建築基準法は、巨大地震が起きる度に改正され、耐震基準を強化してきました。まず、1964年の新潟地震(M7.5)と68年の十勝沖地震(M7.9)を受けて、71年に鉄筋コンクリートの柱の粘り強さを高める基準改正がありました。次いで、78年の宮城県沖地震(M7.4)の後、1981年に新耐震基準を盛り込んだ大改正があったのです。
通常は、1981年を境に新耐震と旧耐震とに二分することが多いのですが、81年以前にも耐震性の基準が段階的に上がっていることから、3つに分類する考え方があります。70年以前が旧耐震、71年から80年が新耐震への移行期、81年以降が新耐震です。東京カンテイが1999年に行った「阪神・淡路大震災による分譲マンションの被害度調査」では、この分類に従って被害状況を報告しています(図2参照)。
この調査で、被害の大きい「大破」と「中破」のデータを見ると、旧耐震→移行期→新耐震の順番で被害程度が少なくなっていることがわかります。その点でいえば、やはり築年が古いほうが、相対的には耐震性が低いといわざるをえません。
ただ、このデータで注目していただきたいのは、70年以前の旧耐震でも3割が「軽微」、5割近くは「損傷なし」という結果です。全体の8割は、軽微な損傷以下の被害で済んだということです。移行期では85%が軽微な損傷以下の被害でした。
最近では、新耐震以降が安全で旧耐震には不安があるかのような風潮もありますが、実際には、旧耐震でも大半は建て替えに至るような大きな被害は受けなかったという点を覚えておいてください。
新耐震のほうが、より安心感が高いのは確かでしょう。ただ、住まいの価値は、単に「新耐震か旧耐震か」というような二者択一の考え方で決まるわけではありません。中古マンションを選ぶときには、交通や生活環境、居住性を含めて総合的に判断するほうがいいのではないでしょうか。
また、マンションの建築技術は着実に進化しています。こうした動きについても、チェックしてみましょう。
そこで次回は、マンションの免震構造や制振構造について取り上げる予定です。