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家ココチ[Vol.13] 母のココチ 収納はアイデア次第
住まいの悩みの筆頭に「収納」を挙げる人は少なくありません。理由としては、ものが多すぎる・整理下手・部屋が狭い・・・など。今回登場のカメラマンのYさんもまた、家を買う1年前までは「物持ち」ゆえに収納に悩むひとりでした。本・CD・カメラ機材の所有量が多く、買ったのは22坪で決して広くはない一戸建て。しかし、工夫いっぱいの空間作りで片付けの悩みを一気にクリア!整理上手・収納の達人に変身したYさんの住まいを訪ねました。
Profile
M・Yさん。
40歳、女性。
カメラマンとしてファッション、インテリア、人物と、雑誌・書籍を中心に幅広く活躍。夫はサラリーマンで大の料理好き。愛猫1匹。
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Kokochi01 オープンキッチンでも見せない棚は必要

昨年、築40年の中古住宅を購入。もともと古いものに手を入れて暮らしたいと思っていたので、建築家にリフォームを依頼。狭小住宅ながらも、細かいところまで希望のかなう住まいが実現しました。

なかでもとりわけこだわったのは、収納です。Yさんは、ご主人ともに音楽好きでCDのコレクションが多数。また、カメラマンという職業柄、たくさんの機材があります。写真集やアートブックなど、通常の本棚のサイズには収まらない大型の書籍も多く、おまけにご主人は料理好きで、こちらは料理本多し。ほかにも楽器、洋服、マンガなど、とにかく夫婦の仕事や趣味にちなんだ所有物が多かったため、それらを「片付けやすく、取り出しやすい」ことを条件に、収納スペースに工夫を凝らしました。

「キッチンはオープンスタイルですが、食品のストックや料理道具、家電製品は見せたくない。でも取り出しやすいことが必須です。そこで、リビングとキッチンの間に間仕切り棚を設置。キッチン側に立つ人間からにだけ中身が見えるよう、可動式の棚を作りました」

一見、大きな柱にも見えますが、実は内側からのぞくと、圧力鍋やホットプレートがすっぽり入るシンプルな棚。扉がないので使い勝手の良さは抜群です。
「キッチンって、案外場所をとる家電製品が多いんですよね。ホットプレート、炊飯器、電子レンジ……。そういうものがすべて入る棚があると、キッチン全体がすごくすっきりします」

リビングスペースと、ダイニングキッチンスペースとの間仕切りにもなっている棚。
棚板はオイルステイン(木材用着色剤)を自分でペイント。

棚には、無印良品の整理カゴを入れ、細かいものも自在に整理。キッチンというと、つい食品のストックばかりに腐心しがちですが、Y家のごとく、家電製品の置き場所も、あらかじめしっかり確保を!

Kokochi02 小部屋をウォークインクローゼットに

2階の洋室1間は、和室+押入+ウォークインクローゼットに3分割。Y さんは、洋服や季節の衣類をしまえる収納空間がどうしても欲しかったのだとか。

「前に住んでいた借家に、2畳ほどのウォークインクローゼットがあったのです。狭いのですが、これがあると居室に箪笥(たんす)が不要になり、広く使える。便利さを実感していたので、絶対に新居にも作ろうと思っていました」

洋服のほか、靴や帽子、バッグ類も収納。床には自分でオレンジと白のPタイルを貼り、暗くなりがちなクローゼットを明るく演出。もとから窓が付いていたので、換気の心配もいりません。

ウォークインクローゼット(手前)と本棚。季節外の上着やスーツもしまえるので、衣替えの手間もなし。

クローゼットの脇にできた隙間も見逃さず、棚板を入れて本棚に。幅を狭めにして、マンガなど小さな本を中心に、収納しています。

「リフォームの設計をしてくれた建築家に、前の住まいに来てもらい、収納物を見てもらったり、前の家の押入の中や本棚を全部、写真に撮って渡したりしました。現在、自分たちがどういうものをどれだけ持っているのか、把握していただいたほうがいいと思ったので」

おかげで、二人の暮らしにジャストサイズの収納空間が誕生。小さな隙間も上手に利用して無駄のない間取りが実現しました。

Kokochi03 衣類ケースはメーカーを揃える 扉は半オープンに

リフォーム工事で、かなりの予算をとったのが、2階の増築部分。片流れの屋根部分を3畳ほどのストックルームに増築しました。ここは、ご主人の趣味の楽器、ビデオテープ類、コンピュータ関係の箱や機材もありますが、メインはYさんの仕事道具であるカメラ機材を中心に収納。

毎日使うものなので、取り出しやすくするため、扉は付いていません。遊び心あふれるグリーンのアクリルガラスののれんで、目隠しをきっちりしてしまわず、半オープンのしつらえにしています。

増築して作ったストックルーム。扉がなくても、消灯すると内部が見えなくなり、居 室に併設されていても気にならない。

内部は、作り付けの棚を上下に2枚渡しただけのざっくりとした収納で、衣類ケースを積んで整理しています。
「衣類ケースはメーカー・サイズを統一して、下から上まで同じケースで埋め尽くすのがコツと、人から聞いて真似しました。やってみたら、サイズ違いによるでこぼこや無駄な空間が出ず、本当に収納量がぐんと増えたんですよ」

同じケースなので見た目もすっきり。引き出しがずらりと並び、探し出しやすく、かつ取り出しやすくなっています。
Yさんは、そのために、今まで持っていたサイズが微妙に違う衣類ケースをすべて処分したそう。衣類ケースは、「安いから」「1個だけ欲しいから」と、その場の思いつきで買わず、すべてを1メーカー・1サイズに統一することがポイントのようです。


このように所有物の多いYさん夫婦ですが、それでも引っ越しをきっかけに、靴・服・本を大量に処分したとのこと。その結果、「新しいものを買うときは、収納場所を想定してから買う」という習慣が身に付きました。

「入居前に、家具もほとんど処分しました。でも、リサイクルショップ屋さんに行っても、引き取ってもらえず、ものを処分するのはこんなに難しいことだったのかと、身につまされました。今は、ものを買うとき、例え器1つ、シャツ1枚でも、本当に自分の生活に必要かどうか、よく考えるようになりましたね」

魅力的なものの情報があふれる毎日。“持つ”より“持たない”ことの方が難しい時代だからこそ、収納は大事な住まいの意識。自分の人生や暮らしのサイズを考えることなのかもしれません。


取材・文 大平一枝/暮らしの柄
写真 安部まゆみ


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