2009.12.3:Vol.215

「地価の推移」と「株価の推移」
政府によるデフレ宣言も発表され、今後の景気動向がますます注目されるところですが、地価の動向を探る一つの指標として株価との関係が指摘されることが多いようです。当社グループでは、バブルの頃より地価の定点観測を3ヶ月毎に実施してきており、今回は株価との関係をグラフとして比較してみました。地価と株価の関係を表す一つのデータとしてご覧ください。
- 株価と地価は、短期的に見ればやや異なった動きをすることもありますが、中長期的には両者は密接に連動しているといわれています。また、株価は景気に敏感に反応する資産であり、逆に地価は株価に対して1年から2年の遅行性があるといわれてきました。土地の取引は、株式の売買に比較するとその流動性が低いことから、変化に対する反響に時間がかかるということなのですね。従来、公示地価の変動率等を使ってこの傾向が指摘されていましたが、1年毎の調査結果を利用しているという制約がありました。
- そこで、当社が独自に実施している地価変動率の推移(四半期に一回の調査)を使って、地価と株価の関係を、改めて時系列で追いかけてみました。下記のグラフは、株価としては「日経平均株価」の毎月末終値を採用して、地価の変動率グラフをバブルのピークを概ね合わせた位置(株価のピーク水準よりやや低い位置)にプロットしています。
- このグラフを見て、連動性があると思う方と相当違うと感じる方とがあると思います。一般に地価の変化は株価の変化に対して比較的ゆっくり動くといえますが、ここで取上げた当社独自調査の地価データは、首都圏の5エリアの平均変動率の平均値をプロットしたものですので、個別地点の変化より緩やかに変化していると言えると思います。
- しかし、詳しく変化点を見比べてみると、株価の変化点と地価の変化点との時間差はわずかな程度しかないことが読み取れ、地価の動きは株価や景気の動向に比較的短期間に影響を受けているのではないかと推察されるところがあります。
このグラフから言えることは、10年タームでの推移を考える時は、地価と株価は連動性をもった動きをするが、それより短いタームでは株価はダイナミックな変化をするということであり、その変化が先行指標となって地価は変化していると読み取れるということでしょう。
- なお、この当社独自調査の地価推移グラフは東京近郊住宅地の平均的な傾向であり、全国の傾向やあるいはもっとミクロなエリアでの変動に対しては同様の結論とはならないと考えられますので注意が必要です。
※日経平均株価グラフはNIKKEINETのデータを当社で加工したものです。