あたりの人口が少ないほど、治安態勢が整っているということもできます。
やはり都心3区が上位3位を占め、台東区を挟んで、渋谷区・新宿区が続いています。都心部は行政庁や外国公使館、要人の公館も多いため、警備の人員が多く配されているのですが、その周辺部の住宅地も、その恩恵に浴しているといえるでしょう。
なお、自然環境の項目と同様に、安心・安全についても、データだけでなく実際に現地を歩いてみないとわからないことがあります。夜道の街灯がきちんと整備されているか、女性が歩くのに不安を感じないか、周辺道路の交通量が多くて子どもに危険ではないかなど、実際に目で見て確かめましょう。
優れたマンションは周辺環境を変えられる!
最後に、マンションならではのポイントを紹介しましょう。物件選びにおいて立地がもっとも重要という理由は、建物は改装や建て替えによって改善できますが、場所は変えられないからです。
ただし、住所は変えられなくても、「住環境」についてはマンションの力で変えられる可能性があります。住宅地としての「格」が少し下がる場所でも、一定の規模と開発力があるタワーマンションなどの場合、超一等地の低層マンションよりも人気が出て、評価が高くなることが珍しくありません。
都心の第一種低層住居専用地域に立つ低層マンションは、戸建て並みの独立性と格式を持ち、築年数が古くなっても「ヴィンテージ」と称され、人気を保っているケースがよくあります。その一方で、容積率が限られるため共用施設を豊富に取ることが難しく、駐車スペースも限られがちです。築年数が古いと棟内の段差も残り、バリアフリー仕様にはなっていません。
それに対して、比較的新しく開発された大規模なタワーマンションであれば、敷地にゆとりがあり、駐車台数も豊富で、棟内の共用施設も充実しています。バリアフリーも標準です。戸建てや低層マンションにはない眺望も期待できます。マンションのエントランスから各住戸までのアプローチ(動線)も、住環境として重要です。つまり、総合点では、タワーマンションは一等地の立地を凌駕するケースもあるのです。
注意したいのは、開発力の優れたマンションが周辺環境を改善することができる一方で、別の開発によって価値が下がるおそれもあることです。隣にビルが建って眺望が損なわれてしまえば、評価は落ちるでしょう。建物正面が都市公園や低層住宅系の用途地域になっているなど、隣接する敷地の環境や将来性が確定しているかどうかは重要なポイントになります。
以上のように、「立地の良さ」を見極めるポイントは多岐にわたります。立地条件のうち何を重視するかによってマンションの選び方も変わるでしょう。実際に街を歩き、ライフスタイルや将来設計に照らしながら眺め、ホンキで「ここに住みたい」と思える場所を探してみてはいかがでしょうか。
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