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家ココチ vol.3 母のココチ 『すっきり使いやすい、おしゃれキッチン収納のツボ』
ストック食材、器、調理道具・・・。日々、こまかなものが増えがちなキッチンですが、「使い勝手の良さ」「すっきり収納」「おしゃれ」を両立させるのは、そう簡単ではありません。今回はそんなお母さんたちの永遠の悩みどころ、キッチン収納のツボをレポート。食材やキッチンツールが一般家庭よりはるかに多い「食のプロ」料理家の大川雅子さんの教室sasser(サッセ)をたずねました。住居用マンションの一室を、自分で床を張り、壁を塗ってリメイクしたという温もりあふれる快適空間のそこかしこに、家庭のキッチンにも応用できるユニークなアイデアが潜んでいます。
Profile
焼菓子工房sasser
(やきがしこうぼうサッセ)
東京青山に開業して14年目。焼菓子専門の料理教室としてつとに有名。月1回10人という少人数制も魅力。
大川雅子
(おおかわ まさこ)
焼菓子工房 sasser主宰。オーナーをつとめるカフェ「a piece of cake 」は開店10年目。雑誌、広告、料理本の執筆と幅広く活躍。著書は、「小さなチョコレートのお菓子」(成美堂出版)、「ケーキ工房の大きいお菓子と小さいお菓子」(文化出版局) ほか多数。
Kokochi01 身の丈にあった「あるもの収納」を
コーヒーを入れる大川さん。蛍光灯の照明も自分で取り付け。吊り戸棚ひとつないけれど、まったく不便のない工夫の宝庫。

料理教室というと、広々したシンク、大きなテーブル、ガス台や鍋がずらりと並んだモダンな空間を想像しますが、大川さんの料理教室はすべてが“予想外”。東京・青山の古いマンションの一室、もともと住居用として使われていた50平米ほどのワンルームをほぼ自分の手で改装して、焼き菓子の教室に使っています。

「住居用だから、キッチンは一畳半しかありません。人ひとりが立てば、横幅はいっぱいになっちゃうの。でも11階だから、窓からの眺めがそれはもうすばらしかった。それで迷わず決めてしまいました。狭さや不便は、工夫すればいくらでもなんとかなりますから」
 予算を抑えたいという動機もありましたが、それ以上に自分で住まいに手を入れたり、アイデアを絞って工夫するのが大好きという大川さんは、当時の改装を楽しそうに振り返ります。

まずはクロスの上に床を張り、壁を白くペイント。シンクは合羽橋でシンプルな業務用ステンレスを購入。アンティークふう煉瓦を壁に貼り、硬質のステンレスにぬくもり感をプラスしました。スパイス棚ももちろん手作り。調理台は小さな冷蔵庫2台を左右に置き、その上にボードをのせただけの簡単なもの。よく使う平皿の収納は、無印良品の組み立て式プラスチックワゴンに、皿立てスタンドを置いています。

「引き出しも棚もなかったので、見せる収納です。あるもので、何とかしよう。身の回りにあるモノをうまく使って、身の丈にあった収納にしようと考えました」
 とくにキッチン収納は、なにもかもオーダーの作りつけより、自分でしまいかたを工夫する余地があるほうが、最終的には使い勝手のよいものに仕上がるようです。

Kokochi02 意外な収納グッズが大活躍
ガーデニング用スタンドは、ウイリアムズ・ソノマで購入。(現在は閉店)。ワゴンには、海外で買い集めたキッチングッズもすっきり収納。

ビビットな色合いのル・クルーゼの鍋が並ぶアイアンのスタンドは、じつはガーデニング用。ル・クルーゼ社製鍋専用スタンドもお持ちですが、それでは全然足りず、このアイデアを思いついたそう。
「ガーデニング用だから水にも強いし、雨風にさらされてもいいものだから丈夫で長持ち。重いモノにもびくともしない鉄製で、鋳物ホウロウのル・クルーゼにぴったりでした」

このように大川さんは、本来、キッチン用に企画されていない収納用具を、キッチンに転用するのがかなりお得意。
 イタリアのデザイナー、ジョエ・コロンボが製図室用に考案したワゴンは、カトラリーやトング、へら、製菓用のキッチンツールをしまうのに使っています。
 「ワゴンがついているので移動も楽ですし、四方向に引き出しがスライドするので、生徒さんがどの位置からも取り出せる。とにかくこまごましたものをたくさん収納できます」(大川さん)
 白という色も主張しすぎず、清潔感もあり、キッチンにはベストマッチ。これなら「栓抜きどこだっけ?」「マッシャーは?」などという料理中の“あたふた”も、なくなることでしょう。

Kokochi03 つめこみ式&スタッキング、自由自在
タッパーウエア社のディープスーパーケース(縦48cm×横38cm×高さ31cm)。本体が軽いので開閉や入れ替えも楽。容積は42Lで、収納力も抜群です。

「棚は横から取り出すので、奥のものが見えづらいですよね。上からつめこみ方式だと、全てを見渡せるので、食材をストックしても使い忘れがなくて無駄が出ません」
 かさばる粉など、大量に製菓の材料のストックが必要な大川さんの大のお気に入りは、タッパーウエア社のスーパーケース。本来は衣類や書類、アルバムなどをしまうものですが、密封性が高く、湿気や埃を防ぐので食材のストックに最適です。
 また、スタッキングできるので、限られた空間を有効利用でき、ものがあふれがちなキッチンではかなり役立ちそう。

ところで、このケース。本体も蓋も、ブラックやベルベッドなど色のバリエーションがありますが、大川さんは、黄と青の蓋をセレクト。狭い空間をすっきりおしゃれに見せるには、使う色を決め、どんなに便利でもそれ以外の色のものは買わないのがコツです。 
 室内全体のテーマカラーは、sasser(サッセ)のシンボルマークから「青・緑・黄」の3色に限定。それ以外はプレーンな白やそれに近い色と決め、皿から鍋敷き、カトラリー1本に到るまで統一しています。

「ときどき遊びの差し色が欲しくなって、ル・クルーゼの鍋は赤だったりするんですよ」
 遊びの色が欲しくなった場合は、鍋ならすべて同じ色、というようにアイテムごとに色を統一させれば、見た目にスッキリ。また、色だけでなく、ガラス、ステンレスなど、雑多になりがちなキッチンの小間物の“質感”で統一するのも一案です。

持つときはいくつかのルールを心に掲げ、できるだけ、あるもので、身の丈にあった収納を。おしゃれ心と創意工夫がつまった料理家の城は、やはり、暮らしのヒントが満載なのでした。

取材・文 大平一枝/暮らすこと
写真 安部まゆみ


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