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家ココチ vol.4 母のココチ 『子育て安心の住まい』
アクセサリーデザイナーの蓮井まきさんは、藤沢生活2年目。築約40年、2階建て80坪の古家を大改造し、カメラマンのご主人M.HASUMIさんと、ひとり娘の朱花ちゃん、犬のズーちゃんと暮らしています。野鳥がさえずる庭がお気に入りというまきさんに、自然素材のとりいれかた、安全で動きやすい間取りなど、子どもとペットにやさしい住まいのポイントをうかがいました。
Profile
蓮井まき
(はすい まき)
自らデザインを手がけるアクセサリーブランド、「mamelon」主宰。新作の発表に合わせて絵本も制作するなど、ユニークな活動が注目されている。今年の新作は、マメロン展「insects」として、東京・京都・札幌で展示・販売中。
Kokochi01 決め手は天井と障子

都内のマンション暮らしが長かった蓮井夫妻が、藤沢の高台にあるこの家を買ったのは2年前のこと。昭和48年築。アメリカの近代建築の影響が感じられるモダンなつくりに魅了されたと語ります。
「やわらかな光を楽しめる障子と、木の天井の造形に惹かれました。不動産屋さんには、古いから住めないと言われたのですが。大工さんに聞くと、構造がしっかりしているから大丈夫と。壊さずに、直して住もうと決めました」(まきさん)

改装時、大事にしたのは次の3つ。明るいこと、子どもが安全に過ごせる間取りであること、自然素材を大事にし、なるべく木を使うこと。そこで、基礎を直し、断熱、耐震工事を施した上で、壁は天然顔料をベースにしたペイントを使用。ローズウッドのフローリングで、木の風合いを最大限に生かしました。台所は天窓を抜いたことで、ぐんと明るい空間に。おかげで、家族それぞれ自室があるのに、みなリビングにいる時間が長いのだとか。
「朱花は、宿題もここ。最初、リビングとキッチンは壁で仕切られていて、キッチンが暗かったんです。料理していると子どもの様子もわからないので、壁を抜きました。細かく区切らず、大きく間取りをとると、当然冬は寒いのですが、それよりどこにいても家族の気配がわかる間取りを優先しました」。

意外なことに、気密性の高いマンションに住んでいた頃より、家族が風邪をひかなくなったとのこと。
「寒いから自分で養生するようになったんですね。人に家が合わせるのではなく、家に人が合わせていけばいいんだなあって、最近気づきました」

Kokochi02 子ども友達にも大人気のお風呂
浴槽の位置、窓、すべて大改造。

「なるべく木を」のリクエストにこたえ、地元の工務店・技拓は、お風呂の壁に、レッドシダー(米杉)をあしらうことを提案。白いタイルとシックな石の床の組み合わせで、オリジナルの快適広々空間に変身しました。自然光がたっぷり入るよう、窓を抜いたので 、昼間の入浴も格別だそう。
「翌日が休みという日に子どもの友達が来ると、みんな必ずお風呂に入っていきます。大勢で入れて子ども達が遊べるような広さが欲しかったので、ここは本当に気に入っています」

シダーは、耐水性が高いうえに、香りもゆたか。ぬくもりあふれる木肌を目で楽しみ、天然木の芳香でリラックスできるとはなんとも贅沢。子どもでなくとも、憧れます。
「山あいなので、夜、窓の外は真っ暗なんですよ。都心にいると、子どもは本当の暗闇を知らなかったりするので、夜は暗くて怖いものだという当たり前のことを知るのはいいなと思います。キャンドルをともしたり、夜には夜の楽しみがありますしね」

ときどき近所に、タヌキ、リス、アライグマが出現。折しも取材中、リスが、向かいのお宅の軒をすばやく走り抜けていました。

「犬のズーも、なんだか以前より活発で明るくなったみたいなんです。犬も環境によって大きく変わるんですね。私も毎日散歩していて楽しいです。じつは、ジュエリーの作風も変わったんですよ。昆虫とか、自然界のなかにあるものを表現するようになりました」

季節に寄り添って暮らすことの喜びを、まきさんはジュエリーづくりの感性のアンテナでもキャッチしているようです。

Kokochi03 除草剤なしのナチュラルガーデン
リビングから見た庭。パパ手作りの巣箱に米を置く朱花ちゃん。
朱花ちゃんの部屋の入り口には手作りの看板が。かわいい作品は、家のあちこちに飾られ彩りを添えています。

購入時、荒れ放題だった中庭は、デザインをIDEEに、施工は地元の造園屋さんに依頼しました。
「実のなるものをとお願いしただけで、細かくオーダーはせず、おまかせにしました」
 庭は、土や気候を熟知している地元の造園業者にまかせるのが一番。その結果、野いちご、ブルーベリー、ハーブと見るからに開放的なナチュラルガーデンが生まれました。さらに、芝を植え、デッキを作り、視覚的により広い青空リビングとも言うべき大空間がお目見え。
「夫の帰りが遅くて、娘と二人きりの夕食のときは、ここで七輪で焼き物をしたり。この間までは、娘の友だちが来ると、ひとしきり苺摘みに夢中でしたよ。その前はブルーベリーが鈴なりで、ジャムにしました」

朱花ちゃんのお友達だけでなく、メジロ、ホウジロ、キツツキ、ヒヨドリ、ウグイスのお客様もしょっちゅう現れるのだとか。
ところで、この庭。お子さんと犬がいるので、除草剤は一切使わないそう。木々が成長するにまかせ、あまりこまごまと手を入れないのが蓮井家流です。「私は5時には自然に目が覚めます。その代わり、日が暮れたら眠くなっちゃう。娘は19時過ぎにはうとうとし始めて、20時には完全に寝てます。ここにいると、なんだか、お日様に合わせて暮らしたくなるんですよね」

どの窓からも、光と緑があふれ、窓を開け放すと、家のなかを心地よい風が通り抜けます。そういう空間に身を委ねていると、次第に体内時計もお日様に照準を合わせてゆくのでしょう。

転居当初は見知らぬ土地であった藤沢に、今ではしっかり根を下ろし、海と山のある暮らしを楽しんでいる様子の蓮井一家。ひょっとしたら、子育てに最適な家の条件は、間取りや設計の前に、まず大人がその地の生活を楽しむことなのかもしれません……。

取材・文 大平一枝/暮らしの柄
写真 安部まゆみ


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